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朝。風呂施設のカプセル内で起床。ブランケットと羽毛布団がなかなか気持ちいい。単にうちのがダメすぎるだけかも知れないが。
朝風呂。時間帯を間違えたのかめちゃくちゃ混んでいた。広い炭酸湯がデブや痩せてはいるが皮膚の下にブヨブヨとした脂肪を蓄えた人々に占領されていた。みんな手足を伸ばし無表情で虚空を見て口を半開きにしていた。会話禁止なので声を出す人もいない。死体みたいだった。水死体。なぜか色白な人が多いし余計にそう見えた。とりあえず時間稼ぎでもう一回体を洗う。
風呂後、部屋に戻るエレベーター。スタッフがデカい台車みたいなのをガラガラ言わせながら乗り込んでくる。エレベーター内が狭苦しくなる。俺は端に追いやられた。スタッフからはなんの声掛けもない。無表情で虚空を見ている。目を合わせることもない。挨拶くらいできんのか。スタッフ同士はうるさいくらいペチャクチャ喋ってるくせに……急激に殺意湧く。もちろん違法行為だから暴力や殺人はダメ。でも脳内ではこのスタッフの腹は掻き切られ、赤黒い臓物が飛び出しそれをハイエナが食っていた。俺も本屋でバイトしてたことがあるから、対面の接客はしていたが、声掛けは柄にもなくめちゃくちゃ明るくやっていた。「いらっしゃいませー!」と元気よく言うのはもちろん、相談を受けるときも、明るく笑顔を絶やさない模範的態度だった。むしろ逆に同僚スタッフと話すことがなかった……基本的に無口で人嫌いだから。結局、誰とも仲良くならず、スタッフの内の一人(女子大生かなんかだった。)にはなぜか猛烈な嫌悪感を表明され、その本屋は潰れたのだが。
食堂で朝飯。ブリ大根定食。煮魚なんて普段まったく食わないのでやたら美味く感じる。大根も汁が染みてて良い感じ。テレビではウクライナ情勢について。幼稚園が砲撃されたことを「ウクライナ側がやった」「親ロシア派がやった」とお互いに主張とか。ロシアも中国もそうだが共産圏というか全体主義というか、あっち側の国が最近焦ってるのかなという印象。北朝鮮はいつも焦ってるけども……。私有財産を認めず収穫した財産をみんなに完全平等に分けます贅沢はできないが貧乏で死ぬこともない、みたいな純粋な共産主義には嫌悪感はないが、言論弾圧とか普通の状態である現実のあっち側の国には嫌悪感しかない。そもそも上層部が肥え太ってる時点で共産主義としては大失敗。私有財産を認めてんじゃねえよとしか思わない。でも日本のインテリ層、大学教授や作家なんかは応援してる人多いよね。表現の自由とかいらないって人たちなんだろうか。それに共産主義が実現すれば金持ちの人たちは全財産を失うことになるけども。インテリ富裕層はそれでもいいのかな。それでもいいと考える私たちは優しくてカッコイイとでも思っているのか。あるいはマゾヒストで、全財産を奪われるという想像に性的な快感を覚えるのか。まあ、共産主義なんて所詮は実現する見込みのない話だし。大体は中央に絶対的権力が集まるから、独裁になってしまう。集まった富を平等に分配することなく独り占めしてしまう。人間は弱いから、完全な共産主義の実現なんて無理な話なのだ。日本はツイッター見ればわかるが政府批判を大いに楽しめる環境なのだから、まだ恵まれている。俺は意味ないからしないけど。政治家なんて常に全員死なないと根本解決にはならないとしか思っていないから……。右から左まで政治家じゃなくビジネスマンしかいないから、この国には……。ウクライナ問題は続きそうだ。ロシアの作曲家は好きなのが多いのだが。特にボロディンの交響曲第2番は最高なんだが。しかしこういう危機的ニュースに芝居がかったナレーションを付けてエンタメ化してしまう日本という国は流石。やばい国だな。ワイプでタレントが眉を八の字にして不安感を演出する顔をしていて、それがあまりにも間抜けで笑ってしまった。それでお金が貰えるならいいよね、平和だよね、とか。
カプセル内で仮眠。起きたらチェックアウト30分前でやばいと寝癖そのままで退館。
電車。帰宅。
昼だが腹は減っていない。インターホン。誰か来た。誰も呼んでいないから当然居留守。さっさと失せろ。パソコンでお気に入りのゲイ動画を見ながらチンポを気持ちよくする作業。いまいち気持ちよくなくて体調が悪いのかなとか思うがまあどうでもいいか。
コンビニのドリップコーヒー入れて飲む。
外出。
よく行くつけ麺屋に入ろうとするがめちゃくちゃ混んでいる。一旦ブックオフに移動。ヴィヴァルディの「調和の霊感」が売っていたので買いたかったがここもレジがめちゃくちゃ混んでいて。棚にCDを戻す。つけ麺屋に移動。何とか入れた。食う。摺り下ろしニンニクを入れて特製トッピングの水餃子、チャーシュー、野菜、焼き海苔、味付け卵も加えて。
雨が降り出しコンビニで傘買う。折り畳み式だがやたらデカいから携帯に不便なやつ。
ブックオフに寄る。
さっき買えなかったヴィヴァルディ「調和の霊感」を買う。上の階が古本コーナーだから行く。中島らも「ガダラの豚 上下巻」伊集院静「受け月」ラフカディオ・ハーン「怪談」谷崎潤一郎「鍵・瘋癲老人日記」を購入。
ブックオフ通路で手を繋ぎゆっくりこちらに歩いてくるカップルと遭遇。男は身長高い185くらいありそう。女は小さい。やたらゆっくり歩いていて、俺の手前で止まり、本棚を見ることもなく、じろじろと見られた。視線を感じた。そして本棚を見ることなく手を繋ぎゆっくり歩いて行った。本なんか読む暇あったらセックスしよーよ、イチャイチャ気持ちいいよ、読書よりセックスでしょ?みたいな奴ら。なぜブックオフにいるのかというと、ブックオフで本買う奴には恋人なんていないだろうから、そんな陰気な連中に自分たち幸せなカップルの姿を見せつけて回りたい、という欲望からであろう。殺意オブ殺意。幸せになるのは自由だがそれをいちいち見せて来るな。勝手に幸せになり勝手に生きて行けばいい。それで十分ではないのか。なぜ幸せになるのに他人を見下し侮蔑し罵声を浴びせる必要があるのだ?全く理解できない。……俺の脳内では男の方のチンポはハイエナに噛みちぎられたし、女の方は絶叫する屈強な黒人に、その巨大な30センチ以上あるチンポに臭い使い込まれたマンコを犯されていた。二人とも白目を剥いて「アギャー!」と叫んでいた。
また、ブックオフの店内には感傷的なナルシシズム全開の歌ばかり流れていて辟易とした。日本人は感傷的なものがとにかく好きだという印象。特に切ない恋愛系。そんなんばっか流れていた。俺には一ミリも響かない。エモいとか、一度は感じてみたいがこんな人生じゃ無理だろうな。不愉快にしか思えない。特に良く知らないがなんたらかんたらどうしたらいい、なんたらうんたらどうしたらいいと延々女性が絶叫している歌は「どうしたらいいって自分で考えろボケ!こっちはこっちで大変なんじゃ!甘ったれるんじゃねえぞ!」という感想しか浮かばなかった。後は猫なで声の男が「名前呼んでよ、ねえ」と連呼しているのが聞こえてぞっとしたとか。ただ「シラス!私たちは最高だった!」みたいなコーラスの曲が流れたのには笑いそうになった。なんだよ「シラス」って。「シラス」を題材にするとか天才としか思えない。聞き間違いだろうとは思う。日本に「シラス」を題材にしてヒットソングを生み出す凄まじい天才などいるわけがない。
全体としてはあのゆっくりとゾンビのように歩いてきたカップルの件もあり、侮蔑され、見下され。そんな人生を感じるに至った。自分が気持ち悪い存在なのが悪いと言われたら返す言葉もないが。鬱々とした気持ちでブックオフ出る。雨。マスクを顎までズラして一人なんか喋ってる坊主のおっさんがいた。知らない鳥がやたら絶叫するみたいに鳴いていた。もう何も外の世界の音を聞きたくないのでイヤホンをし、モーツァルトの35番シンフォニーを聴く。素晴らしい曲。
駅。電車。松屋でメシ。牛めしサラダセット。
コンビニで黒ウーロン茶、チョコビスケット、朝飯用にデニッシュブレッドを購入。雨は降り続け。寒さはそうでもない。
仮眠。思ったより長く寝た。頭がスッキリしたので読書。音楽プレーヤーにメシアンの「トゥーランガリラ交響曲」スメタナの「我が祖国」を入れた。「マシアス・ギリの失脚」を読みながら「我が祖国」を聴く。
井伏鱒二の「川釣り」、田中英光の短編集、ロッシーニの序曲集をAmazonで注文。
ちょうど今日が終わる23:59に「我が祖国」最終曲「ブラニーク」が終わる。案外あっさりとした爽やかな終結部だった。仰々しくないところはいい。いや仰々しいのも好きではあるが。ベートーヴェンの第5交響曲の終結部だけ何回も聴いたり、よくする。
仕事がない日は精神が疲弊しないから、良いものだ。他人と接しないから、それが良いのだろうか。自分をゴミ扱いし罵声を浴びせたり馬鹿にしてくるくせにいきなり馴れ馴れしく話しかけてくる連中と接しないから……。だが、元々そんなに元気な人間ではないから、鬱々とした感じは常にあるが。まあ、こんなもんだろうなと。もう少し本読んで寝る。
(了)
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