追放サイド ストーリー 12 終

「マジ〜?あっぶな〜うっかり引っかかるところだったし!アンタやるじゃん!」


「ええ まぁこのダンジョンには今日何回も挑戦してるので罠の場所とかは大体把握してますよ」


「へぇすごいね君 雇って正解だったよ!もしクリアしたら今度オフ会しない?美味しい店知ってるんだけどさ!」


「ハハッ それはちょっと・・・」


 そう言うと女は立ち止まりアイテムボックスを探り始めた 何してんだコイツ松明の効果時間はそんなに短くないはずだぞ?全く雑魚の考えることは理解不能だな。


「おい!アンタ!何やってる?遊んでる暇はねぇぞ?」


「ちょっと待ってください この辺に印を付けておきます このダンジョンは広大かつ複雑ですから 印が無いと迷ってしまうんです 私たちが全滅した時点で消えてしまいますけどね・・・」


「ここに杭を刺して・・・これで大丈夫です!先に進みましょう!」


・・・・・・・・・・・・・・


「あれ?ここはさっきの場所・・・すいません道を間違えたようです」


「ああ!?間違えた!?なんのためにアンタを雇ったと思ってるんだ!!」


「す、すいませんちゃんと進んできた筈なんですけど・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・


「あれ?またここ?今度こそちゃんとしたルートできたはずなのに・・・」


「まったく全然使えないじゃねぇか!!この俺がわざわざお前みたいなお荷物を雇ったってのによ!!!これじゃあこの間の雑魚の方が全然使えたぜ!!」


クソッ!!奴は一度も間違えずにスラスラ行けてたじゃねぇかよ。


「この前組んだお前みたいな雑魚は一度も迷わず進んでたぞ!杭も使わずにな!!」


「・・・前に攻略したダンジョンがあるって事ですか?何処です?」


「ああ?東の方にある高難易度ダンジョンだ」


「あの最近攻略されたって言うダンジョンですか!?あそこを一度も迷わずに進むなんてどんな”探求者”(シーカー)でも無理ですよ!?あそこはこのダンジョンを除けば最高難度の構造になってますし最下層はここと同じ探知不可能な空間だったはずです!!」


 コイツはさっきからなにをそんなに興奮しているんだ?あんな緩いダンジョン雑魚でも楽々進めてたんだぞ・・・?


「何言ってるんだ?現に俺たちは足手まといを連れながら攻略したし一度も迷わなかったぞ!?」


「それは貴方たちがすごいんじゃなくてそのもう一人の方がすごいんですよ!?あそこを一度も迷わずに進むなんてかなりの技量と経験の積み重ねが必要です!!その方はどうしたんですか?」


「だからあんな雑魚がなんだっていうんだよ!!使えねぇから追放してやったよ!」


「ハァ、そう・・・ですか その方がいれば今頃このダンジョンも攻略できてたかもしれませんね」


 コイツは何言ってるんだ?俺でも難しいダンジョンをあんな雑魚に攻略出来るわけないだろうが!!


「ああ!もういい!!お前も追放だ!!」


「ちょっと、直樹!せっかく入ってくれたんだからそんな言い方無いだろ・・・」


「そ、そうだよ・・・直樹 私達のために頑張ってくれたじゃん!」


「・・・わかりました、残念ですけどパーティーから離脱しますね ではさようなら」


“パーティーから離脱しました”


 そう言い”探求者”(シーカー)の女は俺たちを置いて去っていく、クソがあんな使えねぇ奴いてもいなくても変わらなかったな、しょうがねぇ俺たちだけで行くか・・・。


「・・・おい?何してんだ行くぞ?」


「って・・・ねぇよ・・・」


「ああ!?なんだよ!もっとハッキリ言わねえと聞こえねぇだろ?」


「お前とはやってらんねぇって言ってんだよ!!!」


「お前・・・何言ってんだ?」


「自分に気に食わないことがあると周りのせいにしてすぐに怒鳴るしよ!!!」


「ああ!?テメェ調子に乗ってんじゃねぇぞ!お前も沙羅もお情けでこのパーティーにいるってのがわからねぇのか?本来なら俺は他の世界ランカーと組むことだって出来るんだよ!!」


 コイツら調子に乗りやがって俺がいつまでも甘やかしてやってたがもう知ったことか!!


「そうかよ・・・それがお前の本心か?お前とはここで終わりだな直樹」


「ち、ちょっと真斗くん?」


「悪いな沙羅コイツとはやっていけねぇ・・・お前も早く別れた方がいいぜ?じゃあな」


 “パーティーを離脱しました”


「クソがあの野郎ふざけたことしやがって!」


「な、直樹落ち着いて・・・」


「沙羅!!テメェも同じだよ!!この役立たずが!なんでお前と付き合ってるか分かるか?」


「えっ・・・?」


「お前の親が金持ってるからだよ!!じゃなきゃお前みたいな頭の軽い女と付き合うわけないだろうが!女なら他に腐るほどいるんだからな!」


「直樹、それ本気で言ってるわけ?」


「冗談で言うと思うか?お前みたいな身体だけが取り柄の脳カラ女に俺が本気になると思ってるのかよ?」


「最低!!アンタなんかと付き合うんじゃなかった!」


 “パーティを離脱しました”


 クソッ!!どいつもコイツも使えねぇ!!まあいい俺は世界ランカーだ一声かければパーティーになってくれる奴は山ほどいる・・・とりあえず入り口に戻るか。


 俺は使えそうな奴から声をかけていきパーティーに誘ってやったが。


「アンタとパーティーに?」 


「そうだ!俺は世界ランカーだ!このダンジョンを一緒に攻略しようじゃないか?」


「うーん・・・」


「ちょっとこの人噂の荒らしだよきっと(ヒソヒソ)」


「ああ、あの暴言ばかり吐いてまともに戦わない奴か(ヒソヒソ)」


「悪いが俺たちはもうパーティー組んでるんだすまないな」


俺が荒らしだと?どこからそんな噂がたってやがる!!


「おい!ちょっと待てよ!」 


 声を何度もかけるがそいつらはいそいそと俺を避けるかのように去っていった、クソッ!!なんだっていうんだよ!!あの”探求者”の女が誰かに言いやがったのか!?


 その後何度も声をかけたが結果は同じだった・・・どいつもコイツもこの俺を無視しやがって!!雑魚の分際でふざけた事をッ!!!クソッ!!クソッ!!


 その後あのダンジョンに何度も挑んだが一階層も突破できずに終わった、ある日ゲームを起動しようとしたら運営から“度重なる迷惑行為によりこのゲームの利用権を剥奪します”とのメールがきた。


 真斗は女好きが祟ってかヤバい女に手を出し音信不通、沙羅は親の会社が倒産し学校に来なくなった。


それから数年後あのダンジョンがたった一人のプレイヤーに攻略されたとの情報が耳に入ってきた・・・。


そのプレイヤーは【闇魔法戦士】であったらしい・・・。


ゲームにのめり込んだ俺は今受験に失敗し家を追い出されアルバイトで生計をたてる日々が続いている・・・あの時アイツを仲間にしていれば・・・。

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