40.マジカル・マクアケ
「私、あっちゃんともっと仲良くなりたいです!」
「ええ? なんや急に……」
例のごとく待機所で出動要請を待っていると、急に夢がそんなことを言いだした。
「だってだって、みーちゃんやなっちゃんとは仲良さそうなのに、私にだけなんかよそよそしくないですかー?」
「いや、だってそら、セブンスには前助けてもらったし、ブルーナとは定例会議で毎月顔合わせるし……」
「あ、そこ二人って面識あったんだ」
「ほとんど会議に顔を出さないあなたは知らないでしょうね。まあ私としては理沙が来てくれた方がやりやすいので別に構いませんが」
「私、その呼び方が問題だと思うんですよ。登録名で呼び合うなんてなんだか堅苦しくないですか?」
「いやいや、その方がなんかかっこええやん。というかあんたのその呼び方も大概やと思うで」
「ええ!? だってあっちゃんが絶対一番かわいいですよー!」
なんだか不毛な議論が始まりつつあるので口を出さずに傍観することにした。瀬戸でもセブンスでもなっちゃんでも、別に私はどう呼ばれてもいいと思っている。最近知ったことだが、どうも一部では「死神」なんて物騒なあだ名で呼ばれることもあるそうだ。それに関してはほぼあの鎌のせいだとは思うが、終焉に導く者という意味では、そう悪いあだ名でもないかなと思うようになった。
「わかりました! じゃあ今度皆でお花見に行きましょう! そしたらきっと仲良しになれるはずです」
何がどうなってその結論に至ったのかはよくわからないが、お花見という言葉にはなんだか心惹かれる響きを感じた。それこそもう何年していなかっただろうか。
「いやいや、そんなことしとる暇ないやろ。だいたい勝手に外出るわけにはいかんし」
「一階の中庭に桜の木が一本植えられています。そこなら別に問題はないかと」
「え、でもあそこは桜子さんの……」
「……ご存知なんですね。ですが心配はいりません。去年はあの場所で総司令主催のお花見会をしましたから。賑やかな方があの人も喜ぶと考えておられるんでしょう」
「ん? なんやようわからんけど、ほんまに大丈夫なんか?」
「大丈夫ですよー。そうと決まればさっそく——」
夢の声を遮るように響いたのは聞きなれたあのサイレンの音だった。それはつまり、ついにその時が来たということだ。
『深度八のウェーブを複数確認! 二番ゲート、八番ゲートよりそれぞれ出撃せよ! 繰り返す——』
「二か所同時か……どうする?」
「二手に分かれるとして、連携の取りやすい組み合わせの方がいいでしょう。お二人は大阪で一緒に戦っていますし、やはり私と星野さん、瀬戸さんと西野さんで——」
「いえ、みーちゃんはなっちゃんと組んでください」
「な……それはなぜですか?」
「なっちゃんの戦い方はかなり独特です。一度見ておいた方が今後の連携が取りやすいです」
「うちはどっちでもええけどな。で、どないすんの?」
「……星野さんが言うなら」
「じゃあなっちゃん、みーちゃんのことよろしくお願いします」
「うん……わかった」
今はただ持てる全てを出し切って敵に勝つ。それだけを考えるんだ。きっとその先に、私の夢があるはずだから。
「
「
「
「
ゲートによって転送されたのは山に囲まれた湖だった。周辺からはすでに強い魔力を感じる。
「ここは……」
「芦ノ湖です。……二時の方向、敵影確認」
そこにいたのはあの首なしの
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「……わかりません。先日現れたやつらは全部星野さんが倒してくれたので……」
ブルーナの魔法が効くかどうかわからない以上、また
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光の刃が体を切り刻む寸前で、私は亜空間へと逃れる。この隙にブルーナがあの翼を切り裂いてくれれば、こちらが攻撃する隙を作れる。だがブルーナの投げたナイフは首なしの強靭な腕によって弾き落とされてしまった。そして今度はブルーナに向けて首なしがその槍を突き出す。軽快な動きで攻撃をかわすブルーナだが、反撃の糸口は掴めていないようだ。少し算段は狂うことになるが、ここは私がサポートに回った方が賢明か。身を潜めたまま一気に首なしの背後を取り、姿を現すと同時にその翼を鎌で切り落とす。これで首無しは前後を敵に挟まれた状態になった。これで私かブルーナ、どちらかの攻撃は必ず通る。
続けざまに振り下ろした私の鎌は、首なしの槍によって防がれた。しかしこちらは陽動だ。一見するとこの大鎌の一撃の方が脅威に映るだろうが、実際は
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ブルーナは未だ体勢を崩したままだ。あの時、私をかばってくれた理沙の背中が脳裏に浮かぶ。総司令の、夢の言葉が、頭の中に響く。絶対に、死なせはしない!
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