コードトークダブルス

春嵐

第1話

不思議な女性だった。

初めて会ったのは、近くの公園。そこそこ人がいるなかで、ひとりだけ、まるで誰にも見えていないかのように、ちょこんとしゃがんでいた。ベンチではなく、砂場の隅。


「ベンチ。空いてますよ」


なんとなく、声をかけた。しゃがんでないで、座ればいいのに。


「」


「え?」


何か、話しかけられた。しかし、知らない言語。いや、聴いた感じ、語彙に意味があるとは思えない。言葉ではないのか。

彼女。伝わらないことに気付いたのか、またしゃがみこんでしまった。


「はぁ。よいしょ」


しかたがないので、隣に座った。

砂場。着ているものに、ざらざらとした感触。

彼女。びっくりしてこちらを見ている。


「邪魔でした?」


彼女が首を振る。

しばらく、座っていた。

彼女の隣で。

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