最初の馬、最後の馬
先日、最後の乗馬に行ってきました。
無職になってはや3ヶ月。
少しずつ生活も、以前住んでいた地に通うことも苦しくなってきました。
大好きなかわいい馬に会いたい、その思いはあるのにお金のことや往復の道則を考えると、以前のように純粋にその日を楽しみにできない自分がいました。
仕事を辞めるときには考えられなかった「乗馬を辞める」ということも自然に考えられるようになっていたのです。
「お金の余裕は心の余裕」とはよく言ったものです。
私はじわりじわりと減っていく貯金とともに、乗馬を楽しむ心の余裕もすり減らしていたのだと気がつきました。楽しいことのはずなのに、そう思えていない反逆者のような自分がいつの間にか心の中に小さく体育座りしているのです。このままでは、毎回一緒に行ってくれる友人や乗せてくれる馬にも申し訳ない、そんな風に思うようになりました。最近の私はせっかく時間と体力、お金をかけて馬に乗っているのに、馬に乗りながら今後の生活について一生懸命に考えていたのですから。立派な裏切りです。
私が辞めると告げたとき、友人もクラブの方も心配して引き留めてくれました。
「辛いのは今だけだよ。きっとすぐ仕事も見つかって良くなるよ。」と。
だから1週間また考えて答えを出して、と。
それでも私って意外と頑固なのです。
1度決めたら、曲げない。今はもう違うと思ったら、辞める。
なんだか文章を書く、と言って仕事を辞めた時の気持ちを思い出しました。
そして1週間後、辞めると決意して向かった乗馬クラブ。
これで最後か、と思うとクラブの敷地に入っただけで自然と目頭が熱くなりました。
初めて馬に触れた時の気持ち、馬に乗って揺られた時の興奮、辛く嫌なことがあったときにそれを察してか無言で口元を擦り付けてきてくれた馬のこと。これまで関わってくださった乗馬クラブの方々や一緒に通ってくれた友人。
思い出は美しいとは言いますが、時間が経ってからではなく、終わるその瞬間に楽しかったことばかり思い浮かぶこと以上に幸せなことはありません。
もう騎乗する前から、感無量の私。
でも、幸せはさらに続きました。
しんみりしつつもワクワクしながら最後に乗る馬はどの子かな、とレッスン予定を確認しに行くと、なんとそこには1番最初のレッスンで乗った子の名前が。
こんな素敵な巡り合わせがあるだなんて、想像していませんでした。
馬の名前を呼び手綱を握って、
騎乗して
これまで習ったことを1つ1つ丁寧に。
目線は常に真っ直ぐ、前を。
前を見据えて始まりと終わり同じ背中から、次に向かって歩き始める勇気が溢れてきました。
最後のレッスンは本当に一瞬でした。
何にも縛られず、馬と一体になることだけを考えて充実した時間を過ごすことができました。
こんなにも気高く、自分の心と向き合うことのできるスポーツは他にないと思います。私の乗馬ライフはここで一旦幕を下ろしますが、この経験はわたしのこれからにかけがえのない影響を与えるはずです。
もしこの日記を読んで、乗馬や競馬に興味を持ってくださった方、始めたという方がいらっしゃったらそれ以上に嬉しいことはありません。
本当に本当に、良い時間でした。またどこかで馬に乗れる日を夢見て。
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これまでこの無職の乗馬日記を読んでくださった皆様、ありがとうございました。
現在私は、本腰を入れて就職活動に勤しんでおります。
乗馬を辞めてしまったため、「無職の乗馬日記」ではなくなりますが、
仕事が決まった際には、いつも応援してくださった皆様にこちらでご報告させていただければ、と考えております。
引き続き頑張ってまいりますので、今後も応援していただけますと幸いです。
これまで本当にありがとうございました。
2022.07.19
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