あまやどり「薄くなった男」

進藤 進

第一章 タバコの煙

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 貴方の気持ちにフィットする物語があれば、幸いです。


 https://kakuyomu.jp/works/16816927863230486511


※※※※※※※※※※※※※※※


雨が、降っている。

男は駅ビルのポケットパークの椅子に座りながら、ボンヤリ眺めていた。


交差点から溢れ出す人波の中に、電話で聞いた目印を捜している。

時折、自分の頭を神経質そうに撫で上げている。


冬枯れを待つ秋の樹木のように、いじらしくも耐えていた髪の毛が一本一本、男から別れを告げていき、それでも男はその存在を確かめる行為を、やめる事は出来なかった。 


(何をやっているんだろう・・・俺は) 


男はポケットからタバコを取り出すと、火をつけた。

浅く吸い込んだ煙を力無く吐くと、又、交差点に目を向けた。


(どうせ・・・来るわけがない・・・) 


タバコの煙が真っ直ぐに昇って白いラインを作りながら、グレーの街を切り取っている。 


風が無いのだろう。

今日は少し、蒸し暑い気がする。

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