推し活がない世界で、全力で推しを応援します。
もか
推し活が存在しない世界で、全力で推しを応援します。
「イケメンだらけのこの世界に、私は推し活という概念を作ってみせます!!!!」
…
起きて…朝だよ…と胸をざわつかせるような声が規則的に流れる。
こんなに何回も言われちゃときめくものもときめかないって、と思いながら目覚ましを止める。
自分がイケメンだらけの異世界に転生する夢を見たお陰で気分は上々だが、しだいに目が覚めてくる。
柚木莉子 という名前が書かれたドアのネームプレートを見て完全に覚醒した。
「なんで今日は誰も起こしてくれないのー?!」
ふと、時計を見ると9時30分になる所だった。
いつもはうるさいはずの妹の部屋を通り過ぎ、急いで準備をするが途中で違和感に気づく。
「あれ、家の中静かすぎない?」
そう、物音一つすらしないのだ。
父親は仕事、妹が学校に行ったとしても母親はこの時間帯なら必ずいるはずなのに。
「お買い物にでも行ったのかな…心配だな…。」
心配性にも見えるが、うちの家族は四人も方向音痴がいるから心配にもなってくる。
なんて考えていると外から風が窓を叩く音が聞こえる。
時間は9時40分だ。
急がなきゃという気持ちを増長させるような時計の音がチク、タクと聞こえる。
準備を完了させ玄関へ向かうと目眩がしてふらり、と倒れ込んでしまったが焦りと、謎の心地良さと、使命感からすぐに立ち上がって玄関のドアを開け いつも見える眩しいくらいに輝く青空を見上げた。
はずだった。
何故かドアを開けた先にあったのは漫画等でよく見る宇宙のように見えた。
そんなはずはないと目を擦り再び青空を見上げようとしたが、何度見ても宇宙のような場所だった。
とにかくよく分からないが、一度家に戻ろうと思った瞬間扉が消えていく。
「えっ…?ま、まって !?!?」
そう言葉にするも伝わるはずなく、そのまま静かに消えていく私の家の扉。
意味もわからないまま逃げ道を失った挙句、また目眩がして後ろに倒れ込んでしまった。
「っは、なに、なんなの…?」
このまま一生外に出られないのか、親に会えないのか、推しに会えないのか、と思考を巡らせていると後ろから風を感じる。
何かと思い触れようとした時、手が空を切った。
落ちたら一溜りもないような深さの穴があったのだ。
「あっっっっぶな…」
こんな親切な程に分かりやすい罠は初めてだ。
落ちてやるもんか、と思い穴の近くに立つと懐かしい雰囲気を感じた。
と、思った瞬間に誰かに背中を押されて穴に落ちた。
焦って空気を掴むがそのまま落ちてしまう。
死を察した私は長い落ちていく感覚の中で背中を押した人物の顔を見ようとしたが、そこで意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます