『キャラクターメイキング&肉体調査』
イレベレムのカロラインの
目元以外の顔全体を隠す限界まで口を開けた顔が描かれたフルフェイスマスクに、金髪の髪の毛、白い頭部以外の全身タイツを来た上に白い燕尾服を着こんでいる。
120センチほどの身長に似つかわしくないその服装だが、纏う
腰のベルトに着いた銀のチェーンには
ウー?と首を傾げると腰まで垂れた金髪が揺れた。
「(やっべ、事前公開してある情報と若干ちげえや…)」
本来であればショートカットにした髪の毛をワックスでオールバックにして男装の麗人的な雰囲気を出すつもりだったが、事故と入院、精神の半崩壊が原因で外見的に女性よりとなってしまった。
「(会長のコンセプト「懐古」に外れるけど…)」
カロラインの視界の端にあるメッセージチャットにはマッドの視界共有から見た全体像をさくが高評価して、文章にまとまっていないメッセージが通知音がうるさいくらい投稿されていた。
ほとんどが「やばい」や、「かっこかわいい」で埋め尽くされ、自分の発言が上に消えていったチャットを横目に見ながらまあ、会長がいいならいっか、と姿見を消した。
「うー?」
「さて、キャラメイクはこれくらいにして、肉体調査に行きましょう。」
フレンド登録したことでマッドとパーティーを組んだ状態のカロラインはフリーモードの自分のマップにマッドを招待した。
フォンフォン…と、青い光が体にまとわりつき、二人をデータ化させていく。
ひときわ大きく輝き、ピョフン!という効果音とともに、2人がカロラインのフリーモードワールドの初期リスポーンポイントにテレポートした。
10センチほどの草が所々に生える荒野にテレポートしたカロラインはマッドに待つように言ってからフリーモード中に自動装着される
「こんなもんかな…マッドさん、できましたよ」
「~♪ ん?なに?なっなに?に?えへへ…」
「これから、マッドさんにはこの土のアスレチックでちょっと運動してもらいます。私が先行しますので、ついてきてください。」
「わった!わかか!えへへへ!」
ピン!と手を上げて理解したことを示すマッドに子供を見るような微笑ましい目をするカロライン。
凹凸をはしったり、坂でスライディングをしたり、壁を登ったり、壁のぼりの途中で壁を蹴ったり、いろいろな運動をしてみる。
カロラインは数分前の子供を見る目から、分析するような目に変えてマッドの動きを見ていた。
今マッドはカロラインの後をついていくのをやめ、新たに作られた5メートルほどの壁をフリークライミングよろしくスイスイ上っていた。
「(考えていたよりも天才的に動けるね…会長から聞いていた運動神経とはまるで真逆…これも、事故のせいなのか?)」
会長からのメッセージではマッドを褒める内容しかすでに投稿されなくなった。
カロラインは会長が使い物にならないとして、自分だけで考察する。
「(…精神的なリミッターも、事故で壊れた?だとすると辻褄が合うし…まあ、それはどうでもいっか。全モードで十分、活躍できそうだ。)」
メイキングアタッチメントで土を操作できることに気が付いたのか、50センチほどの土の塊をインベントリから出し入れしているマッドに待ったをかけて、フリーモードワールドから出る。
カロラインの部屋に出た二人は、カロライン先導の下、バトルモード(ダブルス)を始めた。
バトルモードでは、人の住んでいない家や施設が置かれたイレベレムの荒野に武器を内包したパッケージが投下されている。
その落ちている武器を取り、チームで戦う。
ダブルスは二人組で行うチーム戦で、最後の一チームになると優勝となり、ランダムアクセサリーパックが一人一つ貰える。
もちろん、バトルモード全体の順位とプレイヤーを倒した数、プレイヤーに与えたダメージの合計でアクセサリーポイントがもらえ、それをアクセサリーと交換することもできる。
数秒のカウントダウンの後、上空を飛ぶ飛行機の底面についている床にテレポートした。
3,2,1とカウントダウンの後にGO!という文字が数秒おきに強調され、次々とプレイヤーたちが下りていく。
「バトルモードでは、こんな感じで、最初は飛行船から降りて下にある武器を取り、敵を倒す。そんな感じですね。」
バサバサと衣服が風に揺られ、ごうごうと風の音が響く中、カロラインがマッドに大声で説明する。
対するマッドはう!と、風の音がうるさいのか、耳をふさぎながらうつむいていた。
「ちょ、マッドさん、下りないと落されま――」
もうおそいよん。
降下制限時間に到達し、飛行艇に残っていたプレイヤー全員が強制ジャンプさせられる。
飛行船から離れたおかげか、風の音が弱くなり、マッドは耳から手を外した。
「ポイントマーク!」
カロラインの指さした先に赤いマークが示される。
ポピン!という音とともにできたそれをマッドはう?と、空中で首を傾げ、そちらに向かって飛び出した。
ヒュゥゥゥゥウと、軽く風を切る音と風に持ち上げられる感覚にマッドは目を細めながら喜ぶ。
対するカロラインは
「(速!お、追いつけない!)」
テストプレイで数時間以上フルダイブしている彼女ですら追いつけない速度で飛ぶマッドに何とかついて行こうと体を伸ばす。
高度が一定以下になったため、パラシュートが自動で開き、落下速度を緩和した。
が、
「うううううう!!!!」
背中に着いたパラシュートをブチッとちぎり、再び加速するマッド。
「まずい!マッドさん!」
バトルモードでは落下ダメージはない。
ないが、ダメージがないだけで、落下した感覚も、手足のしびれも存在する。
最悪、落下したという
まあ、カロラインからすればそれでも全然いい。
いいが、今の危ない精神状態なマッドがメンタルダメージでアセンドすれば…
最悪の事態を考えてカロラインはマッドを追いかける。
が、パラシュート開放地点に入り、強制的にパラシュートが開く。
速度がついていたため、グイッと両腕とお腹を上に引っ張られ、グエエ!と女性らしからぬ声を出し、マッドが落ちていくのを焦る頭で見る。
やばいやばい!とマッドと同じようにパラシュートをちぎろうとするが、
「うえ!?硬った!」
ビン!と繊維が衝撃を吸収し、手が痛くなるカロライン。
全ての物質の耐久値は同じなので、マッドのあのか細いペットボトルと同じくらいの太さの手で引きちぎったパラシュートとカロラインの引き締まった細マッチョレベルの手の力をさも当然かのように吸収したパラシュートの柔軟さは変わらない。
最高速度のままカロラインの目線の先で地面に突撃したマッドは砂煙を巻き上げながらゴロゴロと転がっていった。
万事休すと思ったカロラインだったが、マッドは止まった場所でむくりと立ち上がるとキョロキョロと周りを見回した後、カロラインの付けたマークにむかって走っていった。
これにはカロラインもさくも、さくの後ろから見ていたスタッフも( ゚д゚)と間抜け顔をしていた。
銃声で即座に顔を引き締めるカロライン。
マッドを見れば先に降りていた他チームから撃たれていた。
数秒かけてでやっと降りたカロラインはマッドの方に走る。
マッドに追いついたカロラインが最初に見た光景は二人に集中砲火されるマッドだった。
なぜか立ち止まったマッドが一番ダメージの少ないハンドガンで全身を撃ち抜かれている。
「マッドさん!」
思わず叫んだカロラインに向き直った敵チーム。
銃撃が止んだことでマッドのHPは残り数ミリで残る。
やばい!と、カロラインは少し後ろに下がり、現在地点の確認をする。
近くの降下物資!と、見ている中、後ろから再び銃声。
やられた!?と、視点端のパーティーメンバーHPバーを見て目を疑う。
一桁だと思われていたマッドのHPバーが全回復していた。
バトルモードでHPを回復する方法は3つ。
戦時蘇生によるHP0からの30%回復と、回復アイテムによる25%or100%回復。
そして最後は…
「ジャッジメント!?」
敵のHPをワンカウントダメージ3未満もしくは0.3秒間に10以下のHPを減らす攻撃(大体が近接攻撃)を5連撃or1秒以上することで
「相手のHP、MAXだったのに!?」
カロラインは隠れていた場所から顔だけを出して戦場を見る。
マッドは残った一人のプレイヤーにガンガン撃たれているが、それを無視し、小柄な体のどこからその力が出るのか、ギリギリ目で追える速度で駆け出すと敵プレイヤーの両肩を掴み、顔を首元に押し付ける。
キスマークをつけるように押し付けられた顔、くっついた首からは出血のように赤いダメージエフェクトがあふれ、敵プレイヤーが所有物を撒き散らしながら消えていった。
「!な、なるほど。」
アクセサリーで口は露出していないとはいえ、
結果から言えば噛まれたら最後、削ったHPを全回復されるジャッジメント判定を受けた上に急所切断による
手制御によるメニューからマッドの
総合ポイントを見ると
カロラインはメニューを消し、急いでマッドに近寄ると腰についているエネルギーコアを抜き取り、自分のコアと付け替える。
視点端のHPバーの上の黒いバーの1/4が白色で埋まったのを見た後、腰のポーチからエネルギーポッドを出し、コアに接続し回復しだす。
じりじりと自分のHPバーの上のエネルギーアーマーバーが白く回復していくのを見てエネルギー充電による移動速度低下を受けながらゆっくりと近くの落ちている敵の使っていたハンドガンを取る。
「マッドさんのお陰で最初から武器が手に入りましたよ、これがバトルモードで使用できる銃の一つです。」
う?と首を傾げるマッドの手にハンドガンを握らせ、自分はもう一つのハンドガンを持つ。
視点をハンドガンに合わせることで現在入っている弾数/最大弾数が表示される。
今見えているのは0/12だ。
カロラインは銃と一緒に落とされたハンドガン弾を手に取るとポーチに自動追加されたハンドガンのマガジンを取り出し慣れた手つきでハンドガンから空のマガジンを落とし、リロードする。
12/12となった表示を見た後、ふとマッドを見るとハンドガンを振りかぶって思いっきり投げていた。
「ちょ、えええええええええええ!?!?!!?」
そのまま走り出すマッドを一瞬遅れて追いかけるカロライン。
進行方向を見るとアサルトライフルを構えた敵プレイヤーが一人いた。
やばいと左右に体を揺らしながらマッドについていくカロライン。
対してマッドは真っ直ぐ敵プレイヤーに向かっていた。
閃光が眼前ではじけるとともに鉛玉が二人に襲いかかる。
カロラインは真横を通った弾丸への本能的な恐怖を押し込めながらマッドの後を追う。
マッドは数発被弾しながらもアーマーを削りきられる前に敵プレイヤーにたどり着き、先ほどと同じように
ジャッジメントはHP回復だけでなく、HPが100%でアーマーを着ていてかつアーマーが削れている場合はアーマー回復が起こる。
マッドが与えたダメージが250を超え攻撃による外部エネルギーが吸収できたことでエネルギーアーマーがパワーレベル2になり、最大アーマー値50になる。
マッドはアーマーバーが2倍の長さになり、半分(増えた分)が空白になっていることを視界の端で見ると、さっきカロラインがしていたアーマー回復を見よう見まねで真似ようとポーチからエネルギーポッドを取り出し、コアにくっつける。
手足のしびれる感覚が始まり、アーマーバーが50、つまりは全体の半分まで徐々に回復していく。
レベル2アーマーの色は緑だ。
「うう…」
回復によるしびれの気持ち悪さに顔をゆがめるマッド。
そのマッドの横からマッドが今さっきジャッジメントしたチームメンバーがスナイパーをマッドの頭に打ち込んだ。
一撃でアーマーとHPが0になり、ダウン状態に陥るマッド。
ダウン状態とは両手足に感覚が消えるほどのしびれが発生し、時間とダメージにより出血カウントダウンが進み、それが0になるとバナーカード化する状態だ。
マッドにダメージを入れられ、出血カウントを進めさせまいと急いで敵プレイヤーにハンドガンを構えるカロライン。
しかし、敵プレイヤーとカロラインが撃つ前に戦線に横から小さな影が飛び込んだ。
ダウン状態のはずのマッドが敵プレイヤーに飛びつき、首を噛む。
ダウン状態にしたことを目とログで見て横からの攻撃はないと油断していた敵プレイヤーは、うおああああ!?と、叫び声をあげながら
アナウンスでマッドが
この状態で出血カウントダウンが0になるとどうなるのか気になるが、それは運営として別個で試すとして、カロラインはマッドに蘇生装置を使用した。
このゲームでダウン状態の蘇生は何度でも可能で、背面のベルトに付けられた無針注射器を3秒ほどダウン状態の仲間に使用することでダウン状態が解除され、HPが30%回復する。
ちなみに、HPが削れているとき、脳にダメージペインとして痛みが情報化されて発信される。
鉛玉で撃たれれば焼けるような痛み。
エネルギー弾で撃たれれば体表面が焼けこげるような痛み。
矢であれば肉が裂ける痛み。
爆弾であれば熱と肉に破片が食い込む痛みが発信されている。
そして、マッドのログはPassDamage:400、GiveDamage:297、kill:4となっていた。
単純計算、約3回分の死ぬ痛みが…アーマーを引いても200以上は確実なので、2回死ぬレベルの痛みを受けているのにも関わらず蘇生したマッドはエネルギーポッドをコアに繋げ、しびれる感覚に顔を歪ませていた。
先程の戦闘などなかったかのようにだ。
もうすでにカロラインはフリーワールドでの子を見るような微笑ましい目はしていない。
理解のできない者を見る目をむけながら、与えられた仕事と割り切り、マッドにバトルモードの説明をしていく。
その、バトルモードの最終的な戦歴を公開すると、
PD:4000
GD:627
KC:40
獲得称号一覧
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称号は後で個別に説明する話を投稿するので待っててね★
ログアウトしたマッドことトモコがさくと話している間、カロラインの魂である女性はマッドのフルダイブ体機能報告書をかきあげた。
机に置かれたそれに書いてある項目全てに測定不能を意味するUを書いてあるが、お咎めはなかったそうだ。
☆あとがき★
戦闘場面の触りの部分でしたけど、楽しくなって書いてしまいました。
本小説の内容は基本的に戦闘描写が多くなるかも…なので、まったりとしたのがいいよ〜って方は、別小説の『れんれん』こと「連勤辞めたら錬金神になった」をお読みくださいね!(更新停止中)
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