Ⅸ
(どうしてうまく話せないのかな? せっかく、翔ちゃんと二人っきりなのに……。いつも、いつも、どこかで躓くんだよね)
二葉は、どこか暗い顔になりながらりんご飴を食べる。
甘酸っぱく、この自分の気持ちと同じような感じがする。
その様子を見ている翔也は、りんご飴をかじりながら考え事をする。
(んー、やっぱ、何かあったのか? 女心、分からねぇ……)
二人は、再び、神社の前を通る。
「二葉、ちょっといいか?」
「え? 何?」
「いいから行くぞ!」
そう言いながら、翔也は二葉の手を引っ張る。
階段の中腹で左にある道に曲がる。
そして、広い公園にたどり着く。
周りには、桜が満開に咲いており、翔也は周りをきょろきょろしながら何かを探している。
公園に空いているベンチまで二葉を連れて行くと、そこに二人揃って座る。
二人は手を握ったまま、話もしない。
それから数分が過ぎ、ようやく翔也から口を開く。
「ふ、二葉?」
「は、はい……」
ぎこちない二人。
「そ、そういえば、二人で話すのも久しぶりだな。ほら、学校では同じ部活だけど、あまり話した事ないからな」
「そ、そうだね。しょ、翔ちゃんと二人で話すのは久しぶりだし、私は楽しいよ」
「そ、そうか……」
「うん……」
二人とも顔を赤くしながら目を合わせようとしない。
「そ、そうだ。夏海のお土産を買う前に少し遊んでいこうか……」
「うん……」
二葉は小さく頷く。
(だ、大丈夫だよね? 私、顔、変になっていないかな? 翔ちゃんの顔、まともに見れない……。どうしよう)
二人は手をつないだまま、次に何を離そうか、考える。
「そうだ。あそこに行かないか?」
翔也は、近くの射的屋を指す。
「え?」
二葉は、翔也が指した方向を見る。
「ほら、りんご飴も食べ終わったし、たまにはこういった子供の遊びもいいかなぁ? と、思ってな……。あっ! ごめん、ごめん。手、握りっぱなしだったな」
翔也は二葉から手を放そうとする。
だが、二葉は翔也の手を離さなかった。
「ふ……ふふふ」
二葉は笑った。
「え?」
翔也には、理解できなかった。
「ううん……。何でもない……。それよりも……」
二葉は立ち上がって、翔也の前に立つ。
「早く行こ?」
二葉が言うと、翔也は手を引っ張られるかのように立ち上がる。
「そ、そんなに射的がやりたかったのか? お、お前もまだ、子供だな」
翔也は照れて言った。
「まだ、子供だよ。それに翔ちゃんも子供じゃん!」
二葉はそう言い返すと、ふと、昔の記憶がよみがえる。
「翔ちゃん、翔ちゃん。桜が舞っているよ」
「おー、そうだな」
幼い頃の翔也は、二葉の手を握って、二人で遊んだことがある。
「ねぇ、ねぇ、せっかくだから遊んで帰ろうよ」
「そうだな。でも、お母さんたちが探しているかもしれないぞ」
「えー、遊ぼうよ」
二葉は少し涙目になりながら、ほっぺを膨らませ、翔也を見た。
「そ、そんな目で見るなよ。お、俺が泣かせたみたいになるだろ?」
「じゃあ、遊ぼう?」
笑みを浮かべる二葉を見て、翔也は、少しドキッとする。
「わ、分かったよ……」
「うん!」
諦めた翔也は、二葉の言うことを聞く。
「で、何して遊ぶんだ?」
「んー、あそこ、あそこで遊ぼ!」
二葉が指す屋台は、スーパーボールすくいだった。
二葉と翔也は歩きだす
「お前、こんなのが欲しいのか?」
「え?」
「食べ物を食べて、そこで食べたりとかの方がいいんじゃないのか?」
「んー……」
二葉は足を止めて、少し考えた。
「どうするんだ?」
翔也は、考える二葉に時間を与えて、待ってあげる。
(確かに私が絶対に取れるわけでもないし……翔ちゃんがそっちの方が言いていうなら……)
二葉は考えた後に、決心がつく。
「そうだね。翔ちゃんの言う通り、食べ物にする」
「そうかい……。だったら、どれにする?」
翔也が辺りを見渡す。
綿菓子、焼き鳥、チョコバナナなど食べ物屋は揃っていることには揃っている。
でも、子供のお小遣いは数が知れている。
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