第20話 詐欺
8月の末、パソコン専用アドレスに一通のメールが届いた。
①件名/『【××银行】当社サイトご利用制限のお知らせ』
我が家は××銀行に口座がない。
ってことは、一発で分かる。
詐欺メールだ。
使ってないのに「利用制限」って、とぷぷぷと笑った。
笑いながらすぐに「フィッシング対策協議会(※)」宛てに転送した。
*
それからしばらくの間、何事もなく、そんなことがあったのをすっかり忘れきった10月。再びパソコン専用アドレスに届いたのは、
差出人/『マイナポイント第二弾』
②件名/『【まもなく終了】今すぐイベントに参加して20,000円プレゼント!』
このメールをひと目見て、はて? と首を捻った。マイナポイントの受け取り期限ってたしか9月末じゃなかったっけ? と。早速確認した所、私の記憶は(珍しく?)正しかった。ってことはこちらも同じく詐欺メールってことだ。
やれやれ、と思いながら再び転送する。
*
一週間も経たないうちに、今度は口座のある銀行名でメールが。
③件名/『 (入出金制限)〇〇銀行からの重要なお知らせ』
ご丁寧にも件名の下に『重要度・高』なんて欄まであった。
でもね、いくら口座があるといったって、さすがに3回目、これで騙されたらあなたあまりにも私ってチョロいじゃアリマセンか、とため息交じりにこちらも転送。
*
11月になってなぜか、そう言えばずいぶん長いこと迷惑メールもチェックしてなかったなあと思い出し、覗いてみると。
届いてました。2通。10月の末、それぞれ違う日に。
ひとつは銀行系カード会社から。
④『△△カードお客さま情報等の確認について』
もうひとつはお買い物サイト。
⑤『【重要なお知らせ】□□ アカウント情報の確認が必要です』
△△カードも□□も実際に使っている。だからもし受信トレイに入っていたら、あれ? とは思ったはずだ。
ただ、さすがにここまで続くと、それはもうはなから疑ってかかるというか、そもそもこういうメールは正規の連絡先からはまず来ないことは既に履修済である。
それにしてもなんで最近すぐに迷惑メールに気付くようになったんだろうと思っていたら、何のことはない、メーラーの仕様が変わっていたからだった。迷惑メールが届くとフォルダー外に数字が表記されるようになっていたのだ。
そしてそれを知ると同時に、そもそも迷惑メールは「十日後に自動的に削除される」と今頃気が付く鈍臭さ。ってことは今までにもたくさんの迷惑メールが勝手に送られてきて勝手に消えていってたんだろう。
ちなみに①から③までは、ふつうに受信トレイに入ってきていた。それが後の2通は迷惑メールに振り分けられたということは、パソコンも学習したということだろうか。
パソコンにはセキュリティソフトを入れているが、近頃の詐欺はそれだけでは防ぎきれないと思っていた方が良さそうだ。これからは今まで以上に気を付けなければと思っていたら、11月も半ば、またまた迷惑メールが届いた。
某有名カード会社から。
⑥『【緊急通知】◇◇カード会員様へ 重要なセキュリティ対応が必要です』
ええっと。◇◇カードは持ってないよ……。
📥📥📥📥📥
ということで、それぞれのメールの特徴、実際の文面を一部引用しておきます。ご参考まで。
①銀行
企業ロゴなどもしっかり入っていて、メール末尾には尤もらしい表記まで。
『株式会社××銀行
金融機関コード : 00××
登録金融機関 : 近畿財務局長(登金)第3号
加入協会 : 日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会
一般社団法人日本クレジット協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
Copyright (c)×× Bank, Limited All Rights Reserved.』
ただし、今回コピペして初めて気付いたのですが、件名に含まれている『銀行』の『銀』のはずの文字が『银』となっています。
更に、メール末尾のコピペでは、不思議なことにメールには書かれていなかった『验证码』の文字が最後に一緒に出てきました。調べてみると『認証番号』という意味のようです。
②マイナポイント
こちらはかなり雑な作りで、それっぽい文章に「申請を始める」ボタンがひとつ埋め込まれているだけでした。
③銀行
こちらも文章だけの割合短いメールでしたが、脅し文句がピリッと効いていて、イヤな感じです。
『取引制限について××までにご回答頂けない場合、お客様のご回答に著しい不足がある場合、もしくはご回答から当社規約第9条(禁止事項)に抵触すると判断した場合、やむを得ずお客様の口座を解約させて頂くことがございますので、あらかじめご了承ください。』
④カード会社
『弊社では業界最高水準の不正利用検知システムを導入し、24時間365日お客さまのカードのモニタリング(不審カード利用チェック)を行っております。』
『弊社では第三者によるカード犯罪を未然に防止し、会員の皆さまに安心してカードをご利用いただくために、カードご利用の際に、お客さまの信用状況、ご利用可能額に関係なく、カードのお取引を保留させていただく場合がございます』
脅し文句がイヤだと言ったからといって、詐欺メールに「安心してご利用いただくために」と言われましても……。
⑤買い物サイト
『パスワードは誰にも教えないでください。
安全性を確保するために、予測しにくい複雑なパスワードを設定してください。大文字・小文字・数字・記号の組み合わせをお勧めいたします。
各オンラインアカウントに異なるパスワードを使用し、定期的に変更することをお忘れなく。
□□は、お客様の情報保護に全力で取り組んでおります。
何かご質問やご不明点がございましたら、弊社カスタマーサポートまでお気軽にお問い合わせください。』
大変丁寧なアドバイスを頂戴しました。
ありがとうございます。
こうしてエッセイのネタにまでさせて頂き、感謝の言葉もゴザイマセン。
⑥カード会社
『尊敬なる◇◇カード会員様、』
そんなこと言われましても、あなた日本語変ですわよ?
え? あなたも大して変わらないですって?
失礼しちゃうわ!
※少しでも気になるメールやSNS、ショートメッセージなどを受けた時は、何もせずにすぐにタイトルなどをコピペして検索するか、フィッシング対策協議会のホームページへ。呆れるほどたくさんの事例が出ています。
※代引きで受け取る買い物がこの時期に毎年1件あるのですが、つい先日、受け取りの際、郵便局の配達の方に尋ねられました。
「送り主の方に間違いはないですか? 金額も合っていますか?」と。
『代引き詐欺』なるものが増えているのだそうです。
頼んでもいない高額商品を勝手に送りつけてきたり、確かに購入した商品だけれど実際に購入したはずの金額より高い額を代引きとして求められたり、といった手口なのだとか。
代引きは一度判を押して受け取ってしまうとキャンセルできないそうなので、少しでも気になることがあれば(例えば家族名で送られてきた商品を本人に確認しないまま受け取ってしまうとか)、とにかく受け取らずに持ち帰ってもらうようにしてください、と配達の方に言われました。
実際、高齢者の方がそれで騙されずに済んだこともあったそうです。その場で相談してくれて全然構わないですし、何度も足を運ぶことになってもお客様が騙されないのが一番です、と笑顔で教えてくれました。
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