第8話 質疑応答*
魔王城の執務室、そこには椅子に座って執務をする魔王、そして背後に佇む執事の様な獣人の男が居た。
「む、そう言えば最近カスイの奴は何処に行ったのだ? 姿を見ていないが…」
魔王が眉間に皺を寄せ、椅子へと寄りかからながら後ろを振り返る。
「はっ、カスイの奴は地方へと赴き、紛争を終わらせた後、次いで地方で起こっている魔物同士のいざこざを解決しに行くと申しておりました」
獣人が胸に手を当てて答えると、魔王は少し不機嫌そうに鼻で笑った。
「ふん、我の許可なくか。気に食わんな」
「自分の部下が危険に侵されていると知り、急遽向かった様です。どうか慈悲をお掛け下さい」
「…お前も珍しく肩を持つではないか」
「同じ四天王の1人、少しは情が湧きます」
「まぁ、良い…そう言えばアリシャの姿も見えんな」
「アリシャは1度故郷に帰りたいと、休暇を取りました」
「フン、彼奴もか。まぁ、アリシャは前々からそうだ。気にはしまい」
「…はっ、それでは次の予定を確認していきます、この後、地方の貴族であるーーー」
*
「よーし、よく食えよー」
「本当に良く食べるな…あの体のどこに入っていってるんだ…」
「むー…」
「眠い…」
ワームを召喚した俺達は、ワームを連れて洞窟の外へと来ていた。いつも通り天気は暴風雪で俺から離れる事が出来ないワームは、今の所大人しく雪を大量に飲食している。
雪は元々は水。飲食とボードに書かれている事から、大丈夫だと思ったが予想通りだった。
しかも此処の雪だったら延々と降っているから、幾らでも飲食して良い。
「一々、一緒に来るの面倒臭い。私寝てたい」
そんな事を思っていると、ルイエが小さく溜息を吐きながら呟く。
いつものルイエなら、昼寝の時間。だが、コイツを育てる為には飲食が必須、しかも洞窟に居ても数分もすれば永遠の眠りについてしまう。だから嫌々ついて来たのだろう。
「そうなると分担して作業、か…だけど今の所は難しいな」
今のDPは、ワームを召喚して残りが45 P。そして3人分の侵入者分と1日分のDPから76 P、ワームを召喚した事から何かあると思ったが…結局は何もなかった。
洞窟の中なら外よりも暖くて暴風雪も防げるが…数分も居たら昏睡状態だろう。
76 P。心許ない数字だ。
「どうにかしてダンジョンの領域が広がったら…」
そう呟くと、またボードが現れる。
【ダンジョンの領域の拡大についての情報を開示しますか?】
「俺の意志を汲み取った様なこの反応…やっぱりこのダンジョン、意志持ってるよな…。まぁそれよりも…はい、だ」
【位階を上げる、侵入者数を増やす事が領域の拡大に繋がります】
なるほど…侵入者数を増やすのは無理だな…環境的に…。
「位階を上げるには?」
【ダンジョンを発展させる事で位階が上がります】
「ダンジョンを発展…それはトイレみたいな施設を作った事みたいなのが含まれるのか?」
【含まれます】
「なるほど…」
俺はボードとの新たな情報を得るが、首を横に振った。
たが…今のDPじゃ発展させる事は難しい。今する事はなるべく節約していく事だ。食料が毎日出る様に調節しながら行かないと…今の俺達は生きていけない。
「もー、私この虫と一緒にいるの嫌ー」
「ギッ……」
エンペルから不満げな声、ワームからは何処か悲しげな声が聞こえる。
「うーん。まだ洞窟にあるのはトイレだけだからな…取り敢えずはもっと生活を快適にする予定だ。だからもうちょっとは我慢してくれ」
俺はエンペルに返事すると、ボードをまた開いたのだった。
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