自殺しようとした俺は最後には善行、幼女を救った結果、大金持ちのペットになった件。
ういんぐ神風
第1話 自殺未遂
俺の名前は
「えーん、うぇーん。うわぁああああああ!」
俺は三つの大罪を犯して、死ななければならなかった。いや、もしかして死んでもその罪を償うことはできないかもしれない。それぐらい大罪をしてしまったのだ。
「うぇーん。うわぁああああああ!おねえちゃんんんんんんんん!」
最初の大罪は、俺は高校受験に落ちたこと。
俺は高校受験、東京美高等学園に失敗した。中学では10位以上の成績を3年間キープしていたのに、なぜか、この学校の受験に落ちた。理由に納得できない俺は東京美高等学園に問い合わせしてみたら、なんと、選択肢と回答が一問ずれていることに気づいた。
何という失態だ。頭に自信がある俺が、そんな失態するとは、思いも知らなかった。
「うぇーん。おねえちゃん!助けて!びえええええええ!」
二つ目の大罪は、俺は恋人を死なせてしまったことだ。
それは冬のある日だった。東京美高等学園を落選した俺は、彼女と別れた。俺が先に彼女の別れ話を繰り出した。なぜならば、彼女との約束、東京美高等学園に入学する、を守れなかった。
……だから、俺の方から彼女を振った。
彼女はそれに対して、反対し、後一年を待ってくれるから、一緒に学園生活を送ろうと懇願する。だけど、俺は自分に対してそれを許せなかった。だから、別れ際に彼女の幸福を祈って、俺は別れの話を持ってきた。
彼女は優しすぎて、俺には勿体無い。言い成れば、彼女は天使だった。そんな天使に悪魔な俺とは相応しくない。最初は彼女が嫌われるように、彼女を罵倒したり、悪い噂を放ったりしていた。
だが、彼女は一向に俺を振るそぶりを見せなかった。
だから、俺の方から振った。オープンカフェで彼女を振り、横断歩道を渡ったら、彼女は赤信号に気づかずに、俺を追うように、横断歩道を渡ってきた。
「うぇーん!助けてよ!わぁああああああ!」
そこが俺の二つ目の大罪。俺は彼女を殺した。
彼女が渡った瞬間に、大型トラックが彼女を轢き殺した。正確には赤信号で渡る彼女が悪い。が、それは俺を追うために渡って来た。
運動神経に疎くて、慈悲深い彼女は周囲を確認せずに渡って来た結果だ。
俺は彼女が飛ばされるのをこの肉眼で見た。見てしまった。彼女が車に轢かれて、空中に数メートル飛ばされて、床に叩きつけられる姿をこの両目で見てしまった。
彼女の死は俺の責任だ。
もしも、あの冬の日。俺が彼女を呼ばず、待ち合わせをせずに、電話で彼女と別れていれば、全部うまく行っていたはずだ。
……彼女はこんなバカけた死に方を導いたのは、俺だった。
「うぇーん。おねえちゃん!どこ!どこぉぉぉぉ!」
三つ目の大罪。俺は神を恨んだ。
罪は罪を呼び、連鎖するために、俺は……この聖書に載っている神を恨んだ。なぜならば、彼女を助けなかったから。
俺の彼女は、信仰深く、キリスト教だった。口癖は「神の御加護があらんことを」
と、いつも放っていた。慈愛深く、誰にでも優しい。神の教えを徹底的に実行し、キリスト教信者の鏡でもあった。
そんな彼女があっさりと、罪人の罪を肩代わりする彼女が、死ぬのは彼女の方ではなくて、俺の方なはずだ。
だから、俺は神を呪った。彼女が信じる神を恨んだ。神は越えられない試練しか与えない、のであれば、彼女の死は一体何なんだ?彼女は試練を越えられなかったのか?
そう思った俺は、神を殺したかった。
……哲学者カント曰く神は定義することができなくても、俺は神を殺しに行く。
だから、死んで、彼女を追って、神を殺す。
……神は死んだのだ。
俺はロープの輪を作り紐で首を吊ろうと、森中に一人でやって来た。奥の方までやってきて、一番高い木を選び、輪を作った。
桜の樹だ。周囲は草原しかなく、一本だけ凛々しく立っている桜の樹だ。
この木、自分が死ぬ場所だ。満開の桜の下で死ぬのも、悪くない。
3月下旬という季節の中で死ぬのは、気持ちよく死ねるはずだ。
さて、桜の樹を選んだのはいいのだか、そこに登っていくためにはどうすればいいのか、困ったものだ。小さな木で段を作れないか、試してみる。
あ、届いた。これなら簡単に首を吊れる。
少し背伸びすれば輪に届く高さ。自殺には理想的なところだ。
芸術性がない自殺だが、シンプルで十分。俺の死が誰にも見つからないことを祈るよ。
この吉田健次はここで命を落とし、罪を償う。
すまん、妹よ。この愚兄を許してくれ。筆しか取り柄がない。芸術を描くことしかできないバカ兄だった。
生命保険に入っているから、俺が死んだら、大金が妹に入ってくる。
それで美味いものを食って、大きくなれよ。宮子。
「お姉ちゃん!どこ!助けて!うぇいいいいい!」
「人が自殺しようとしているのに!何んでここに幼女がいるんだよおおおおおお!」
「ぴぇええええええん!」
俺が自殺しようとした時に、幼女がずっとこの辺で号泣していた。
保護者もいない、たった一人で彼女はここに立っていた。
どうやら、迷子らしい。この大きな森で迷子になるとは、運がついていない子だ。
そんな後味が悪い自殺にしたくなかったため、俺は一旦桜の樹から降りて、彼女の方へと向かう。
……やれやれ、ガキは嫌いだ。
「おーい。お嬢ちゃん、さっきから泣いているけど、どうしたの?迷子か?」
幼女はシクシクと泣きながら、顔を俯いていた。
赤のスカートに白いブラウズ。麗らかな春にはぴったりな服装。黒い髪は肩まである、ミディアムヘアだった。泣き止む気配はなく、彼女は延々と泣いていた。
そんな悲しさを拭うために、俺は彼女の頭にそっと手を置いた。
「ゴホン。泣くと、幸せが逃げてしまうぞ。お嬢ちゃん。一体どうしたのか?言ってごらん」
「……しく、お姉ちゃんとはぐれて。迷って、くす」
「泣くな。女の子は泣かない。泣くのはお父さんの胸の中か、トイレで泣きなさい」
……ソースはとあるハマったアニメだ。
俺がそういうと、彼女は必死に涙を止めて、顔を上げる。蒼穹より青い瞳は涙いっぱいだった。鼻水をずるずるとしてから、口を開く。
「かくれんぼ……してたら、お姉ちゃんがいなくなった。シクシク」
「なるほど、森でかくれんぼか……奥まで来てしまったと……なるほど。これは疲れるな」
俺はそういうと、スマホを取り出して操作する。
本来、自殺するためには身につける必要はないものだけど、死ぬ場所を求めているため、G P S機能を利用して森奥までやって来た。
……まさか、こんな場面で役に立つとは思っていなかった。
そのままG P S機能を起動させる。自分が立っている位置を確認する。
ここは森奥、どう見ても、何もない場所なはず……ん?
「ん?こんなところに、施設がある?」
「お姉ちゃんの家だ……シクシク」
「え?家って……」
俺は言葉を失った。
なぜならば、彼女が言う家はとても、俺が知っている家とは程遠い。どちらかといえば大きな家、 言い換えれば、屋敷のようであった。
そこが彼女の家であれば、そこに行けば、自然に彼女の姉に出会える。
「しゃない、ここを目指すか」
俺は立ち上がり、ぶら下がっているロープを解ける。
自殺するのは、この幼女をあの家に届けた後からでもいい。問題はこの子が泣いている。人が泣いている前で自殺するのは、後味が悪い。
彼女の涙を今でも拭いたい。彼女の悲しみを払拭したい。
だから、彼女を救う……。
荷物を片付けた俺は、幼女の方に顔を向けて、手を差し伸べる。
「おい。お嬢さん」
「ひくひく、ひい……はい」
「俺にお前を助けさせてくれ。お前を姉に合わせさせてくれ」
そう言うと、幼女は目を大きく見開く。
さっきまで泣いていた幼女は泣き止み、俺を凝視する。
その黒い瞳の中につまらない顔をしている少年が映る。
……そんなに死んでいた顔をしていたのか、俺。
けれど、彼女を救いたい気持ちは嘘ではない。死ぬ前に一度はいいことをするのも、悪くない。と、俺はぎこちない笑みで彼女を安心させる。
やがて、彼女は差し伸べた手に握る。
そして、口が開いた。
「……よろしくお願いします」
「ああ。こちらこそ、宜しく」
俺は彼女の手を取り、この場所から離れていく。目的地はさっきG P Sで記載していた、屋敷の方へと向かう。
一歩一歩、彼女が歩けるように、わざと遅く歩く。
彼女は泣き止み、俺の手をしっかりとつかまて、隣に歩いた。
「お兄ちゃん、そこで何をしてたの?」
「ん?ああ、背伸びの運動をしてたんだ。背筋を数センチ伸びる運動。ロープで輪を作って、木に引っ掛ける。そこから頭を入れると、ほら、数センチ背が伸びるのさ」
「すごーい。わたしも背筋を伸ばしたい」
「あはは、これはね。大人しかできない運動なんだ。お嬢さんにはできない運動だね」
そんなこと談話しながら、二人でこの森を抜ける。
目標は、あのドでかい屋敷に俺たちは向かった。
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