第17.5話「閑話~仙田福太の告白~」
俺、仙田福太、今から一世一代の告白をかまします。
お前には優奈先輩は無理だって?ノンノン、そんなことはやってみないと分からない。
子ども食堂で一緒に遊んでいた子どもたちは親御さんが迎えに来てくれて帰ったし、俺がやることはなくなった。
聞いた話によると、あきらと優奈先輩が子どもたちを一緒に送っていったらしい。
正直、滅茶苦茶羨ましいが、今俺が優奈先輩と関わっても嫌な眼で見られるだけだろう。
あきらがしっかり俺の良さを吹聴してくれさえすれば、きっと優奈先輩も俺に惚れるはずだ。
そこで俺が告白するってわけだ。
俺の情報網によると、優奈先輩はかなりモテるらしい。俺が所属する旅行サークルで優奈先輩と同じ学部の健一先輩が近々口説くと言っていた。健一先輩は悔しいがイケメンだから、先輩が動く前に先手を打つ必要があった。
「仙田くん、どうしたのですか?そんなソワソワして」
愛子ちゃんが話かけてくる。担当していた子どもが帰ったらしい。
「おお、愛子ちゃん。いやね、男には果たさねばならぬ宿命というものがあってね」
「宿命、ですか。それって、前にあきらくんに電話した件ですか?」
「愛子ちゃん、何でそれを知っているんだ」
「ああ、あのとき部室で私と一緒にいましたから」
「そうなの。ま、愛子ちゃんには関係ない話だから」
「ひどい…。私だけ除け者ですか…」
俺がきっぱりと話を切ろうとすると、愛子ちゃんが悲哀の表情を浮かべる。
しかし俺はこの娘に構っている暇はないのだ。優奈先輩を探さなければ。
「はいはい。今取り外せない用事があるから、後でね」
「あ、仙田さん」
俺は愛子ちゃんから逃げるようにその場を去った。
旅館の外で待っていると、優奈先輩とあきらが二人でこちらに向かってくる。
「じゃあ、僕少しお手洗い行ってきますね」
あきらは俺に気づき、気を利かしてくれた。
俺は覚悟を決めて優奈先輩に話しかける。
「優奈先輩!ちょっと良いですか?」
「お、仙田くん。どしたの?」
「ここじゃアレなんで」
優奈先輩を連れて、歩いて数分の誰もいない公園まで向かった。
先に優奈先輩をベンチに座らせて、俺も横に座る。
よし、シチュエーションは完璧だ。
「優奈先輩…この前はすみませんでした!」
「おおお、いや別にあたし気にしてないから大丈夫よ」
「俺、あの時は自分じゃなかったていうか、そう、酒に乗っ取られてたんです!」
「ははっ、若者は過ちから成長していくんだから、前は前で反省して、次から気を付ければ良いんだよ!」
「先輩、やっぱり優しいっすね…」
「そう?ってか話ってそれだけ? 別に皆がいるところでも良かったんじゃない?」
優奈先輩は顔をキョトンとさせて微笑みかける。
そして俺は優奈先輩の前に立ち、息を吸う。
「聞いてください!!!!」
「は、はい!!??」
俺の迫力に圧倒された優奈先輩は意表を突かれたようだ。
そして俺は告白した。
「俺、優奈先輩のことが好きです!付き合ってください!!」
「え、ごめん。無理かな」
「えええええええええええええ無理なんですか!!??」
告白からコンマ何秒程度の間隔でお断りの返事を貰ってしまった。
思わず驚きの声を吐き出す。
「いやそんな驚く!? 逆にあって間もないのによくいけると思ったね」
「それは、あきらが俺の良さを吹聴してくれたはずであって、俺の魅力が余すことなく優奈先輩に伝わっていれば絶対いけると思ったんですが!」
「あ、あれってそういうこと!? いきなりあっきーが仙田くんの話をしたから」
「あきらめ…!もっとうまくやってくれよ!」
「えーと、仙田くんはガールズバーでぼったくられて、払えないから居座り続けたって話だけ聞いたよ」
「そのエピソードは俺の汚点なんだよおおおおお」
「まあまあ、仙田くんはもっと良い人が見つかるさ」
「そんなこと言うなら優奈先輩付き合ってくださいよ」
「うーん、無理かなぁ」
「うわあああああああああああああ」
こうしてフラれた相手に励まされながら旅館へと向かっていくのであった。
今日はお酒が進みそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます