アフターダーク

アオヤ

Macintosh

「パパこれ何?」


俺と娘の紗名は裏の倉庫でチョコレートの型を探している。


そんな時に娘の目に留まったのは1993年のゴールデンウィークに俺が買ったMacのカラークラシックだった。

10インチのブラウン管ディスプレイ一体型パソコンのそれは当時の思い出が詰まったタイムカプセルみたいに俺には思えた。


「あぁ それは30年近く前のパソコンだよ。動くかどうか分からないけどな・・・」


「ねぇ 出して動かしてみようよ!」


30年前の骨董品の家電なんてどうせ動きやしないだろう!

そう思いながらリビングで繋いでコンセントを挿して電源ボタンを押してみた。

“カァ~ン”

懐かしい起動音が響き渡る。

起動画面の"Welcome to Macintosh"が表示されると懐かしさにシビレた。

起動には時間がかかったがなんとか完了できた。


「コレ?何が出来るの?」

紗名は物珍しそうに10インチの小さな画面を覗き込んだ。


俺はディスクトップ(ホーム画面)に"交換日記"というホルダーが有るのを思い出して、どうにかそれには触れられない様に誤魔化そうとした。


「古いパソコンだからワープロや表計算くらいしか出来ないぞ。」


「ねぇ ゲームとか何が出来るの?」


「ゲームか? テトリスやゴルフゲームならあるけど、スマホでも出来るだろ?」


そんな会話しているうちに画面が一瞬暗くなったと思ったら・・・

画面焼け防止のスクリーンセーバーAfter darkが立ち上がった。

それはフライングトースターと呼ばれてるもので、羽根の生えたポップアップトースターが画面狭しと飛び回るものだ。


「何これ、変なの? でも面白〜い。」


紗名がマウスに触れた瞬間アイコンが並ぶホーム画面に切り替わった。


「あっ? "交換日記"ってあるのは・・・ 何なの?」

紗名はすかさず聞いてきた。


「それ見つけちゃたか? 話しがながくなると思うけど・・・ いいの?」


「ウン 面白そうだからいいよ~。」

紗名はいつもになく悪戯っぽい目をしていた。

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