第7話 真実は涙の向こうに

「父は何をしたのですか」


 喉の奥から振り絞るようにして、それだけを言葉にすることができた。


「大丈夫か? 顔が真っ青だぞ。それにその傷、誰に殴られたんだ」

「近衛‥‥‥衛士に。衛士たち、に」

「本当か。あいつら王宮の中で何てことしやがる」


 子供にとか。子供に対して、とか。そんな言葉は付け加えられない。

 やっぱり罪人の子供は罪人なんだ。

 六歳のルークにでも、そのくらいのことは理解できた。


 これだけ痛い目に遭わされたら、理解だってできるというものだ。

 自分をこんな目に合わせた父親が憎かった。

 アミアに「ごめんなさい」と言わせたあの男が、許せなかった。


 屋敷に戻れば多分、母親も同じような目にあってるだろう。

 そう思った。


「父親は何をしたのですか。教えてください」

「知りたいのか」

「当たり前です。私と母上は、このままでは罪人の家族となるじゃないですか。何も悪いことしてないのに‥‥‥」


 あの男のせいだ。

 言葉にはしなかったが、確かにはっきりと心の中でそう思った。

 もし顔を合わせるようなことがあっても、今朝のように仲の良い会話はもう二度とできないだろう。


 もし父親が無実だったとしても。

 以前のように親子の会話をできる自信がなかった。


 とりあえずつらかったのだ。


 殴られたことも、罪人の息子と罵られたことも、婚約者を泣かせたことも。

 謝られたことも。何もかも。

 ありとあらゆるものが消えてしまえばいいと思った。


 いや、違うかもしれない。

 辛い現実だけが消え去って、アミアと母親と、それからこれまで家族のように付き合ってきた父親の部下たちと。

 彼らだけがいてくれればそれでいい。

 ルークはそう思った。


 王国騎士はしばらくルークを見てそれから何があったか詳しく教えてくれた。

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