出会い7

 探索はあっけなく終わった。


「結局、何も見つからなかったなー」


 行きしに進んできた参道を引き返す途中、彰真が期待はずれだと言わんばかりに肩を落とす。


「美人なお姉さん幽霊どころか、オーブも出てこなかったし」


(普通にその辺うろうろしてるけどな……何なら、お前の肩にも乗ってるし)


 手持ち無沙汰なようで彰真は首を傾けながら、右手で十字架のピアスを弄っている。


 しかし、輝の目には、彰真のその反対側の首から肩にかけてしがみつくように黒い塊が2つ3つぶら下がっているのが視えている。


 何度か彰真の目を盗んでさり気なくそれらを引き離そうと試みた。


 しかし、威嚇するかの如くふよふよとした触手っぽいものが伸びてきて、何が何でも獲物かずまから離れるもんかと首元にべったり絡みついた。


 なので、輝は無理に引き剥がすことはせず、そのまま放置することに決めた。


 彰真は例え風邪を引いても、風邪を引いたことに気付かないくらいのあらゆる面において鈍感な男だ。


 心配じゃないと言ったら嘘になるが、このまま放っておいても特に問題はないだろう。


 現に肩にのしかかられても、重たそうな素振り一つ見せないのが良い例だ。


 ある意味見方を変えれば、毛皮のファーに見えなくもないしな。


「お前がここは絶対出るって言うから、わざわざ車まで出したんだけど。何だよ、のろいって。泣いてる女なんてどこにもいねえじゃん」


 彰真のバイト先の先輩である高橋が和真の大きな独り言に乗っかるように不平を漏らした。


 確かに。霊と思わしき存在を認識出来る輝の目から見ても、廃神社にわらわらと蔓延っている数の多さには多少なりとも目を瞠る。


 しかし、数が多いだけで特に危険性が高いってわけでもなく、その道専門で腕に自信がある霊媒師がお手上げのレベルだと噂が立つ程のものだとは思えない。


 何故なら、常日頃から黒い影や幽霊たちは、心霊スポットだけでなく、学校や病院、踏み切り前などといったありとあらゆるころ日常に溶け込んでいるのだ。


 輝にはこの場所が普段から眺めている景色とそう大差はないように思えた。


 これくらいなら、そこら辺に居る普通の霊媒師でも処理出来そうだ。


 実際、そこら辺に居る普通の霊媒師というものの実力がどんなものかは知らないのだけれども。

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