(どうしてうまく話せないのかな? せっかく、翔ちゃんと二人っきりなのに……。いつも、いつも、どこかで躓くんだよね)

 二葉は、どこか暗い顔になりながらりんご飴を食べる。

 甘酸っぱく、この自分の気持ちと同じような感じがする。

 その様子を見ている翔也は、りんご飴をかじりながら考え事をする。

(んー、やっぱ、何かあったのか? 女心、分からねぇ……)

 二人は、再び、神社の前を通る。

「二葉、ちょっといいか?」

「え? 何?」

「いいから行くぞ!」

 そう言いながら、翔也は二葉の手を引っ張る。

 階段の中腹で左にある道に曲がる。

 そして、広い公園にたどり着く。

 周りには、桜が満開に咲いており、翔也は周りをきょろきょろしながら何かを探している。

 公園に空いているベンチまで二葉を連れて行くと、そこに二人揃って座る。

 二人は手を握ったまま、話もしない。

 それから数分が過ぎ、ようやく翔也から口を開く。

「ふ、二葉?」

「は、はい……」

 ぎこちない二人。

「そ、そういえば、二人で話すのも久しぶりだな。ほら、学校では同じ部活だけど、あまり話した事ないからな」

「そ、そうだね。しょ、翔ちゃんと二人で話すのは久しぶりだし、私は楽しいよ」

「そ、そうか……」

「うん……」

 二人とも顔を赤くしながら目を合わせようとしない。

「そ、そうだ。夏海のお土産を買う前に少し遊んでいこうか……」

「うん……」

 二葉は小さく頷く。

(だ、大丈夫だよね? 私、顔、変になっていないかな? 翔ちゃんの顔、まともに見れない……。どうしよう)

 二人は手をつないだまま、次に何を離そうか、考える。

「そうだ。あそこに行かないか?」

 翔也は、近くの射的屋を指す。

「え?」

 二葉は、翔也が指した方向を見る。

「ほら、りんご飴も食べ終わったし、たまにはこういった子供の遊びもいいかなぁ? と、思ってな……。あっ! ごめん、ごめん。手、握りっぱなしだったな」

 翔也は二葉から手を放そうとする。

 だが、二葉は翔也の手を離さなかった。

「ふ……ふふふ」

 二葉は笑った。

「え?」

 翔也には、理解できなかった。

「ううん……。何でもない……。それよりも……」

 二葉は立ち上がって、翔也の前に立つ。

「早く行こ?」

 二葉が言うと、翔也は手を引っ張られるかのように立ち上がる。

「そ、そんなに射的がやりたかったのか? お、お前もまだ、子供だな」

 翔也は照れて言った。

「まだ、子供だよ。それに翔ちゃんも子供じゃん!」

 二葉はそう言い返すと、ふと、昔の記憶がよみがえる。


「翔ちゃん、翔ちゃん。桜が舞っているよ」

「おー、そうだな」

 幼い頃の翔也は、二葉の手を握って、二人で遊んだことがある。

「ねぇ、ねぇ、せっかくだから遊んで帰ろうよ」

「そうだな。でも、お母さんたちが探しているかもしれないぞ」

「えー、遊ぼうよ」

 二葉は少し涙目になりながら、ほっぺを膨らませ、翔也を見た。

「そ、そんな目で見るなよ。お、俺が泣かせたみたいになるだろ?」

「じゃあ、遊ぼう?」

 笑みを浮かべる二葉を見て、翔也は、少しドキッとする。

「わ、分かったよ……」

「うん!」

 諦めた翔也は、二葉の言うことを聞く。

「で、何して遊ぶんだ?」

「んー、あそこ、あそこで遊ぼ!」

 二葉が指す屋台は、スーパーボールすくいだった。

 二葉と翔也は歩きだす

「お前、こんなのが欲しいのか?」

「え?」

「食べ物を食べて、そこで食べたりとかの方がいいんじゃないのか?」

「んー……」

 二葉は足を止めて、少し考えた。

「どうするんだ?」

 翔也は、考える二葉に時間を与えて、待ってあげる。

(確かに私が絶対に取れるわけでもないし……翔ちゃんがそっちの方が言いていうなら……)

 二葉は考えた後に、決心がつく。

「そうだね。翔ちゃんの言う通り、食べ物にする」

「そうかい……。だったら、どれにする?」

 翔也が辺りを見渡す。

 綿菓子、焼き鳥、チョコバナナなど食べ物屋は揃っていることには揃っている。

 でも、子供のお小遣いは数が知れている。

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