第3話
並列して光る海月達に沿って上に泳ぎ進めるロプト。
泳いでると、潜水服のヘルメットのガラスに小さなヒビが入る。
ヒビを見て、ロプトは苦い顔をする。
「うげぇ、早くもガタがきてやがる。この後“サードホイール”とやり合うのに·····急ぐぞ」
愚痴をこぼし、ロプトは泳ぐスピードを上げる。
パラディソスから百メートルほど泳ぐと、宇宙にいるか如く静かな海の中で突如金属を切るときに出る音のようなに耳を塞ぎたくなる甲高い声が鳴り響く。
「お出ましだ」
ロプトは泳ぎをやめ、その場で立ち泳ぎをする。
「どこだ? 今度こそてめぇの妨害を掻い潜ってやる、サードホイールさんよ」
辺りを見渡すが、海月達の輝きがあるものも目の前全て漆黒の闇である。
だが不意に、暗い中でも薄っすら分かる天使の羽のような純白の巨大な”壁”が目の前に現れる。
音もなく接近され、驚くロプト。
「相変わらず、忍ぶのが好きだな」
巨大の”壁”と思われたものが、瞼が開き、ロプトをじっと見つめる。
ロプトはその”壁”に指を指し、高らかに宣言する。
「今日こそ、お前の顔を拝むのは終わりだな、ははは」
ロプトは”壁”を避け、上へ泳ぎだす。
ロプトが泳ぎだすと、”壁”は動き出す。
「ちっ、大人しくしてろ」
ロプトは”壁”が動き出しても、無視して、上へ泳ぎ続ける。
”壁”は泳いでいるロプトの隣に移動し、整然と並んで動いている。
「お前は俺なんか構ってないで、パラディソスの周りをぐるぐる泳いでいるほうがお似合いだ」
ロプトの言葉が通じたのか、”壁”はロプトから離れ、暗い海に消える。
「ふん、始めっからそうすればいいだ」
ロプトは安堵して、泳ぎ続けるが、またしても目の前に”壁”が現れる。
ロプトは”壁”に衝突しそうになるが、辛うじて手前で止まる。
「あーもう、何をそんなに上に行くのを拒むんだ、お前は」
ロプトが苛立っていると、”壁”が扉らしきものが上下に開く。
「やべぇ」
ロプトは慌てて、横へ泳ぎ逃げる。
扉の奥から、巨大な泡のリングが何本も発射される。
ロプトは間一髪そのリングを避ける。
「何十回お前と対峙していると思ってる。もうお前のパターンは知り尽くしているわ」
ロプトは横へ逃げ、安心していると、”壁”は横回転し、ロプトに向かって海流が迫ってくる。
ロプトは避けきれず、海流に飲まれる。
「クソッ、そのパターンは初めてだ」
ロプトは”壁”が起こした海流に飲まれ、パラディソスへ飛んでいく。
ロプトが飛んでく中で、”壁”を睨みつける。
「クジラなんかに遅れを取るか、次こそはお前を超えていく」
海月達の輝きが”壁”の全貌を瞬間的に照らし出す。
それは巨大な白いクジラの姿である。
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