03-02 『調査報告』 Side:Asuka
ドサリ。
重い音に師匠が目線を上げる。
師匠の仕事机の上に情報の束を置いた音だった。
「師匠、持ってきましたよ」
「お疲れ、収穫はあったか?」
「はい」
書類の山の表面を何枚かパラパラとめくる。
デジタルデータで情報を収集することも可能ではある。
だが、相手方がハッキングに強い以上、暫くはハッカーを雇い、我々は紙面での情報交信手段を利用するべきだろうというのが師匠の見解だった。
そんな事を考えていると、やがて目当ての書類が山の頂点に現れる。
「えーと、師匠がおっしゃった通り、25年前から20年前までのグラフィア市の男児出生届けを調べてきました」
「膨大な量だっただろう」
「いえ、仰っていた条件を付けて絞り込めば二桁程まで絞り込めましたよ」
二桁といえど、それを一つ一つ手作業で確認するのには気が遠くなるような数ではあったが。
「協力者にもお礼を伝えておいてくれ。出生届を抜き取るなんてそう簡単に出来る事じゃないだろう」
「はい。……まぁ、彼は天才なのでこんなの朝飯前だと思いますが」
手に持った書類を師匠に渡す。
師匠の細い指がピタリと紙の縁に添えられた。
「高校に進学したが、家庭はそれほど裕福ではない。そして、10代後半に死亡、或いは行方不明になった。この3つの条件を満たしている人物は30件程ありました。しかし……」
「双子は居ない、か」
師匠がパラパラと書類の束をめくる。
「はい」
「……やはり」
ポツリと呟かれた言葉に身を乗り出すと、師匠は腕を顎の下で組んだ。
まっすぐに僕を見つめる2つの目には、相手を蹴落とすような強い光が宿っている。
「ハイドは――彼は、■■■■■■」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます