第18話 ジャルデ入れるか
「あ、アノム達が帰って来たよー!」
「…思ってたよりも早い…」
俺は洞窟前で飛び跳ねるエンペルを見ながら、息を荒げながら叫ぶ。
「緊急事態だ!!」
そう叫ぶと2人はピタッと動きを止める。
「病人を見つけた!!」
「びょ、病人ー!?」
「ど、どうすれば良いのかしら? でも誰が?」
2人共焦った様に右往左往している。
それもそうだ。これまで戦闘で怪我人なら手当出来てただろうが、今は病人だ。
今まで看病なんてした事ないアイツらにとっては相当動揺するだろう。
「取り敢えず急ぐぞ、ガギル!」
「お、おぅ…」
息切れしながらガギルが後ろから着いてくる。しかしもう満身創痍だ。
身体中から汗を大量に流し、もう脚もプルプルと震えている。
先に行きたいところだが、あまり離れてしまうと、この寒さの中で汗だくのガギルは一瞬にしてこの暴風雪で死んでしまう。
「頑張れ!」
「ッ! 次設置する物は絶対俺の研究施設だからなぁっ!!」
「うおぉーっ!」と叫び声を上げながら、俺を追い越して駆け出す。
いきなり何を思って、そんな気合いが入ったのか分からないが…いいぞ!
俺はそれに並走してガギルについて行く。
そして洞窟前まで来ると、エンペル達と共に洞窟内へと移動する。
「はぁ…はぁ…もう、無理だ」
「そ、その子が病人ー…凄く苦しそうー…」
「私達は何をすれば良いかしら」
「…一先ずはエンペルは雪、ルイエはその子に寄り添ってやってくれ」
俺は背中に居る少女を洞窟内の端っこへと下ろすと、2人に指示する。
此処までの距離を走ったガギルには少し休憩して貰うとして、2人には働いて貰わないとならない。
高熱は雪で熱をさげ、高熱でも寒い場所には居させてはダメだと言う判断でルイエの毛で温める。
「そして俺はDPでどうにかする。ダンジョン、ボードを見せてくれ」
俺はボードを出し、操作する。
DPでは基本的に薬等と言った、ダンジョンとは無益そうな物は出す事が出来ない。
「だが…」
*****
薬草…栄養のある草。煎じて飲めば、栄養を補給出来る。効能…熱、咳、鼻水。5P
*****
「食料…植物なら出せる」
DPを消費して薬草を出す。
「ガギル! 薬草をすり潰す! 手伝ってくれ!」
「お、おぅ!」
俺はガギルと共に薬草を石と石をすり合わせ、すり潰す。本来なら綺麗な物で相応の処理をしたい所だが、DPはあまり消費したくない。
「よし、とりあえずはこれを食べさせよう」
「分かった。任せろ」
ガギルはそう言うと、薬草を掬って少女に食べさせる。
「ん"」
「我慢してくれ…」
俺では上手く少女に食べさせる事は出来ない。此処は器用なガギルに任せるべきだろう。
俺はルイエと一緒に少女の近くで丸くなる。
俺があと出来るのはこれぐらいだ。
「アノムー! ちょっと来てー!」
「エンペル、病人が居るんだ。少し静かにしてくれ」
「ご、ごめん…でもあのレイスが呼んでるー」
レイス…此処にレイスは1体しかいない。
俺はエンペルに言われ、洞窟の入り口へと向かった。
『うぅう…』
そしてそこに居たのは、ダンジョンの中、つまり洞窟の中に入れていないうつ伏せで倒れているジャルデの姿だった。
『た、助けてくれ…』
「悪いがお前は俺達の害になり得る存在だ。そう簡単に入れる訳にはいかない」
例え冷酷だと言われても、俺は良い。仲間を助けるぐらいなら安いもんだ。
俺はジャルデにそう言うと踵を返す。
『あ、あの少女を殺しても良いのか?』
その言葉に思わず足を止め、振り返る。
ジャルデは苦しそうになりながらも、此方を見て笑っていた。
「…どう言う事だ?」
『あの子が罹っているのは『魔力病』だ。薬草だけでは治せないぞ?』
「『魔力病』?」
『あぁ。魔力病ってのは、魔導師の才能ある子供が良く患う病気だ。その者の才能の大小があると言っても、空気中の魔力を取り込み、取り込み続ける身体は、中から血を大量に出血する。外傷とは違う内傷の傷は止血すら難しい』
「…」
『私ならその子を助けてやる事が出来るぞ…』
ジャルデが大きく声を上げる。
「ダンジョン…こいつの言ってる事は本当か?」
俺はダンジョンへと聞く。すると。
【凄腕の魔導師はそれと同時に魔法での専門家です。魔力病の症状の内容としても、その者が言っている事は合っております。嘘を言っている確率は低いかと思われます】
「そうか……」
俺は少し逡巡した後、ダンジョンへ命令した。
「ジャルデのダンジョンへの侵入を許可する」
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