ちょっぴりの奇跡

街の中で

ふと見かけた見知らぬ人の笑顔

見た瞬間胸に

懐かしさが溢れて涙ぐみそうになった

もうずっと思い出せなかった笑顔が

記憶の中から引っ張り出されて

鮮やかに甦ってくる

あんな風に笑う人

たった一人いたよねと

思いがけない形でその笑顔を思い出した


見知らぬ人はやっぱり見知らぬ人で

似ていると思いながら

その場所を離れたけれど

ふと見かけた笑顔が

恋に一生懸命だったあの頃の私と

あの人の顔を映し出すなんて

何だかちょっぴり奇跡にも思えてくる

現在のあの人は

長い月日が過ぎて

あんなに若いはずはないのに

あんな風に笑うのを覚えていたことも

自分の中で戸惑ってしまった


思い出が甦るきっかけなんて

誰にもわからない

恋が終わって十年二十年

どんなに月日が過ぎて忘れてしまっても

顔すら思い出せないよと思い込んでも

ちょっぴりの奇跡が

きっとまたいつか


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