第17話 出現!変人ドワーフちゃん!



 「ここ……だよな?」


 紹介された場所は、路地から少し離れた場所。

 外見は、特にあの売却店とは変わらない。変わっているとしたら、おんぼろの木でできていた扉が錆びついた鉄の扉になっているというところ。


 正直、鉄でできている扉の先にあるのが服屋だとは思えない。なんでこんなに頑丈な扉なのだろうか?


 いやいやいや。

 こんなこと考えていても仕方ない。

 ここを紹介したのはまぎれもなく、あのおじちゃん。もしここが違うなにか別の場所だったら、おじちゃんをうればいいんだ。


 俺はそう決め込んで、恐る恐る扉を開けた。


 「すいませ〜ん」

 

 「…………」

  

 中は真っ暗。そして、返事がない。

 床にほこりが被っていて鼻がもどかしい。


 「やっぱり違うか……」


 俺はそう言って、出ていこうとしたが……。


 「お客さんでぇ〜すか!!」


 甲高い女性の声とともに、一人の小さな女の子が俺の前に来た。


 その女の子の身長は、俺のへそあたり。100センチあるかないかというほど小さかった。


 俺は、身体が小さい種族を知っている。ドワーフだ。何度も英雄譚で出てきたのでしっていたけど実際見るのは初めて。

 ちなみに豆知識として、ドワーフは身長のことなんて気にしていないらしいけど、それを他人からいじられるのは嫌らしいということを知っている。


 「はい。そうです」


 俺は、ドワーフを見て驚いているという顔にならないように気おつけながら答えた。

 

 その言葉に目の前のドワーフちゃんは顔色1つ変えずに、ずっと腕を組み足を肩幅ほど開けて仁王立ちしたままだ。


 あっ、これってまさか俺が要件を言わないといけないやつか。


 「あの俺、売却店のおじちゃんに戦闘用の服を作ってもらうんならここがいいと言われてきたんですが……」


 「あの頭がかたい老人が、私の店をおすすめしたのかい?」


 「はい……なので俺はここに来ました」


 「ほえぇ〜!!」


 ドワーフちゃんは突然、体から力が抜けたかのように壁にもたれかかった。


 このドワーフ、見た目はただの少女だけど結構やばいやつなのかな……?


 「あの人が私の店を進めるとは!! ふっふっふっ〜……。とうとう私に時代が追いついてきたのかっ!」


 今度、ドワーフちゃんは後頭部を地面につける勢いでふんぞり返った。


 やっぱりこいつ、やばいやつだ。


 「服、作ってもらえませんか?」


 俺は話が長くなると面倒くさくなると思ったので、早速本題に入ることにした。


 「あぁ、喜んで作ろう。戦闘用だったよな。鎧? それともローブ?」


 ドワーフちゃんは、剣を振り下ろす動作や魔法使いのように杖を持って振り回して聞いてきた。


 こういう、女の子がしそうなことをするのはかわいいんだけどな。このドワーフちゃんは、オーバーリアクションだからその部分がいいように緩和される。


 「いえ。防御はいらないので、スキルを使っても汚れないものをください」


 「スキルか……よし! 少しどんなものか見せてもらおう!!」


 「わかりました……。ダーク


 俺は一瞬にして体全体を闇の中に入れて、もとに戻った。これでも汚れ方は同じなのは、わかっている。


 「こんな感じになっちゃうんですよ」


 俺は真っ黒になった服を見せながら言った。


 「ほほぉ〜ん。なるほどなるほど。スキルは実体型ね」


 「実体?」


 なんだそれ? スキルに型があるのだろうか?

 このドワーフ、ただのオーバーリアクション少女だと思ってたけどやっぱりあのおじちゃんがおすすめするだけある。


 「よし! だいたい構図はできた。体のサイズを測らせてもらうよ!」

  

 ドワーフちゃんはそう言って俺の体に抱きついてきた!


 「えっ! ちょっ!」

  

 な、何考えてんだこいつ!?

 俺は引き離そうとしたが、その腕は外れることなく俺の体にがっしりとホールドされていた。


 「はい。動かない動かない」


 「これって、体のサイズを測ってるんですよね?」


 ドワーフで体が貧相だから大丈夫だと思っているのだろうか? 

 俺にはそんなの関係ない。というか、男にはそんなこと関係ない。だれしも女性に体を密着されたら、体のあの部分が勝手に反応してしまうと言うものだ。


 「完了っと」

  

 俺は自分の理性と戦っていると、ドワーフちゃんは体から離れていった。


 危なかった……。あと数秒体を密着させられていたら不意にも元気になってしまうところだった。こんなところをキャシーとミラに見られていたりしたらこのドワーフちゃんがボコボコにされちゃう。

 本当に、一人で来て正解だったな。


 「……あとは色。何色がいい?」


 ドワーフちゃんは目をつむり、何かを考えながら聞いてきた。


 「じゃあ白と黒で」


 黒はスキル闇にちなんで。白はなんとなく、バランスが良くなると思ったから。だって黒だけだったら、怪しい人だと勘違いされそうだし。


 「はいはいはぁ〜い。では作ります」


 「どうぞ」


 ドワーフちゃんは近くにあった台に手のひらを向けて……。


 「創造クリエイト


 そう言うと同時に、手の周りからまばゆい光が放ち始めた。

 

 なんなんだ?


 俺のその疑問はすぐに解かれた。

 台に糸が現れて、少しづつ服のようなものが作り上げられ始めていたからだ。


 「すご……」


 俺が、呆然としているとまたたく間に服が出来上がった。


 「はい! 完成! どうです、これ? 自分でも最近作った中でもなかなかの出来栄えだと思います」


 ドワーフちゃんはそういって俺に服を見せびらかしてきた。


 はっきり言ってめちゃくちゃいい。服は黒を基調としている。縦のラインなど、ポイントとなる場所に白が入っている。そして、ところどころ光沢がかかっているところもまたいい。


 「ありがとう」


 そう言って服を受け取ろうとしたのだが、その手は空振りになった。

 俺はどういうことかと、見てみるとそこには服を神妙な顔立ちで見ているドワーフちゃんがいた。

 

 ど、どうしたんだろう?

 もしかしてどこかを間違えてしまったのかな?


 そう思っていると……。


「……合計で2000万リースです!」


「はぁ?」


 ドワーフちゃんは今までにないほど、気持ちが悪い笑顔になりながら言ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る