渡辺卓也②

美咲とは別々の高校に進学した。


それぞれの人生を歩み始めた僕らは、顔を合わせる機会を失った。


進学した高校は、中学に比べ生徒の人数がかなり多かったので、なかには美人だと思える同級生も何人かいた。


僕自身も女性とコミュニケーションを取る機会が少しずつ増えていた。


しかし、僕が積極的になればなるほど、彼女達は離れていった。


今思うと、これはやはり美咲の存在が影響していたように思う。


心に決めた女性がいる僕のことを、他の女性が相手にしないのは当然のことだ。



大学に進学しても、美咲との関係性は変わらなかった。


当時、もしかしたら彼女も同じ大学に進学しているかもしれないと、SNSで情報を集めたことがある。


数週間かかってしまったが、彼女のアカウントを特定することができた。


しかし、残念ながら僕とは違う大学に進学していた。


この頃から、さすがに僕のなかで彼女の存在が小さくなり始めていた。


どんなに想い合っていたとしても、会えない期間が長くなれば、愛情が薄くなるのは仕方のないことだ。


周りを見渡すとキャンパス内はカップルで溢れ返っている。


そろそろ僕も恋人が欲しいと思っていると、入部したボランティアサークルで、ある女性と出会ったのだ。


それは、京子という女だった。


京子は見た目がとても地味で、お世辞にもかわいいとは言えなかったが、話していると楽しかった。


家が近かった僕らは、2人で一緒に帰ることが多く、その日も他愛もない話をしながら歩いていた。


そして、僕は思いついたように言ったのだ。


「京子、もしよかったら僕と付き合わないかい?」


突然の発言に、京子はびっくりしていたようだが、しばらく考えてから答えた。


「私でよければいいわよ」


こうして僕は、人生で初めて彼女をつくることに成功したのだ。


当時は本当に人生が変わったような気分だった。


決して美人ではないが、こんな僕にも彼女ができたのだということがうれしかった。


京子とは大学卒業間近まで付き合っていた。


彼女と過ごしていくなかで、美咲の存在は頭の片隅へと追いやられていった。


しかし、京子との恋は残酷な形で終わりを迎えた。



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