改人都市

紅赤

1.2050年を生きる

 ピピピ……ピピピ……ピ――


「……よかった、今日も生きてる」


 6時半にセットされた目覚まし時計を止め、いつもの生存確認を済ませると、ぼくは布団から飛び起きた。

 欠伸を噛み殺しながら制服に着替え、自室から居間へと向かう。

 今日は自分のほうが早いかな? と思ったが、予想は見事に外れていて、そこにはすでにテレビを見ている祖父がいた。

 いつもぼくより早起きだなと思いながら、「おはよう、じいちゃん」とあいさつをした。


「おう零斗れいと。よく眠れたか?」こちらに顔を向けるといつもの優しい笑顔で返事をする。

「ばっちし!」ぼくも笑いながら返しすでに用意されていた朝食にかぶりついた。


 ちなみに祖父はもう食べ終わっており、ぼくが食べ終わるのをテレビを見ながら待っていた。

 ご飯、みそ汁、目玉焼きにウインナー、漬物と我が家の定番朝食に舌鼓を打っていると、テレビから緊急ニュースの音が大きく響いた。


【速報です。東京練馬区で改造人間による事件が起こりました。C-E-Uによりますと――】


 そのニュースに祖父はため息を漏らしながら呟いた。

「やれやれ、物騒な世の中になったもんだ」


「けっこう近くだね。ぼくたちも気を付けないと」

 と、ぼくも憂鬱な気持ちになりながら言った。


 何気ない日常で流れたニュースは今や聞きなれた事件だ。

 もう珍しくもないそのニュースが終わると同時にぼくは食事を終えた。


「学校行ってくるね」

「あー、いってらっしゃい。……気をつけて行くんだぞ?」


 先ほどのニュースを見たせいか、少しだけ心配そうにする祖父。

 不安にさせまいと、ぼくは笑顔で手を振って玄関を開けた。


「大丈夫だよ。いってきます」


 こうして、今日もいつものように、いつもの通学路を歩いていく。


 瓦礫で狭くなった道。

 今も空へと昇る煙。

 鳴り響くサイレン。

 そして、兵器を持った特殊部隊の人々。



 現在ぼくたちは2050年を生きている。


 ――日本は今日も"改造人間"による事件が後を絶たない。

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