第15話 新しいヒロインの影
俺はラーク。俺は今、他国との会談をするためにある建物の椅子で相手を待ってる。
王である俺が行くのはめんどくせぇが、行かねぇとならねぇ。俺ぁ、こういうのは全部ゴミに全部やらせてた。まさか、こんなところでツケが回ってくるとは思ってもいなかったぜ。
そしてそれから数分後、扉が開かれた。
「あらあらあら〜……。あなたが私の前に立つのは何年ぶりでございましょうか? お久しぶりですわ。ラーク?」
来たのは白いドレスを着た女とタキシードを着た男。
チッ。なんでこいつら、遅刻したくせになんの悪びれもなく入ってきてんだよ! あぁ〜……こいつらが、他国の王じゃなかったらぶっ殺してたぞ。
「お久しぶりです。ミリシタ嬢」
さすがに他国のお偉方は、殺したくても殺せねぇ。
「ではこの度の会談。僭越ながらこのミリシタ王国、女王クリスティーナ様の執事サイルが仕切らせてもらいます」
「ちょっと待ちなさい」
女が俺のことを見ながら男の言葉を止めた。
なんなんだこいつは!?
まだガキのくせに、生意気に俺と同じ目線で口をききやがって……。女王かなんだか知らねぇが、あとで兵士を送って殺させようか??
「はい。どうされました?」
「ラーク。ロンベルト様の姿をお見受けできていないのですが、今はどこにいらっしゃるのですか?」
女はキョロキョロと周りを見渡してから言ってきた。
ははぁ〜ん。なるほどなるほど……。
こいつも俺と同じで、ゴミが嫌いだったんだな。
クソ生意気な女だと思ってたけど、以外と話がわかるじゃねぇか。
「あぁ〜あのゴミですか。あれは国外追放させて王族ではなくしましたよ。あんなの、見るだけでも不快な思いをしたでしょう? まぁ、今では公開処刑のほうが良かったと思ってますがね」
「……なんと言いましたの?」
女は前のめりになりながら聞き直してきた。
なんだ? 聞こえなかったのか?
「公開処刑したほうが良かったなと、思ってます」
「違います……。あなた先程、あのお方をゴミ呼ばわりしましたね!!」
女は顔を真っ赤にして立ち上かった!
「えぇ……。あんなの、ゴミと呼ぶのが適切でしょう?」
なんなんだ? なんなんだこいつ。
あいつはゴミだ。お前もアイツのことをゴミだ思ってたんじゃないのか!?
「ふ、ぶけないでください!! 本当にロンベルト様を国外追放したんですね?」
女は俺のことを指さしながら聞いてきた。
いやちょっとまて。こいつ、どこかで見たことがあると思ったら昔ゴミと一緒に遊んでた女じゃねぇか!
なんでよりによってこいつが女王になってんだよ!
「あぁ、したとも。そんなの我が国の勝手だろう。それを他国であるお前が何だと言うんだ!」
「……もう、あなたたちとは一切関わりません」
「何を言ってる……?」
女は俺に背中を向けて言ってきた。
なんなんだこいつ……。俺は王だぞ!
ふざけんるな!!
「貿易、人材供給、我が国から支援しているものをすべて停止します」
「な、なぜだ!! なぜそんなことをする!! 考え直せ!! お前にとってあのゴミがそれほどのものだったのか!?」
「もうあなたと、話すことなどありません」
「おい! まて!」
「――バタン」
女と執事は俺が止めたのに出ていきやがった。
なんなんだ……なんなんだよ。なんでゴミの話をした途端いなくなったんだよ!!
「クソっクソっクソっ!! 全部ゴミのせいだ……」
*
私の名前はミリシタ王国、現女王ミリシタ・クリスティーナ。今日の会談。一年に一度ロンベルト様と会えるので、楽しみにしていたのだけど言われたのは悲惨なものだった。
「申し訳ございません! 完全に我々の情報収集不足でした!」
有能な執事が頭を下げてきた。
あなたが謝ったとしてもなんにも変わらないのに。
「謝るぐらいなら頭を動かしてちょうだい」
私はそう言って足を早めた。
なんなのよ! せっかく久しぶりに会えると思ってたのに。いっぱいお話できると思ってたのに。今日のためにたくさん女王として頑張ってきたのに……。
もぉ! 最悪!
「ロンベルト様が関係しているかはわかりませんが、最近冒険者の中である一人の男が噂になっています」
「……聞こうじゃない」
私は執事が言ってきたことが大事だと思い、足を遅めて耳を向けた。
「なんとその男は、冒険者ランクFからいっきにAにまで昇進したそうです」
「すごいじゃない」
すごいもすごい。私が聞いた話だと冒険者ランクの昇進は、常人では不可能だと聞いている。それは昇進するためには何かしらの大きな功績がないといけないかららしい。
まったく、冒険者ってのは女王よりも疲れそう。
「はい。この前代未聞の昇進には、ランク特定不可能迷宮を攻略したという背景があるようで……」
ランク特定不可能迷宮……?
それって、あのSSSランク迷宮ってことかしら。もしそうだったらすごいわね。いや、すごいって言葉だけじゃその人に申し訳ないわ。
「ドラゴンを倒したという者がいたり、スキルが人間離れしているだとか」
スキル、スキル……。
「その人物こそがロンベルト様ですわ!」
「な、なんと!? それはスキルですか?」
私のスキルは勘。なんの確証もないけど、そう思ったことが本当に起こっている。
簡単に言えば、ラッキー女。でも、今回のはスキルではなくてただの勘かもしれない。
だけど、ロンベルト様がそこにいるかもしれない。
そう考えたら取る行動は一つ。
「……今から会いにいくわ。サイルも来なさい」
「はっ! このサイル。あなた様の後ろをどこまでもついていきます」
まったくこの執事……。
主人が大好きで困っちゃうわ。
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