第47話 お酒造り研究所の視察
-side エリク-
「さて、俺たちの領地にドワーフが来たらしい」
“となると、酒の製造は急務か”
「そうだのう、領主だと言えば良くしてくれるだろうが、相手のことを慮る事は悪くないからのう」
今エリク達は領地内のワイン研究所にいる。
頑固で偏屈で、中々警戒心が強い性格であるとドワーフは言われているが、酒が手に入れば、目の色を変えるらしい。酒と引き換えに、ドワーフに色々便利な物を作ってもらえる事は間違いない、そう考えての即断即決行動だ。
幸い、酒については以前から色々研究していた。研究していた酒は2つ。ウイスキー、ワインである。
まずは元公爵領でワインを作っていた人たちがいる。その人たちにはスキルで[検索]した以下の手順で、ワインを作ってもらった。
◯ワインの作り方◯
1. ぶどうの収穫: ぶどうが熟したら収穫します。収穫時期はぶどうの品種や気候によります。
2. ぶどうの選別と洗浄: 収穫したぶどうを選別し、傷んでいるものや異物を取り除きます。洗浄して清潔な状態にします。
3. ぶどうの破砕と圧搾: ぶどうを破砕して果汁を取り出します。赤ワインの場合は皮と種も一緒に発酵させますが、白ワインの場合は果汁だけを使用します。
4. 発酵: 発酵容器(発酵タンクや樽など)に果汁を移し、酵母を加えて発酵を始めます。赤ワインは数週間から数ヶ月、白ワインは比較的短い期間で発酵が進みます。
5. 清澄と熟成: 発酵が終わったら、ワインを澄ませるために沈殿物を取り除きます。その後、熟成のために樽やタンクに移します。熟成期間はワインの種類や目指す味によって異なります。
6. 瓶詰め: 熟成が終わったら、ワインを瓶に詰めます。この際、ろ過や加酸処理を行うこともあります。
7. 熟成(瓶内): 瓶詰め後も一定期間熟成させることで、風味がさらに深まります。
◯end◯
ワイン樽が沢山置いてある研究所の地下は、温度管理がしっかりされていて、とても良い香りが香っている。
まだ、ブドウを領地で作れるようになったのは最近だし、ワインを最初に作ってから年数が立っていないため、あまり美味しいお酒は作れていないのが難点だ。ワインは年数が経てば経つほど美味しいものが出来やすいからな。
強いて言うなら、アルコールで作られてないぶどうジュースはとても美味しい。本音を言うならそっちを客に出したいのだが、どうしてもアルコールが良さそうだと想定されるので、それは却下だろう。
エリク達が楽しく説明を聞きながら、研究所の視察していると、研究所長が来て、ワガママを言った結果、試飲させて貰える事になった。
「よっし!」
「まだ研究途中なので美味しくはないですが、ご堪能ください」
クンクン。まずは香りを嗅ぐ。通常のワインの香りがして、悪くない出来だ。
--ゴクリッ!
“ブフッ……!”
「「まずいっ……!」」
強烈な酸味が襲ってきた。渋みもすごく、控えめに言っても、美味しいとは言えない。
研究所員も苦笑いだ。周りにいるスタッフはまずいものを飲ませてしまったと若干不安そうにしている。
「ガハハハハ!まだ、未完成だもんな!」
職員を安心させるため、エリク達は一通り笑い飛ばした後、気を取り直して、ぶどうジュースを飲むことにした。
ぶどうジュースの方が自信がありそうな感じがしたからだ。
「……ほ、本当に美味しいな、ぶどうジュースの方は」
「そうだのう、後味も完全にハスカップの方の後味は完全にワインっぽい」
“もうドワーフに出す酒はこれでいいのではないか?”
「噂によるとドワーフは酒の味とか気にせず酔えればいいらしい。はっはっは」
「こんな微妙なワインでもか」
「うん」
“それはオワってるのう。酸味がちときつすぎるな。これからに期待だのう”
「まだ、年数も経ってないからなこれくらいが普通だよ」
とまあ、こんな感じで作られていた美味しくないが、アルコールが入っているワインをドワーフのお土産として持っていくことにした。
また、ついでに隣にあったウイスキー研究所も視察する。こちらも手順を[検索]して、作って貰った。
◯ウイスキー作り方◯
1. 原料の準備。水と穀物: ウイスキーには主に大麦、トウモロコシ、ライ麦などが使われます。
2. 粉砕:穀物を粉砕して粗い粉状にします(グリストと言います)。
3. マッシング:粉砕した穀物を温水と混ぜて麦汁を作ります。このプロセスでデンプンが糖に変わります。
4. 発酵:麦汁を冷却し、酵母を加えて発酵させます。発酵は数日間行われ、アルコールと二酸化炭素が生成されます。
5. 蒸留:発酵液(ウォッシュ)を蒸留器で加熱し、アルコールを蒸気として取り出します。蒸留は通常2回行います(連続蒸留やポットスチル蒸留などの方法があります)。
6. 熟成蒸留された液体(ニューメイクスピリッツ)を木樽に入れて熟成させます。熟成期間は数年にわたり、ウイスキーの風味が深まります。
7. 瓶詰め:熟成が完了したウイスキーをフィルターでろ過し、瓶に詰めます。必要に応じて水でアルコール度数を調整することもあります。
- 正確な温度管理や衛生管理が重要です。
◯END◯
ウイスキーも味見をしに、作られている工場へ行く。どちらの工場も比較的寒冷な地域で作られているため、移動はちょっと肌寒い。
さっきの反省を生かして味見は少しだけ。
--ペロリ
「おお、こっちは美味しいな」
『本当だね、これだったら度数も高いし、ドワーフも喜んでくれそうだのう』
「悪くないのう」
“これだったら、満足できるだろうて”
美味しい酒もちゃんとあって良かったと思ったエリク達は、研究所員を労って、酒を持ちながら、そのまま、ドワーフ達の元へ向かうのだった。
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