初ダンジョン

第15話 ダンジョンへ

-side エリク-




 翌日、エリクたちはダンジョンに向かうことにした。



『ねえ、ところで、なんで私も一緒に行くことになってるの?』

「細かいことは気にするな」



 太々しく言うエリク。



「そうだぞ。お主だって、エリクが心配ではないのか?白状者め」

『う……わかった。行くよ、行く』



 トールとエリクにあっさり完敗したレオン。



“おい、何をしている。早く行くぞ!”



 一方、今朝早くから、ソワソワしていたルークはみんなを急かした。ダンジョンへはみんなでトールに乗っていく。



「それにしてもダンジョンに行くのは、久しぶりだな」

“うむ。我も昔はよく行ったのだがな。里の長となってからは行けなかったのだ”



 どうやら、ルークはフェンリルの里の長だったらしい。



『うんうん。2匹に刺激を受けて、エリクも戦闘が楽しくなるといいね。そして、あわよくばそのまま魔王も倒してくれるともっといい』



 どうやら、それが狙いらしい。



「魔王ってそんな簡単に倒せるわけないだろ」



 エリクは呆れた声で言った。



「そうでもないぞ。我は割と余裕で倒せる」

“我も昔は魔王と戦ったことがあるぞ。そこまで苦戦はしなかった印象だな”

「そ……そうか。なら俺もいけるか?」



 伝説の魔物2匹しか比較対象がいないため、段々と感覚が狂わされてきたエリクである。

 そんな話をしていると、奥の方にでかい洞窟の入り口が見えてきた。

 いかにもダンジョンといった風貌である。



「あれか」

「うむ。久々に腕がなる」

『トールとルーク。最初はエリクに戦いを教えるから、控えめにね』

「うむ、勿論だ」

“もとよりそのつもりだ”



 トールは地上に降り立つ。ルーク、エリク、レオンの順番でトールから降りた。

 エリクが中に入ろうとすると、「待てエリク」とトールが呼び止めた。



「ほれ」



 トールはエリクに魔法をかけた。



「結界魔法だ。並の魔物では通すまい」

「ありがとう!トール。助かる」



 エリクがそう言うと小さくなったトールと一緒に竜の杖片手に持って、仲良く入っていった。



--コソッ

『トールの言っている並の魔物って、ゴブリンとかオークとかは入ってないよね?』

“絶対そうであるな。多分魔王軍四天王とかのことであるな”



 後から一緒に入る2人の声はもちろんエリクには聞こえてない。

 この時点で、ダンジョンの魔物の攻撃はエリクには効かなくなっていた。




 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢




 エリクが入ると、そこは草原だった。



『国内のダンジョンは大体、草原から始まるんだよ。いきなり、過酷な環境だと、人間は生き残れないからね。レベルが上がるまでは、ここでしばらく頑張って』

「わかった」

“では、我は先に行っている。最終階層で待っておるぞ”

「へ?」



 言うや否や、目にも止まらぬ速さでルークは先に進んでいった。



「まったく。あやつは昔から変わっておらぬな」

『はは。本当だね』



 トールとレオンは慣れた様子で気にしていなかった。



「やっぱり、好奇心には勝てなかったか」



 エリクも、最初こそ驚いた様子を見せていたものの、対応力の速さを見せ冷静に今の行動理由を判断した。



「まあ、どうせ奴は最下層で昼寝でもしておる。我々はゆっくり行こう」

「わかった」



 ダンジョンの中だとは思えないほど呑気な会話で進んでいく。

 その様子はさしずめ、ダンジョン体験ツアーと言ったところだろうか。



「お、いたぞ、ゴブリンだ。いけるな?エリク」



 何も戦闘指導されていないのに、ゴブリンくらい倒して当然と言わんばかりの無茶振りである。トールにとってゴブリンは気づいたら踏み潰している虫と同じくらいの存在なので仕方がないのかもしれない。



「いけそうな気がする」



 まあそこでこのように、謎の自信を持っている発言をするのも、エリクという少年であるのだが。エリクが長剣の形をイメージすると、エリクのサイズに合わさった鉄の長剣に竜の杖は変化する。



『あ、忘れてた』

「(レオンがなにかを言っていたが、そんなことは関係ない。倒す……!!)はああっ……!!」



 グギャアアアアアアア……!!



 なかなか様になった様子で、ゴブリンの首を刎ねたエリクであった。ゴブリンがドロップ品のボロい短剣と魔石に変わる。

 ゴブリンのランクは最低のCマイナス。

 ランク相応だろう。

 Cマイナス、C、Cプラス、Bマイナス、……、Aとランクが上がって行きAプラスの次はS、その次の1番上のランクがSSである。



 これは、冒険者ギルドでも同様だ。

 ギルドでの扱いは、Cランクは見習い、Bランクで一般冒険者、Aランクで一流、S、SSは化け物である。



「よくやったな、エリク。なかなかだったぞ」

「ありがとう」



 褒められて、まんざらでもない顔をするエリク。



『ごめん、エリク。大事なこと忘れてた。竜の杖だけどね。自分の見たイメージの武器にしか変形できないから、ダンジョンに行く前に武器をたくさん見せとこうと思ってたんだ。

 私の持っている武器の方が今までエリクが見た武器よりも、いい武器が多いからね。それに、自分の戦い方に合った武器を選ぶことも大切だし』

「ああ。確かに。そうした方がよかったな。気づかなかった」

『今手元にあるのはそんなにないけど、一応見せるね』



 そう言ってレオンが亜空間から取り出したのは、明らかに只者ではない剣と槍だった。



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