ヴァラール魔法学院お正月スペシャル〜問題用務員、金盥強襲事件及び学院長室爆破事件〜

 ユフィーリア:あけましておめでとう


 エドワード:もう朝?


 ユフィーリア:このねぼすけ野郎が


 ユフィーリア:とっくの昔に年は明けてんだよ


 ユフィーリア:今何時だと思ってやがる


 エドワード:魔フォーンに表示されてるよ


 ハルア:うるさい


 ハルア:ねらんない


 アイゼルネ:まだ寝たいわ


 アイゼルネ:お布団が温かいのが悪いのよ


 ハルア:それな


 ハルア:おれねるからおこさないでね


 ショウ:あの


 ショウ:何でみんなして魔フォーンのメッセージ機能で会話してるんですか?


 ショウ:同じ寝室にいるのに


 ユフィーリア:寒い


 エドワード:寒い


 ハルア:さむい


 アイゼルネ:寒い


 ショウ:そうですか


 ショウ:確かに布団から出たくない気持ちは分かるが


 ユフィーリア:正月ぐらい遅く起きてもバチは当たらねえだろ


 ユフィーリア:あ、今日の昼飯はなかなか豪華にした


 ユフィーリア:親父さんに教わってお雑煮ってのも作ってみた


 ショウ:ユフィーリアのお雑煮!


 ショウ:楽しみだ


 ショウ:元の世界では煙草が浮いているお雑煮しか食べたことない


 ユフィーリア:食うなよ、そんなの


 ショウ:1年に1度だけのご馳走だから


 ユフィーリア:たくさん食べて大きくなれよ


 エドワード:今年のショウちゃんの目標は体重を標準に戻すに決定だね


 ハルア:たくさんたべようね


 アイゼルネ:おねーさんも協力するわね


 ショウ:俺はこの世界に来て幸せだぁ


 ユフィーリア:それじゃあそろそろ始めるか


 エドワード:今年もやるの?


 ユフィーリア:やるよ


 ユフィーリア:特に画面の向こうの読者様にはいつもいつも感謝してるからな


 ユフィーリア:それじゃ



『ユフィーリアがグローリア、スカイ、ルージュ、キクガ、八雲夕凪、リリアンティアを招待しました』



 ユフィーリア:新春恒例、笑ってはいけない七魔法王セブンズ・マギアス及び問題児!


 ユフィーリア:大喜利大会、開幕!


 エドワード:いえーい


 ハルア:いえーい


 アイゼルネ:いえーい


 ショウ:いえーい?


 グローリア:巻き込まれた!!


 スカイ:正月ぐらいは休むかなって思ってたのが馬鹿みたいッスね


 ルージュ:正月ぐらい問題行動は控えてほしいですの


 キクガ:今年のお題が楽しみな訳だが


 八雲夕凪:第四席の表情筋は鉄壁だから『楽しみだ』なんて言えるのじゃ


 リリアンティア:第二席、よく全員分の魔フォーンを用意しましたね


 スカイ:年末には間に合ったッス


 グローリア:今年こそは大人しくしててよ


 ユフィーリア:大人しくしてるだろ


 ユフィーリア:現に今は用務員室のベッドからお送りしております


 ユフィーリア:エド、新参者の為にルールの説明を


 エドワード:ガッテンだ


 エドワード:笑ってはいけない大喜利大会は、その名の通りお題に沿った大喜利に答えていく大会だよ


 エドワード:特殊なことと言えば絶対に笑っちゃいけないことだね


 エドワード:笑ったら痛いお仕置きが待ってるよ


 ショウ:痛いお仕置き?


 エドワード:去年は電流だったよ


 ハルア:しばらくたてなかった


 アイゼルネ:割とゲラなのは副学院長とルージュ先生なのよね


 ユフィーリア:ハルも割と被害を受けてたからな


 ショウ:心配だな


 ショウ:笑うなんて判断が部屋でいながら出来るのか?


 ユフィーリア:事前に呪いをかけておいたから大丈夫だ


 ユフィーリア:ここにいる全員


 グローリア:今年は何をするつもりなのさ


 ユフィーリア:金盥かなだらいが落ちてきます


 ユフィーリア:笑った途端に頭から降ってくるぞ


 スカイ:やなやつ


 ルージュ:何でそんな手の込んだ呪いをかけられるんですの


 ユフィーリア:天才なもんで


 ハルア:かなだらいがたまってくのかぁ


 ユフィーリア:はい今年のお題はこちら、どん


 エドワード:口で効果音を済ませるんじゃないよ


 ユフィーリア:口以外でどう言えと


 八雲夕凪:いいからお題は


 ユフィーリア:お題は『こんなヴァラール魔法学院は嫌だ』で


 ハルア:はい


 ユフィーリア:珍しいな、ハル


 ハル:がくいんちょがしろぬりのがんめんでじゅぎょう


 ショウ:バ◯殿?


 グローリア:何でさ!?


 スカイ:いってえ!


 ルージュ:金盥が落ちてきたんですの!!


 ルージュ:痛いんですの!!


 ユフィーリア:スカイとルージュんとこに落ちたか


 エドワード:何を想像したんだろうねぇ


 キクガ:ざまあ


 ルージュ:覚えてらっしゃい


 リリアンティア:おそらく問題児の漫才に笑う人が続出するんでしょうね


 リリアンティア:お怪我をなさった人はぜひ保健室まで


 リリアンティア:身共が治療いたします


 八雲夕凪:優しいのう


 八雲夕凪:儂を優しく治療してくれたらいいのぅ


 キクガ:はい


 ユフィーリア:あれ、親父さん


 ユフィーリア:何だ?


 キクガ:そこの白いハクビシンが購買部のバイトになったのちクビ


 八雲夕凪:何でじゃあ!!


 キクガ:奥方に三行半を突きつけられるでもいいのだが


 八雲夕凪:その辺りの問題はシビアだからやめておくれ!!


 ユフィーリア:笑えねえよぉ


 エドワード:まだ続いてるんだね


 ハルア:おくさんもとっととわかれればいいのに


 アイゼルネ:その方が賢明よね


 ショウ:生きている価値すらないですね


 八雲夕凪:揃いも揃って何なのじゃ


 八雲夕凪:樟葉くずのはと儂はらぶらぶなのじゃ


 リリアンティア:疑いますね


 ルージュ:はいですの


 ユフィーリア:はい、ルージュ


 ルージュ:アイゼルネさんの南瓜のハリボテが紙袋に変更


 アイゼルネ:エクスタシィいいいいいいいーッ!!


 ユフィーリア:いったい!!


 エドワード:金盥が落ちてきたんだけど!?


 ハルア:ぐえ


 ショウ::いたい


 キクガ:金盥とは本当に落ちてくるものなのだな……


 グローリア:完全にアイゼルネちゃんが持って行ったじゃないか痛い


 スカイ:ボク2個目なんすけど痛い


 リリアンティア:身共にも金盥が


 アイゼルネ:奪っちゃった


 ルージュ:畜生ですの


 アイゼルネ:ユーリ、いいかしら


 ユフィーリア:はい、アイゼどうぞ


 アイゼルネ:リリアちゃんの治療方式が鞭


 リリアンティア:最近、鞭による治療方法も学びました


 リリアンティア:実践しますか?


 リリアンティア:誰か骨を折ってきてください


 キクガ:一気に怖くなった


 キクガ:八雲夕凪、出番だぞ


 ユフィーリア:ちょうどいいのがいたな


 八雲夕凪:嫌なのじゃ、嫌なのじゃ!!


 八雲夕凪:何で正月早々に骨を折らなきゃいけないのじゃ!!


 ユフィーリア:どうせ治るんだからいいだろ


 グローリア:治るんだったら安いものだよね


 グローリア:この前、僕の教科書を売ったの君でしょ


 ハルア:それゆーりだよ


 ショウ:廊下に落ちてたので


 ショウ:売ったけど大したお金にならなかったです


 グローリア:何してくれてんだテメェ


 ユフィーリア:落とす方が悪いんだろ


 キクガ:こんなヴァラール魔法学院は嫌だのお題だが


 キクガ:世紀末ヴァラール魔法学院はどうだろうか


 キクガ:みんなムキムキで傷だらけで堀が深い顔で血みどろの争いが繰り広げられる


 キクガ:作風が変わるな


 リリアンティア:問題児の皆様は見応えがありそうですね


 エドワード:どういうことなの


 ハルア:ひどいよちゃんりりせんせ


 ハルア:たらいがふってきたよ


 ショウ:俺のところにも降ってきた


 ショウ:たらいにつぶされる


 ショウ:ユフィーリアさようなら


 ユフィーリア:ショウ坊、ぎゅーしてやるから


 ユフィーリア:生きな


 ショウ:生きる


 ショウ:新年早々にユフィーリアのぎゅーが貰えるなんて


 ショウ:お年玉か


 キクガ:そういえばお年玉を届けに行こうと思うのだが


 キクガ:ショウとハルア君は双方共に1万ルイゼでよかったかね?


 ショウ:お年玉初めてだ


 ハルア:おかねもらえるの


 ハルア:すげえね、おとしだま


 ユフィーリア:何かめたくそぐだぐだになったから


 ユフィーリア:しめるか


 エドワード:え?


 ハルア:え?


 アイゼルネ:しめる?


 ショウ:ユフィーリア?


 ユフィーリア:これで大喜利大会終わり、またらーいねーん



 ――――どごんッ!!



 ☆



 遠くで爆発音が聞こえてきた。


 大地を揺るがす轟音と、それなりの震動が伝わってくる。

 どこかで爆発が起きたのだろう。正月にかこつけて騒ぎたい連中が、どこかに爆弾でも仕掛けたのだ。


 当然ながらそれは問題児である。



「お、爆発したな」



 頭まですっぽりと布団を被っていたユフィーリアは、いそいそと這い出てくる。寝癖がやや目立つ銀髪を手櫛で整え、大きく伸びをした。

 寝室の窓から差し込む朝日が気持ちいい。最高の新年だ。


 欠伸をするユフィーリアは、



「お前ら、起きろ」


「ううー、寒いよぉ」



 閉じ切っていたカーテンを開き、エドワードが眠たげに瞳を擦りながら顔を見せる。遅れてハルアも「おはようございます!!」と元気にご挨拶しながらベッドから飛び出してきた。

 アイゼルネもショウも、今まで起きていたのだろう。ユフィーリアの呼びかけにすぐさま応じてベッドから飛び出してくる。「おはよう、ユーリ♪」「おはよう、ユフィーリア」などと可愛らしくご挨拶。


 全員揃って爆発音を聞いていたようで、



「今の爆発音は何ぃ?」


「学院長室に爆破魔法を仕掛けておいた」



 ユフィーリアは清々しいほど綺麗な笑顔を浮かべると、



「新年には花火が必要かなって」


「汚い花火だね!!」


「さすが問題児としての新年だな」



 ハルアとショウも互いに顔を見合わせて、悪戯めいた笑みを見せる。問題児としての新年は、やはりこうでなければ。


 さて、新年の挨拶がまだだった。

 新たな年を迎えるには、やはりこの言葉が1番適している。



「あけましておめでとう」


「今年もよろしくねぇ」


「よろしくお願いします!!」


「よろしくネ♪」


「ああ、今年もよろしくお願いします」



 朗らかに新年の挨拶を交わすと同時に、晴れ渡った空に絶叫が轟いた。



「ユフィーリア、君って魔女は!!」

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