第34話 アイスフェイス
何だ…急に…
俺はいきなり瞼が重くなる感覚に襲われ、膝を着く。
すると、それを予想でもしていたと言わんばかりに魔王軍の魔物が、俺へと近づいた。
「…この吹雪の中でそんな動きが出来るなんて、驚きだった。でも、足を止めて留まっていたのは失敗だったかもな」
少し穏やかな口調…もう戦闘が終わったでも思ってんのか…まぁ、実際体が言う事聞かねぇ訳だが…。
「な、何しやがった…」
「この寒さに加えて、無味無臭の睡眠スモッグ。この吹雪の所為で効きずらかった事もあるとは思うけど…結構前からやってたんだぞ?」
なるほど…俺との戦闘中に仕掛けてたって事か。今まで負け無しの俺だったが、まさかこんな所で…しかもこんなウルフに…。
「無理に戦わなくて良かった。じゃあな」
◇
「アノムざぁあーん!!」
「安心しろ。今すぐ出すから」
俺は男を眠らせた後、そのまま走って奥の部屋へと来ていた。サーナは何も見張りも何も居ない状態で、牢へと入れられていた。
「ずみまぜんアノムざぁあーん!! わ、私またご迷惑を…!!」
「大丈夫だって、何の問題もなかったから」
俺はすぐ近くにあった鍵束を、次々と牢屋の鍵穴へと入れた。
ガチャッ
「よし」
「アノムざあぁーん!!」
「分かったから…早く行くぞ」
「ばぁぁあいっ」
泣いて縋り付くサーナを宥めながら、俺は洞窟の入り口へと向かった。その途中、ボードで敵の位置を確認するとーー
「……ミスったな」
そこで俺の作戦の欠陥、大誤算があった。
「ふわあぁぁ…お、来たな。待ってたぜ?」
「あ、アノムさん…」
ダンジョンの入り口、そこでは30人もの人間達が俺達を待ち受けていた。
あの大部屋に居て生き残った奴等が他の奴を起こし、俺を逃さない為に此処に残ってたって訳か。
それにーー
「アノム…ごめん」
ルイエ…
そこには、ヴァロンと言われる男に首根っこを掴まれているルイエの姿があった。
「いやー、まさかこんなラビットが魔導師だなんてな。しかもコイツも流暢に喋るしよ? マジでビビったぜ」
ヴァロンは肩をすくめて笑う。
ルイエが魔導師だって事を知っている…ルイエが捕まる時に魔法を使って抵抗したって事だ。
DPはもうない。陽はまだ高い為にDPが付与されることも無い。今ルイエが何もせずに捕まってる事を考えれば、魔力が尽きたって事…。
「万事急須ってやつか…」
1人だったらもしかしてルイエを助けて、逃げれたかもしれないけど…サーナもとなると厳しいな。
「あ? 何言ってるか分からねぇがよ…その隣のガキをどうする気だ?」
ヴァロンが首でしゃくり、サーナを指す。
「……そんなのお前達に答える義理はない。早くルイエを離せ!」
「ルイエさんを離して!!」
サーナも同調し、叫ぶ。
それにヴァロンは眉を顰める。
「ん? おいガキ…お前はそいつの何なんだよ?」
あ…あまり相手に情報を与えない方が
「アノムさんは私の命の恩人よ!」
良い…って思ったんだけど…そこまで自信満々に言い切ればもう否定しても仕方ないな。
いずれはサーナには人里に降りてもらいたい。魔物と仲良くするのがどれだけ異端か、後で教えないとな。
そう思っているとーー
「何だよ!? お前もかよ!!」
ヴァロンは少し間を開けた後、大きく腰に手を当てて笑った。
「お前も…? 何を言って…」
俺が訝しげにヴァロンを見ると、ヴァロンはゆっくりと口を開いた。
「俺達は皆んなが皆んな、魔物に助けて貰った事が経験があり…魔物との友好を望むレジスタンス。私服を肥やす人間、魔物と敵対する団体"アイスフェイス"だ」
ヴァロンは笑みを浮かべて、そう言い放った。
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