第4話 善良な無能ほど、始末に負えない。
ゼークト将軍の言葉とも言われているが、正確に誰というのは完全に特定できない、ある有名な言い回しがあります。とはいえ、これはドイツの軍人さんのお言葉であるというのは間違いなさそうです。
あえてドイツ国防軍としなかったのは、これをヒトラー氏の言葉と言った人もいるらしいからさ。ヒトラー氏は、国防軍の将校(=職業軍人)じゃないからね。
勤勉と怠惰、有能と無能。
これらを対立軸として4パターンに分け、それぞれの人物像を組織としてどう扱うべきかを論じたものです。
それについて詳しくは、ネットで調べて見てね。多くの記事が出ています。
で、どの記事にも共通している点は、ここ。
意外かもしれないが、「勤勉な無能」というのが、一番の低評価なのね。
さて、わしがここで述べるのは、善良と悪質、有能と無能に分けて、どうかということです。よくよく読まれたら、先のパターンの受売りじゃねえかと思われるかもしれませんが、その御指摘は、確かに、正しい(苦笑)。
じゃあ、やってみますね。
まず、善良な有能。
これは、何とも言えぬ理想的な人物像ですな。
通常のルーティンなどには、あるいは、個人的な付合いには、もう、言うことなしのパターンでしょう。ただ、何か大きなことを切り開いていくときや、危機的な状況下においては、案外、頼りにならないことも出てきます。この手合いで何が困るかというと、自分の可能なレベルが相手も可能であるという意識というか、そういうバイアスのかかった状態で人に要求してしまうところがあるからね。そうなると、指示者と実行者の間の齟齬が生まれて物事がうまくいかなくなるのが相場。
それは、善良であるが故の「ブレーキ」がかかりかねないからよ。
もっとも、くだらない情緒論におぼれるようなことは、有能故にない。
次に、悪質な有能。
確かに、性質(たち)が悪そうですな。聞こえも悪いし。
だが、実際は逆や。
こういう人間こそ、何か大きなことを切り開いていくとき、あるいは、危機的な状況下にあるときに大いに役立つ。そこに、タブー(特に、情緒論!)を持込まないから。しつこいけど、この期に及んだ時に至ってなお、人間性とか、情緒論とか、そういうものを持込まないからよ。それは、実に大きなポイント。無駄なことはしないようにするには、相手の力量やあとさきの状況を読んでいないといけないからね。だけど、そんなことはとっくにこの手合いは読み切って、やっている。
それでも不測の事態などがあるだろうというが、そうなったところで、そこにはきちんと力配分をしてくるから、さほど問題はない。自分で無理なら、人を呼ぶ。自分より有能な人間であっても、いとわない。
とにもかくにもこの手合い、なんだかんだで有能であるから、余計なことはしない。だから、性質が悪質であっても、それが問題とならない程度で納めてくれます。
その次は、悪質な無能。
これは存外、大したことない。相手にしなければ済むだけのことである。
あるいは、こちらでうまく管理してその範囲内で付合えば問題はない。
人材にはならんでも、人手程度にはなります。員数ぞろえとも、言ったっけ。
まあ、お互い、落としどころさえ押さえておけば、大丈夫です。それを超えてしまうと害になってしまうけど、案外、致命的にはならないうちに片付くものです。
最後に、善良な無能。
一見、善良であるがゆえに人間的には愛すべき人のように思われかねないところもあるのだが、これこそが、問題。
善良であるだけに、自分自身の理想論をとくと語り、それが人のためになっていると信じている。そして、押し付けているという認識もなく、「ためを思って言っている」が故に免罪符になるとでも言わんばかりの言動をする。そして、「一生懸命(一所懸命ではないところが、彼(彼女)らの特徴)」やれば、それは必ず相手に汲んでもらえると信じているところが、もはや、イワシの頭の信心の発展形の様相さえ呈しているときておりますね(昭和の無能は、この手合いが多かった)。
もっとも、中身は無能であるから、真に解決策など出てくるわけもない。
こんな人間は、さっさと排除しなければならない。
だけど、それができない状況に置かれたときが、辛いのよね・・・。
ましてや、そんな人間が目の前に立ちはだかったりされたあかつきには、ね。
私が問題にするのは、もちろん、最後の「善良な無能」。
なぜかは、もう、お判りいただけたのでは、と。
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