第4話 ステータス
-side エリク-
「我の縄張りに入ってくるとはいい度胸だな。フォッフォッフォ」
銀色の鱗に漆黒の目。息を呑むほど美しいドラゴンはそう言う。
「お主、覚悟はできているのだろうな」
「いや……全く」
エリクは開き直った。ドスンッ。巨体を大きく動かし、一生懸命こけるふりをするドラゴン。あたりに突風が吹き、周囲の美しい花が吹き飛んだ。
「いや、戦うだろう?ここは戦うところだよな?我と戦うのではないのか?」
ドラゴンは押し強めに言う。今の押しの強さで周囲の木々が吹き飛んだ。
「ドラゴンに勝てるわけないだろう。てか、[鑑定]。お、お前すごい強いな!」
華麗にスルーし、鑑定するエリク。
安心と安定のスルー力である。
「ぬ……なに?お主、なかなか見る目があるではないか!もっと褒めてくれてもいいのだぞ!」
ドラゴンというのは、強さにもっとも価値を置く生物だ。
そして、この魔境にいる生物の大半が自分より強い生物を倒そうと切磋琢磨している。
よって、闘争心むき出しにされることはあっても、純粋な心で褒められるという事を少なくともここ千年くらいはされてこなかった。
ドラゴンにも承認欲求はある。
つまりこのドラゴン、約千年ぶりに承認欲求を満たされ感情を昂らせたのだった。
要するにチョロかった。
「ああ。流石はドラゴンだ。ここまで圧倒的なステータスとは」
「そうだろうそうだろう。我はドラゴンの中でも、エンシェントドラゴンの王族だ。すごく強いのだ」
すごくつよそうなどらごんのステータスはこうだった。
種族:エンシェントドラゴン
レベル:1700
魔力:15000/15000
体力:19000/19000
気力:10000/10000
[魔法属性]
転移・結界・回復・付与・身体強化
[スキル一覧]
賢眼、天候操作、飛行、スキル秘匿
[加護]
創造神 竜神
ここでステータスについての説明をしよう。成人一般男性の平均ステータスはこんな感じだ。
種族:人間
レベル:1がほとんど
魔力:30/30
体力:50/50
気力:20/20
[魔法属性]
人によるがない場合が多い。
[スキル一覧]
ない場合がほとんど。
[加護]
ない場合がほとんど。
この世界の一般の人間は魔物と戦ったことはないため、ほとんどの者がレベル1のままだ。ステータスは人間の場合、年齢と共に上がるのが一般的である。
ただし年齢はステータスには載らない。
レベルが上がるとステータスは大きく上がるが、年齢が上がってもステータスが大きく上がることはないからだ。
基本属性も載っていないのは、ほとんど全生物が使えるからである。
エリクのステータスはこうだ。
種族:人間
レベル:3
魔力:50/50
体力:30/30
気力:20/20
[魔法属性]
回復・身体強化
[スキル一覧]
鑑定・検索
[加護]
知識神
レベル3なのはエリクが8歳の時、公爵家の武術の訓練でゴブリンとスライムを倒したため、レベルが上がったからである。
異世界転生者ということもあり、エリクはエリクで[鑑定]や[検索]スキルと、回復魔法や身体強化の上級魔法を使えたりできる破格のステータスではある。
ただ、エンシェントドラゴンに比べると差は歴然だった。そもそもまず、基礎能力が違うことに加えて、スキル[賢眼]は[鑑定]の上位スキルで、生物の心や隠れた素質などをも読むことができるスキルだ。
スキルの上でもエンシェントドラゴンの方が上だと言えるだろう。
「(スキル秘匿があることから、まだ何か隠していると言ったところが妥当だろう。それ以外のステータスもとてつもない。流石は伝説の魔物だ)」
「そうだろう。そうだろう」
そして、心を読み取れるドラゴンはますますエリクの天然タラシっぷりにハマっていったのだった。
「(というか、天候操作のスキルって、データ不足って、まさかそういうことかよ。文明や文化、生物や食性も、そもそも一瞬で破壊できるからデータ不足にもなるか)」
エリクはさっきの検索結果をそのように結論づけることにした。
「ところでお主。こんなところに何をしにきたんだ?」
「ああ。ちょっとばかし観光にきたんだ。」
本当は違うのだが、エリクは嘘をついている様子はない。心からそう思っているためだ。
「ほー。嘘は言ってないようだな。[賢眼]にも引っかからないようだ」
本当は嘘なのだが、エリクが心からそう言っているので、[賢眼]スキルに反応しなかった。よって、ドラゴンは本気にした。
大事なことなので2回言わされました。
「よかろう。お主、なかなか面白いではないか!ふむ。我の背中に乗るがいい!住処に案内してやる!」
どうやら住処に案内してくれるようだ。
エリクはドラゴンの背中に乗る。なんの躊躇もなく乗れるのは流石の図太さである。
「うむ。捕まったな。行くぞ!」
ドラゴンは常人なら恐怖で気絶するくらいのスピードを出す。
これでも加減はしているが、スピード的には新幹線並のスピードである。
それを可能にしているのは、ドラゴンの器用な風魔法にある。風の抵抗を抑えて、出せるスピードと飛行の安全性を高めている。
「やっふー!楽しい〜!!」
常人には理解できない感覚ではあるが、流石の図太さである。いや、もはや図太いと呼べるレベルなのかはわからないが、エリクは楽しんでいた。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
しばらくすると山脈に着いた。そこには沢山のドラゴンがいた。色も様々。大きさも様々だ。遠くの方には屋敷も見える。
「さて、着いたぞ」
エリクを背に乗せたドラゴンはそういい、地上に降り立った。この時の落下速度は、バンジージャンプよりは少し遅いが、命綱がない分圧倒的に恐怖はこちらの方がはるかに上というレベルの速さだった。
しかし、エリクはなんとも思うことがなく、至って冷静にドラゴンの背に乗ったまま、旅を楽しんでいたのだった。
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