第16話 魔王軍 四天王と軍隊長*
時はアルスとガルド、2人の四天王が軍隊長達を前に言った、ある一言の前まで遡る。
「「息子があのクソ魔王に追放された」」
「「「「「は?」」」」」
軍隊長達から呆けた声が一斉に漏れる。
そんな中、頭に1本ツノを生やした、筋骨隆々な男、オーガの"ザノバ"が口を開く。
「アルス様、ガルド様…もしや今、魔王様の事をクソ魔王と言われましたか…?」
こめかみに血管を浮かばせながら言う姿に、四天王の2人はポカンと口を開ける。
「あ、嘘だ嘘。てかザノバ、何でお前が此処に居るんだよ?」
「冗談に決まっているじゃないですか。それよりも貴方は此処に呼んでいない筈ですが?」
四天王の2人は、しれっとそれを否定し、逆に質問を返す。
「誠に申し訳ありません。我輩が軍隊長達を集めていると勘違いしたばかりに、ザノバを呼びました」
そこで赤い堅牢そうな鱗と黒光りとした2本のツノ、見事な羽根を持った男、竜人種ドラゴニュートの"ハクヤ"が会話に入り込み、深く頭を下げる。
「ハクヤ…前々から思っていましたが貴方には少しお人好し過ぎる嫌いがありますよ?」
「俺達にとっては余計なお節介って言うのが分からねぇのか?」
「わ、わ、我輩は…」
ハクヤが2人の重圧で吃る中、ザノバが立ち上がる。
「お二方…本当に先程の発言は冗談と捉えて宜しいのですね?」
「あぁ? 何だ? まだ居たのか、さっさと出てけ」
「貴方には用はありません。即刻立ち去りなさい」
「………失礼します」
ザノバの言葉を無視し、ガルドとアルスは手を払って離席を促す。
そしてザノバが扉を閉めた瞬間、2人は顔を見合わせて、大きく息を吐いた。
「取り敢えずは何とかなりましたね」
「何とかなったのか、ありゃあ? 流石の脳筋魔王バカのザノバでもギリギリ分かるだろ?」
ザノバは魔王直属の軍隊長であり、側近。魔王の事となれば、例えそれが親や子でも容赦なく手を上げる重度の脳筋魔王バカであった。
そんな中、ハクヤ以外の軍隊長から声が上がる。
「彼を追い出したと言う事は、先程の言葉は本当と受け取って宜しいのでしょうか?」
「あぁ。流石カースだな、アルスのお抱えの事はある」
「勿体ないお言葉です」
尖った鋭い耳に、黒いマント、異様に鋭く尖った犬歯を持った
「俺は何をすれば宜しいのでしょうか!」
「落ち着いて下さい、アラバマ。そういうとこは上司と似ているんですね」
「ありがとうございます!!」
「褒めていませんよ」
勇猛そう空気を身に纏い、鋭い牙に小麦色の立髪を生やした男、獣人
「魔王様に息子さん達を追放されたと言う訳ですね。それならカースとアラバマが呼ばれるのは分かるかもしれませんが、何故私とハクヤまで? 私はカスイ様直属。カスイ様と同じ四天王と言えど、アルス様方の命令には従えません」
上半身が人間の美しい女性、下半身が魚の様な尾びれを持った女、
「俺達の息子だけならそれで良かったんだがな…」
「ッ! まさか…!!」
「俺達の息子はアイツらの娘とパーティーを組んでいてな…一緒に追放された」
「何と…! 」
2人は驚きに口をつぐむ。
「カスイやアリシャはもう娘達を探しに行っている為、此処に居ません」
「なるほど…ですが…」
シースライトとハクヤが目を見合わせる。
「「公私混同なのでは…」」
部下を使って自分の子供を探し出す…それに少しの疑問を持ったが…。
「「公私混同? お前ら何か文句あるか?」」
「「「「あ、ありません!」」」」
「「ないなら直ぐ様俺達の息子を連れて来い!! 連れて来れなかったら…分かってるんだろうな?」」
「「「「は、はっ!!」」」」
軍隊長達は焦りながらも敬礼を行う。そんな中、ハクヤが2人の声に少し圧倒されながらも質問する。
「そ、それで質問なんですが…」
「「あぁ!?」」
「わ、我輩、まだ四天王様方の倅を見た事がなく…容姿を教えて貰いたいのですが…」
周りにいる軍隊長がそれに同意する様に頷く。
しかし。
「それは私みたいな礼儀正しい子です」
「そりゃあ俺みたいな頼れる男を探せば良いんだよ!! さっさと探しに行きやがれ!!」
「「「「は、はっ!!!」」」」
返ってきたのは容姿に関係ない事ばかりだった。
魔王と四天王は、1人1人、軍を持つ。
軍1つにつき、100万近くの魔物が存在しており、それを束ねるのが軍隊長の位を請け負った者達。
そしてその軍隊長達の直属の上司が、魔王と四天王。
5隊中、4隊が魔王の意に反する異例な事態、異常な過保護による親バカ騒動が始まったのだった。
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