222 - 「オサガメの財宝、前編」


 ダックワーズがコーカスの港を発った同時刻――


 大海原を進む巨大奴隷船オサガメにて、とある秘密が暴かれた。


 迷路の様に入り組んだ巨大奴隷船オサガメの深層部、何枚もの分厚い鉄壁に守られた場所に、プセリィが貯め込んだ財宝が眠っていたのだ。



「ははぁ〜、こりゃ〜すげぇ貯め込んでやがったな。一体どこから奪ってきたんだか」



 分厚い鉄の扉に手をつきながら、キングが上機嫌に声を上げる。


 そのキングの声に応じたのはララだ。



「船にこれだけの財宝を載せているなんて馬鹿なのよ。それもこんなに入り組んだ場所に隠すなんて、沈没したらどうするつもりだったのかしら」



 そうララはこぼしたが、オサガメに保管されていた財宝を最初に見つけたのは、キングでもララでもなく、アタランティスだ。


 アタランティスが船内を探索中にたまたま宝物庫らしきこの場所を発見し、マサトを呼びに行く途中で会ったキングとララに声をかけたに過ぎない。


 始めは鉄の扉に鍵が掛かっていた宝物庫も、ララの前では無力だった。


 ララが難なく魔法で魔法障壁と鍵を解除すると、キングが重い扉を力尽くでこじ開けてみせ、今に至る。



「バハッ、きっと手元に置いておく方が安全とでも思ってたんじゃねぇか? 強欲そうな船長だったしな。あのプセリィって女は」


「興味ないかしら。人族の欲なんて、皆大した差はないのよ」


「おほ〜、それは手厳しい意見だな。まぁ何も間違っちゃいねぇが。それよか、セラフはまだか? アタランティスの奴、船内で迷ってんじゃねぇだろな?」



 キングが冗談っぽくそう口にした時、通路に複数の足音が響いた。



「ん?」



 微かに耳に届いた興奮した息遣いと、バタバタと焦りを感じる足音に、不穏な気配を感じてキングが眉をひそめると、ララがキングの予想を代弁してみせた。



「どこかで話を盗み聞きされてたのよ。セラフより先に、欲に塗れた人族が、金の匂いに誘われてやってきたかしら」



 キングとララが振り返った先には、スキンヘッドの男を先頭に、三人の男が武器を片手に立っていた。



「おいおいおい、馬鹿なことすんじゃねぇーぞ? 今ならまだ黙っててやる。悪いことは言わねぇから大人しく引き返せ」



 キングがそう諭すも、同じ囚人だった男達は聞く耳を持たなかった。


 スキンヘッドの男が興奮した様子で話す。



「財宝を俺たちにも寄越せ。俺たちには、それを貰う権利がある」


「別にそれを主張するのはあんたらの自由だが……」


「説得しようとしても、無駄な努力に終わるかしら。好きにさせてやるのよ」



 ララがあっさりと引いたことで調子付いた囚人達が、道を開けろとキングへ凄む。



「おら退け。別に全て奪おうってんじゃねーんだ。先に分け前を貰うだけだ」


「三対一だぜ? 怪我する前にどけよ兄ちゃん」


「いいか? あの悪魔には黙ってろよ? バラしたらただじゃおかねぇからな?」



 三人に凄まれたキングはというと、やれやれと頭をかきながら道を譲った。



「別に止めやしねぇが、どうなっても自己責任だぞ? 俺はセラフが来るまで待った方が良いと思うぜ?」


「フンッ、あいつは確かに化けもんだが、俺たちにもお宝を貰う権利があるはずだ。この船の強奪に協力したんだからな。いいから退け!」


「へいへい。じゃあもう何も言わねぇよ。どうなっても知らねぇーからな」



 スキンヘッドの男がキングの胸を突き飛ばして、宝物庫へと入る。


 キングとララを威嚇していた他の囚人達も、宝物庫に入るや否や、目の前の財宝に目の色を変えてはしゃぎ回った。



「人生何が起きるか分かんねーな! クク、これだけありゃ一生遊んで暮らせるぜ」


「うひゃああ! 見ろよこの宝石! これ一個でいくらすんだ!? これも、これも! うひゃひゃひゃ! 笑いが止まんねぇよぉ!!」


「金だ! 金だ! 俺たちゃ大金持ちだぜぇえ!!」



 目に映るもの全てを手に入れようと、必死で財宝をかき集め始める囚人達に、ララが軽蔑の目を向ける。



「目が腐りそうなのよ。馬鹿キングが止めておけば、こんな酷い光景見ずに済んだかしら。何で止めなかったのよ」


「好きにさせてやれって言ったのララだろ……」


「ララのせいにするなんて最低かしら! 自分の考えもなしに人の意見にのっかった上に、その自分の判断責任を棚に上げて、意見を言った他人のせいにするなんて無能のすることなのよ!」


「くっ…… ど正論過ぎる。まぁ、止めなくても、ここから出さなきゃ結果同じだろ」


「ああ、そういうことかしら。それなら納得なのよ。キングが無能な責任転換クズ野郎になったのかと心配したかしら」


「このちょっとしたやり取りでそこまで言われる筋合いはねぇよ…… ったく。おっと、どうやらその手間もいらねぇらしい。ようやくセラフが来た」


「セラフがどうするか見ものなのよ」



 キングがマサトへと手を上げ、ララはいつも通りの仏頂面でマサトを出迎える。


 マサトを案内していたアタランティスが、マサトへと道を譲ると、マサトは表情を変えずにそのまま宝物庫の前まで歩き、宝物庫の中で騒ぐ囚人達を見て歩みを止めた。



「あいつらは?」


「分け前を寄越せって主張して聞かなくてな。一応止めたんだが無理だった。まぁここから何も持ち出させてはいねぇから、そこは安心して良いぜ?」


「そうか。助かる」


「ん? あ、ああ、別にこれくらい構わねぇけど」



 お礼を言われたことにキングが少し動揺するも、マサトは気にせず宝物庫の中へと入っていった。


 人影を察知したスキンヘッドの男が怒鳴る。



「おい! 誰が入って良いっつった!?」



 怒鳴られたマサトは、相変わらず光を失った瞳で答えた。



「誰かの許可がいるのか?」


「なっ!? セラフ!?」



 マサトの登場に、スキンヘッド含め、財宝集めに夢中だった囚人達の顔が一気に蒼ざめる。


 スキンヘッドの男が額に汗を浮かべながら話す。


 

「お、俺たちにもお宝を貰う権利があるはずだ。そうだろ?」



 スキンヘッドの言葉を聞いたマサトは、然程興味なさそうに右手を差し向けた。



「知らないな」


「ま、待て。話せば…… うがゃぁあ!?」



 スキンヘッドの男が突然発火し、のたうちまわる。



「ひぃ!?」


「ゆ、許してくれ! 俺はその男に脅されて協力させられただぎゃぁああ!?」



 他の囚人二人も、言い訳をする暇も与えられず、炎に包まれた。


 換気口のない宝物庫に、煙と人の焼けた異臭が充満するも、マサトは表情一つ変えずに燃える肉塊が動かなくなるまでじっと見つめていた。


 その様子を見守っていたキング、ララ、アタランティスがそれぞれ心情を口にする。



「まぁそうなるよなぁ」


「当然の結果かしら。ララはセラフの判断を評価するのよ」


「セラフは敵と判断すれば容赦がないな」



 三人の死を見届けたマサトが、亡骸からマナを回収すると、そのまま宝物庫の入り口まで戻り、何事もなかったかのようにキング達へ話しかけた。



「この財宝の仕分けを手伝ってほしい」


「仕分け? 手伝うのは構わねぇが、何を仕分けるんだ?」


「水色の水晶と白金貨。それと、古代魔導具アーティファクトだ」


「水色の水晶ってのは、あんたの探しもんか。古代魔導具アーティファクトはまぁ分かるが、白金貨? 白金貨じゃなくとも金貨なら大量にあるぜ?」


「白金貨は…… 俺の錬金術に必要なだけだ」


「白金貨が必要な錬金術なんて聞いたことがないかしら。一体何の錬金術なのよ」



 質問を返すララに、マサトは無言で一瞥しただけで答えない。


 答える気はないというマサトの態度に、キングはララが怒ると少し焦ったが、当事者のララはマサトの反応が当然だと言わんばかりに一人納得していた。



「教えられなくて当然なのよ。錬金術士が簡単に吐露した内容ほど信用できないものはないかしら」


「ララの反応には時々驚かされるぜ……」


「馬鹿キングのちっぽけな物差しでララを測るなかしら」


「へいへい。そりゃ申し訳ござーせんね」



 キングとララがいつものやり取りを始めると、アタランティスが話に割って入った。



「それより、セラフ。この財宝の山の中から白金貨を仕分けるのは、結構骨が折れると思うのだが…… オレ達四人でやるのか?」


「ララはやりたくないかしら」


「あの火達磨になった囚人達の末路を見た直後にその発言ができるララには尊敬するぜ」



 アタランティスの質問に、マサトは少し考えると、何かを思い出したのか目を見開き、空中を見つめて指で何かをなぞり始めた。


 その仕草に、キングとララがコソコソと内緒話を始める。



「まーた何かやってんな。ララ、あれ何だと思う?」


「魔法陣や術式を組んでいるのとは少し違うようなのよ。魔力マナは少しも感じられないかしら。ララにも想像がつかないのよ」


「何かが見えてる風なんだが、あれをやった後に、決まって俺たちの想像を超えることを仕出かすんだよな」


「それなら黙って見てるのが正解かしら」


「だな」



 皆でマサトの行動を見守ること数分。


 何かを悩んでいたマサトだったが、ようやく決断したのか、目の前に手をかざして言葉を発した――



飛びかかる蛙人バウンシングフロッガー、召喚」



[C] 飛びかかる蛙人バウンシングフロッガー 1/1 (青)  

 [毒Lv1]



 マサトがフログガーデン大陸の北部にあるフログ湿地帯にて、蛙人フロッガーを殲滅した際にドロップしたカードだ。


 マサトが立て続けに蛙人フロッガーを二体召喚してみせると、キング達は驚きの声をあげた。



「お、おいおい…… 俺は夢でも見てんのか?」


「召喚魔法なんて、古代魔法ロストマジックの中でも一番タチの悪い冗談かしら。ララも実際にこの目で見るのは初めてなのよ。夢なら覚めてほしいかしら」


「無知なオレでも、召喚魔法がどれだけ凄いのか分かる…… セラフは本当に何者なんだ?」


「いてて!? ララお前! つねるなら自分の頬にしろ! 人の内腿をつねるな! 地味にいてぇーだろ! つか、なんで内腿なんだよ! わざと皮膚の弱いところ狙ってやってんだろ!?」


「ララは痛いの嫌いかしら。キングが夢じゃないと判断するなら、それで納得するのよ!」


「もはや意味が分からねぇ!」



 マサトにとっては見慣れた召喚演出でも、キング達には衝撃的な演出だったようで、いつもは淡々と毒を吐くララも、今回ばかりは動揺が顔に現れていた。

 

 外野の動揺などお構いなしに、マサトは召喚した蛙人フロッガーへ命令を与える。

 


「白金貨と古代魔導具アーティファクトを、ここに集めろ」


「ケロ!!」



 蛙人フロッガーがマサトへ敬礼すると、そのまま作業に移る。


 マサトがキング達へ向き直り、再び口を開く。



「二人だけだが、人手は増やした。捕らえられていた奴隷達にも手伝わせればすぐ終わるはずだ。アタランティスは盗みを働かさなそうな奴隷を数人連れてきてほしい」


「分かった!」



 マサトに頼まれたことが嬉しかったのか、アタランティスは尻尾を犬のように左右に振ると、そのまま一目散に走っていく。


 

「まるで子犬だな」


「忠犬って表現の方が正しいかしら」



 キングとララの辛辣なコメントにも反応せず、マサトは話を進める。



「キングとララは外の見張りを頼む。中の見張りは蛙人フロッガーに任せれば良い。終わったら外まで呼びにきてくれ」


「そりゃ構わねぇが……」


「ララに仕事を押し付けて、セラフは一人外で何を寛ぐつもりかしら」


「おい、ララぁ、お前ちったぁ言い方をだな……」



 キングがララの言葉遣いに苦言を呈すも、マサトは普通に答えた。



「モンスターがいないか探してくる」


「モンスター? 探してどうするのかしら」


「倒してマナを抜き取る」


「そういうことならララが協力できるかしら。一回くらいなら口寄せできるのよ」



 意外にもララが協力を口にすると、キングが焦りながら待ったをかけた。



「お、おいちょっと待った! ララ、お前本気であれをやろうってんじゃねぇだろな?」


「セラフなら大丈夫なのよ。弱っちいキングとは違うかしら」


「くっ…… そこまで言うなら止めやしねぇが……」



 キングとララの怪しいやり取りに少しだけ目を細めたマサトだったが、大した問題ではなさそうだと話を進める。



「お願いできるか?」


「お安い御用かしら。そうと決まればとっとと行くのよ」



 そう言うや否や、ララは一人さっさと移動し始めた。



「キング、頼んだぞ」


「おう! 任せとけ」



 ララの後を追って、マサトも宝物庫から離れていく。


 その二人の背が見えなくなった時、キングは「はぁ」と溜息を吐くと、頭をかきながら独りごちた。



「頼んだという割にはなぁ。あいつの目、全く信用してねぇ奴の目なんだよなぁ」




◇◇◇




 ララと共に甲板へと出る。


 空には雲一つなく、見渡す限り水平線が広がっていた。


 そこに生き物の影は一つも見当たらない。


 航海中にモンスターの襲撃でもあればと期待したりもしたが、今のところ順風満帆な船旅でしかなかった。


 そのため、ララがモンスターの口寄せを使えるというのは渡りに船だった。



「いつでも良い。口寄せしてくれ」


「そう急かすなかしら。これはこれで結構骨が折れるのよ。それと、これからララがすることを全て受け入れるかしら。下手に抵抗しようとすると失敗するのよ。失敗したら数ヶ月先まで同じことはできないかしら」


「分かった。言う通りにしよう」


「素直でよろしい。じゃあ跪くかしら。さっさと始めるのよ。それと、失敗しても文句は受け付けてないかしら」



 俺が跪いたのを確認すると、ララは船首の方へ向いて両手を広げ、静かに瞑想を始めた。


 潮風がララの髪を揺らすこと数分。


 ようやく詠唱が始まる。



「万物に宿りし母なる魔力マナよ、我は渇望する! 絶対強者との死闘を! 我は渇欲する! 死の瀬戸際でのみ研磨される魂の玲瓏を! 更なる高みを望む我に、極限の試練を与え給え!」



 予想に反して大層な詠唱が始まった。


 誤算があるとすれば、大層なのは詠唱内容だけでなく、詠唱演出も見事だったことだ。


 詠唱を続けるララの周囲には光の放流とともにつむじ風が巻き起こり、その上空には何やら怪しげな黒雲が渦を巻き始める。



(これは…… 大丈夫なのか……?)



 その一連の光景に一抹の不安が脳裏をよぎるも、俺はララの詠唱を見守った。


 そして、長い詠唱が終わる――



狂乱の戦神アレスアレスの呪いの刻印イングレェィヴカース!!」


「……呪い?」



 無視できないフレーズが耳に飛び込んできたが、ここで失敗されても困ると全てを受け入れるつもりで身構える。


 すると、ララが振り向きざまに光る右手を突き出し、俺の胸目掛けて張り手を放った。


 ララの右手が胸に届くと、触れた部分が光輝く。


 その光は、何かの刻印を形取っていた。



狂乱の戦神アレスアレスの呪いの刻印イングレェィヴカースが付与されました』



 目の前に浮かぶシステムメッセージ。


 風が吹き荒れる中、ララが叫ぶ。



「刻印に魔力マナを込めるのよ! 込めた魔力マナだけ強い口寄せができるかしら!」



 手持ちのマナは、(赤×2)(13)のみ。


 取り敢えず無マナの約半分である(6)を刻印に込めてみる。


 すると、刻印が強烈な光を発して輝いた。


 その光は光線の如く前方へ迸り、海原の上で花火の様に弾けた。


 弾けた光は空を動かし、海を変化させる。


 空に渦巻いていた黒雲はいつの間にか空一面を覆い、海は荒々しく時化始めた。


 船に打ち上げられた波の水飛沫を浴びながら、焦ったララが再び叫ぶ。



「セラフは馬っ鹿野郎かしら!? 一体どれだけの魔力マナを注ぎ込んだのよ!? ララはどうなっても知らないかしら! セラフが何とかするのよ!!」



 言われた通りにやったのに酷い言い草だと若干の理不尽感を感じながらも、俺は目の前に広がる大海の異変を見逃さなかった。



「……何か来る」


「口寄せしたモンスターかしら! 口寄せしたモンスターは、狂乱の戦神アレスアレスの呪いの刻印イングレェィヴカースが刻印された者のみを狙うのよ! モンスターを倒せば、刻印は消えるかしら!」


「そういう事か」



 ステータスを確認する。



<ステータス>

 紋章Lv50

 ライフ 28/50

 攻撃力 8

 防御力 8

 マナ : (赤×2)(7)

 加護:[マナ喰らいの紋章「心臓」の加護]

     [炎の翼ウィングス・オブ・フレイム]

     [火の加護]

     [火吹きの焼印]

     [狂乱の戦神アレスアレスの呪いの刻印イングレェィヴカース] New

 装備:なし

 補正:[自身の初期ライフ2倍]

    [+3/+3の修整]

    [召喚マナ限界突破15]

    [火魔法攻撃Lv2]

    [飛行]

    [毒耐性Lv5]

    [疫病耐性Lv5]

 称号:[次元を渡り歩く者ディメンションズ・ウォーカー]



 ステータスの変化は、刻印が増えた以外に、[+1/+1の修整] が加算されて [+3/+3の修整] となったくらいだった。


 そのお陰で、攻撃力と防御力が大型モンスターでも上位クラスの8に。


 それらの情報から推察するに、ララが付与した付与魔法エンチャントは、自身へバフをかけつつ、敵対モンスターを召喚する付与魔法エンチャントなのだろう。



「ぎぃゃあああ!?」



 ララの悲鳴があがる。


 その視線先には、凶悪な牙がみっしりと生えた口をだらしなく開けた怪物が、魚のような無機質な瞳をじっとこちらに向けていた。



大海に潜む巨大海蛇シー・モンスターなのよぉお!? Aランクのモンスターを口寄せするなんて常識外にも程があるかしらぁああ!?」



 どうやら、狩り対象としては十分な相手のようだ。



「海蛇なら青マナ確定だな。こいつなら蛙人フロッガーで消費した分を回収できそうだ」


「何を訳の分からないこと言ってるかしら!? 早くどうにかするのよぉ!?」


「あぁ、そうする」



 大海に潜む巨大海蛇シー・モンスターが動くよりも先に炎の翼ウィングス・オブ・フレイムを発現し、空へと飛び立つと、海蛇も俺を追うように顔を動かした。



「相手が向かってきてくれるなら、ここが海でもどうにかなりそうだな」



 快晴から一転、嵐へと姿を変えた大海原で、急遽、口寄せした大海に潜む巨大海蛇シー・モンスターとのバトルが始まった。

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