第13話

「という感じでしょうか?最後の方は少々お食事中には良くないお話でしたが、僕に話せる事は以上です」

「……ほう」

 そう声を漏らすバンデンブラン。

「ご飯がきっかけなんですか?」

「はい、お互い空腹だったので色々と無茶をしすぎました……」

 エリザはその事に気がいってしまっているようだった。

「戦闘中の事は結構曖昧だな」

「はい、すみませんが生き残る事で精一杯だったもので……」

 シャーリーはその点をついてきたが、イネスは申し訳無さそうに答える他無かった。

 そう話しながら肉料理を頬張るシャーリー。バンデンバランはと言うと興味深げに話を聞くのだった。ただ少し眉を寄せて。

 一通り話し終えると喉が渇いたのか、イネスはグラスに注がれた水を飲む。それを見てバンデンブランは、

「もし好きならば酒も用意するが?」

 という申し出に、イネスは、

「ありがとうございます。けれどお酒は体が受け付けないので水で大丈夫です」

「そうか、余計なお世話だったな」

「いえ、気を使ってくださってありがとうございます」

 そうして水を飲んでふぅとため息を吐くと、イネスは途中だった料理に手をつけるのだった。

 肉料理を食べ終わると、デザートが運ばれてきた。それにイネスは驚いてた。運ばれてきたのはチョコレートと生クリームをふんだんに使った菓子の盛り合わせだった。

「こんな豪華なもの、初めて見ます」

「料理長に、今日の客は甘い物が好きだって伝えたら、菓子担当の料理人が妙に張り切ったらしくてな」

「そ、そうなんですか……」

 シャーリーがそんな風に言うチョコレート菓子を小さいスプーンですくって口へと運ぶと、イネスから幸せオーラが溢れ出した。

「気に入った様で何よりだよ」

「あ、はい、凄く美味しくて……どう表現したらいいか……」

 そう慌てるイネスに、シャーリーは、

「気にせずに食べてくれ、きっと料理人も嬉しいだろうから」

「はい、ありがとうございます」

 そう言ってイネスはチョコレート菓子を次々に頬張っていく。

 そうして全て食べ終えると、幸せそうな笑顔を浮かべて、

「はぁーこんなに美味しいチョコレート菓子を食べたのは初めてです」

「そりゃ良かった」

 そんなイネスの姿を見て、

「それでは腹も満たされた事だし、食事はお開きにするか」

「はーい、ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした」

 そう言うバンデンブランに従うように、シャーリーとエリザも同じ言葉を口にして席から立ち上がる。

「僕も、ごちそうになりました、ありがとうございます」

 イネスもそう言って席を立つと、礼をした。

「後は自室でゆっくりしていてくれ、また明日会おう」

「はい、失礼します」

 そう言って部屋を出ると、使用人のソーマスが待っていて、

「お部屋までご案内します」

「はい、ありがとございます」

 と言ってソーマスの後を付いて行くのだった。

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