第5話 北の山岳地帯アルベック
そこは魔王城、人里から1週間は掛かるであろう、北の果ての洞窟。
周りに何の植物もない、生き物も居ない、何処か温度異常に寒さを感じながら、外の横殴りの暴風雪を見て俺は呟く。
「ふぅ…此処まで来れば安心じゃないか?」
「あぁ。この暴風雪の中、3日は歩いた。此処なら問題ないだろう」
俺達は北の山岳地帯"アルベック"へと来ていた。
そのあまりの暴風雪、あまりの低温に生き物は生きていけないと言われるそこは、今の俺達にとって、うってつけの場所だった。
しかし、何故そんな地を3日も歩いてこれたのか。それには俺のダンジョンが役に立った。
「まさか雪の上でも温かく感じるとはな」
「あぁ、しかもアノムの周りは暴風雪も影響せずに、快適な温度を保っていた」
俺のダンジョンは、周りの環境を途絶する効果を持っていた。例え雨だったとしても俺達が濡れる事は無く、俺たちの周りだけ雨が降っている状態を保っていたのだ。
まさかここまでダンジョンが使えるとは思っていなかった。それに雪に足跡も付かなかった。もしかして俺達は少し宙に浮いているのかもしれない。
俺が少し良い気持ちになりながらそんな事を思っていると、2人が声を上げる
「早くアレ出してー! 私お腹空いたー!」
「私もアレ出して欲しいわ」
「はいはい。ほら、アレップルとキャロッチ」
俺は2人に言われ、半透明のボードを操作し、赤い果物とオレンジ色の野菜を、何もない空間から俺の目の前に落とす。
「わー! ありがとー!」
「美味しいわ!」
「アノム俺にもDPを使ってバナナナをくれ」
そう。今、ダンジョンのDPを使って食料を出している。
この移動期間にDPの使い方は色々ある事が分かった。物は食料から城までと建物が建てられ、幅広くある様だった。
今までは移動中に物を出しても邪魔になると出してこなかったが、これからは色々出してみても良いだろう。
「分かった、ほら」
「悪いな」
ガギルはバナナナの皮を剥き、すぐさま食べ始める。そんな中俺は皆んなから離れ、ボードを表示させる。
「DP表示」
*****
DP 115 P
*****
俺は座り込み、ボードを眺める。
実はこの移動期間にも、俺はDPの増え方にも法則を2つ程見つけていた。
まずDPは0時きっかりに付与される事。
これは移動中の夜中、急にDPが増えた事、そしてルイエの眠り時計耳で確認した事から、判明した。
因みにルイエの眠り時計耳が時間を間違えた事はなく、ルイエの耳は3時間毎にピクピクピクピクと動き出すのだ。
そして。
ダンジョンの侵入者数でDPの増え方が変わる事。今の俺のダンジョンの侵入者数は3、これは俺がダンジョン主になってから変わりはない。侵入者数というのは、恐らくガギルやエンペル、ルイエの事を指す。
侵入者1人に対して10 P付与、そして1日1 P付与されると考えれば納得がいく。
「普通のダンジョンなら何もない所に侵入者が入って来るなんて稀だ…このDPは、出来てから10日のダンジョンにしては凄いんじゃないか…?」
「アノム、どうかしたの?」
いち早く食べ物を食べ終わったのか、ルイエが話しかける。
「いや……これからどうやって生きていこうかなって…」
俺がそう言うと、ルイエは首を傾げた。
「どうやってって…好きに生きれば良いわ。魔物も人間も此処には居ないのだから」
いつも好きな様に生きているルイエから、まさかそんな励ましを貰うとは思わなかったな…もっと言うなら違うアドバイスみたいなのが欲しかったが…。
俺はその言葉に少し吹き出して笑いながら言った。
「それもそうだな…好きに生きてみるか」
「うん、それが良い。私はアノムの近くに居れればそれで良い」
「…ルイエ、そう言うのは誤解を招くから言わない様にな」
俺はルイエの言葉遣いを少し注意しながら、DPから食料を出して食べ始めた。
**********
名 ダンジョン
位階 0
主 アノム
領域 洞窟内
月日 10日
モンスター数 0
罠数 0
施設数 0
侵入者 3
Dスキル 移動
DP 110 P
**********
簡単な食料は1つで5 P。
この簡単な食料というのは何も加工されていない自然な食材の事を指す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます