俺の妹が原因でクラスが派閥抗争してる

エイル

0章 プロローグ 派閥闘争の始まり

1話 クラスの派閥が変性する時

 常和市、常和西高校は東西南北がある中で上から2番目の微妙なレベルのありふれた高校だ。

 

 そこに通う俺こと、安倍 真治あべしんじは高校二年生で普通の人よりちょっと家族が大変だけどそれだけだ。

 

 それは産みの母親が勝手に行った、単身海外旅行で現地人と不倫して結婚するために俺と妹、そして親父を置いて離婚した。日本国籍まで捨ててしまいどこかのジャングルで暮らしてるらしい。

 

 俺が小学三年、妹が一年の時のことだ。離婚の心労からか妹が病気がちになり、最先端手術を受けたりもした。

 

 親父はトラックドライバーで、母親がいなくなってから毎日帰ってくるようになった。でも収入が減って少し貧乏になってて、仕方なく最先端手術の治療費は借金した。

 

 今でも妹は病弱だけど命の心配は少なくなった。中学三年生となって休む日も多いけど常和中学校にちゃんと通ってる。

 

 俺は借金返済のために高校生になったらバイトを始めた。

 

 そしたら親父がコンパで意気投合した女の人と結婚した。26才で高校の先生だ。親父は41才、俺は高校二年生おかしくないか?新しい母親は親父より俺の方が年齢が近い上に、もちろん担任だ。

 

 親父は借金返済のために家庭を新しい母親に任せて長距離の仕事をするようになった。何日も帰って来ない事も多くなった。

 

 新しい母親は高校では旧姓を使うから、親子なのはバレてない。俺に特別扱いもしないし特別厳しくもない。バレたら甘いと言われないように厳しく指導しないといけなくて、教育に悪いからバラさないよう厳しく言われた。

 

 そんな事より親父と担任が夜のハッスル声が聞こえる家庭の方が教育に悪いと思う。でも兄弟が増えたら嬉しいかな。

 

 公務員の母親のおかげでバイト代は俺の物になった。犯罪じゃないし、妹の手術が絶対にないとは言えないからバイトは高校で禁止だけど許してくれた。バイトは妹のもしもの時の足しにしたくて全部貯金してある。

 

 そんなちょっと家族が大変なだけのありふれた高校生だ。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 その日は朝寝坊をする寸前で目が覚めてたせいで、常和西高へ走ってる。自転車通学の範囲からギリギリ内側で徒歩通学をしなければならないからだ。隣に引っ越して来たのクラスメートの水岡 希更みずおかきさらは自転車通学なのは解せない。

 

「あっれー?まだこんなとこに徒步組がいる〜。遅刻するっよー?」

 

 正にその水岡希更が後ろからやって来る。お隣だけどそんなに近所付き合って無いし、バイトで忙しくて休み時間は寝てることも多いから仲が良いわけじゃない。

 

「うっさい乗せてくれよ」

 

 俺自身はコミュ障じゃないからこれくらいは言える。ただ忙しいだけだ。

 

「追いつけたら乗せたげるっとそりゃ~」

 

 ママチャリとは思えない速度で俺の横をすり抜けて行く。ママチャリ水岡希更に黒塗りの超高級外車が追走する。どうやら車道に出たママチャリ水岡希更が邪魔みたいだ。

 

 乗ってるのは長谷 友梨佳ながたにゆりかクラスメートの内気な図書委員だ。でも有名なのは親がめっちゃ恐い警備会社の社長だと言う事だ。

 

 一応合法らしいけど、黒スーツにサングラスのいかにも入墨がありそうな男とか、和服の女性とかが社員なんだ。

 

 長谷さんが虐められた所は見たことがない。

 

「ぜぇぜぇ、きっつぅ」

 

 常和西高校まで2キロ、担任の先生はもっと早く学校に行って準備してる。妹は中学校が俺より近いから、同じ時間に出ても歩いて行ける。

 

「分かってる!俺が悪いと!!」

 

 そして遅刻したら100%親にバレる。だって担任の先生が母親だから。

 

「うぉぉ!!負けるな俺!進め!俺の足!上がってくれ俺の太もも!!」

 

 なんとか走りきり予鈴よりもギリギリ早く教室に入る。息を整えつつ荷物を机に整理整頓していて気が付く。

 

 お弁当がない。このままじゃ昼抜きだ。そして男子高校生にとって26才の女の人が作ったお弁当は特別だ。これは人生の大きな損失だ。親父のは特別でハートの人参とかラブって海苔で書いてあるのは知ってる。

 

 俺のは普通に煮物と板海苔だけど、26才の女の人の手作りお弁当なんだよ!!

 

 俺は意気消沈しながら午前中を過ごした。そして昼休み、購買で買う金もないし、帰宅部の俺は運動部派閥じゃないし、帰宅部主流のオタクでもない。バイトと家事で忙しくて話しが合わないからだ。

 

 アニメとかマンガとかラノベとか言われても困る。

 

 そんなわけで友達は少ない。そこで昼休み開始と同時に寝る事にする。他人の食事が羨ましくて余計に腹が減りそうだし、不貞寝の意味もある。

 

「えっと2年3組ってここですか?」

 

「そうだけど?常和中の生徒がなんの用?」

 

安倍 典子あべのりこです。みんなには聖典のてん、子孫のしで、てんしちゃんって呼ばれてます。えっとお兄ちゃんいますか?」

 

 コテンと首を傾げて要件を伝える。

 

「「「ぐっは、ハァハァハァ、てんしちゃんのお兄ちゃんだと!!なりたい」」」

 

 クラスの帰宅部男子の派閥が反応する。

 

「「「尊いお友達になって百合百合したい」」」

 

 クラスのおとなしい女子の派閥が騒がしくなる。

 

「俺は虎井 遥輝とらいはるきサッカー部なんだ。今度遊びに・・・」

 

 妹の声に眠りから覚醒する俺。

 

「てんしちゃん!!何やってんの!!熱あるでしょ!!」

 

「大丈夫だよ。お兄ちゃん学校お弁当忘れててお腹減って困ってるかなって思って持って来たよ」

 

「「「いい娘だ。彼氏になりたい」」」

 

 運動部男子派閥が騒ぎだす。

 

「ありがとう。でもダメでしょ!!熱あるんだから帰るよ」

 

「えーもう下がったよ。平気平気」

 

「ダーメ、ほら一緒に帰るよ」

 

 クラスをまるっと無視して帰るために荷物を持っててんしちゃんとクラスを後にする。

 

「もー心配性なんだから、微熱だったしもう下がったから何ともないしスマホも発作の薬も持ってるのに」

 

「ハイハイ、お兄ちゃんは心配性なの」

 

「もー学校サボっちゃダメなんだよ?」

 

「サボってない付き添いだからいいの」

 

「良いのかなぁ?バイトは行くの?」

 

「あー、バイトは行かないとな」

 

「そっか、でも一緒に帰ってくれてありがとう」

 

 エヘヘと笑う妹がの姿に俺が守らないと何度目になるか忘れるほどした決意をしたのだった。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 その頃残された教室では派閥争いが勃発していた。

 

「天使の様な存在に変な虫をつけるわけにはいかない!!同士よ立ち上がれ!!」

 

 そう鼓舞するのは帰宅部男子の派閥リーダー熊尾 龍太くまおりょうただ。サブカルチャーを愛するが成績優秀でクラストップ、スラッとした体型にイケメン。ただただ性癖が残念なのが致命傷だ。

 

「駆逐せよ!!ウインドカッター。回復班は援護に回れ!!」

 

 帰宅部派閥改めお兄ちゃんになり隊は運動部男子派閥ヘ四属性の魔法攻撃を仕掛ける。

 

「チッ、来い式神、最低限の捨て駒で防ぎきったら数で押しつぶせ!!」

 

 運動部男子派閥から彼氏になり隊に変わったリーダーの虎井遥輝は召喚魔法を使う仲間に的確な反撃指示を出す。

 

「最低な男達に穢されるなど許せますか?否!断じてい否!!女の子の心は女の子にしか分からない!!我が同盟名士よ!!今こそ戦う時ではないか!!さぁ5番をやりなさい」

 

 おとなしい女子派閥から覚醒した、お友達になって百合百合し隊のリーダー長谷友梨佳が演説をする。

 

「「「トイレに行きたくなってしまえ!!」」」

 

 お友達になって百合百合し隊の呪いがクラスの男子に襲いかかる。

 

「甘い!熊尾龍太は四属性と再生の使い手ぞ!回復班半数は呪いの回復に回れ!アンチカース」

 

 派閥として素晴らしい連携を魅せる、お兄ちゃんになり隊。

 

「数の有利は絶対だ!!式神追加!!死にかけの召喚獣に呪いを肩代わりさせろ!全力で押しつぶせ」

 

 個々の力を合わせ圧倒的な暴力を繰り出す、彼氏になり隊。

 

「呪いは数を選ばない!!飽和攻撃開始!!5番で破滅を迎えさせなさい」

 

 エゲツない社会的破滅を狙うテロ行為を強める、お友達になって百合百合し隊。

 

「バッカじゃないの?そう思わない?」

 

「引くわーこんな事に魔法使うなんて引くわー」「危ないなー」「これだから飛び道具の奴らは嫌なのよ」

 

 ギャル女子派閥のリーダー水岡希更はドン引きしていた。

 

「何をやってるか!!パラライズ!!」

 

 魔力を感知して駆け込んできた担任、芦谷 陽子あしやようこの麻痺毒魔法により制圧される。

 

「「「あがががが」」」

 

「阿部真治に魔法がバレたらどうなる知らんわけじゃないだろな?」

 

 麻痺しながらも頷く3派閥のクラスメート達だった。

 

「あの親バカで最強マジックキラーの阿部 晴人あべはるとを敵にしたい奴なんていないわよ。魔法が使えない間は息子に魔法を隠し通せって実家も国も魔法協会も脅されてるんだからさ。なによ解除不能マリオネット魔法ってチートすぎるでしょ」

 

 水岡希更の言葉はクラスメート達の総意であり真実であった。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 妹のために早退して、ゆっくりと26才の女性の手作り弁当を堪能した俺は、バイトへ向かう。

 

 正直に言えばてんしちゃんは心配だし、家に一人残すのも心配だ。寂しい想いもさせてるだろう。

 

 本人は「えー友達とレインしたりネット小説読んだりしてるから平気、友達はお兄ちゃんの方がいないよね?レイン通知って全く来てないよね?」なんて言ってたけど、公式アカウントから通知くらいくるから。それにまだ主治医の先生から激しい運動の許可は下りてないくらいには回復してない。体育も出来ないしクラスに馴染めてるのだろうか?

 

 入院も長かったし友達とも本当に上手くいってるか心配だ。そしたら「えっ?部活してなくてバイトばっかりしてるのにお小遣いなくて、テレビも見ない上に学校の休み時間は寝てるお兄ちゃんよりは上手くいってるよ?」って重ねて俺の心を抉ってきたけど心配だ。

 

 情報源が担任の先生である母親だけに、見栄で嘘もつけない。即バレるし。もうライフが0だからバイトに行くのではない。それと悪い男には気を付けるように言ったら「んー大丈夫だよ。お兄ちゃんはフツ面だから分からないかもだけど、超絶カワイイからいくらでも何人でも貢いでくれるし」とか反撃された。確かにあだ名のてんしちゃんに負けない可憐さと病弱な儚さで超絶カワイイのは認めよう。

 

 でも貢ぐもなにも病院生活が長くて世間知らずなのだから、悪い男を知らないのだろう。飢えた狼からはやっぱりお兄ちゃんが守らないといけない。

 

 だから俺はいざという時のために少しでもバイトの給料を貯めているんだ。

 

 やってるバイトはファミレスの厨房アシスタントだ。皿洗いとも言う。

 

 毎日19時から3時間みっちり働く。頑張りが認められて少し時給が増えて仕事が楽しさを知った気がする。

 

「ふ~、今日もやりきった」

 

「助かってるよ、阿部ちゃんがいないと食器が山積みで片付かないんだから他の大学生のバイトは情けない」

 

 店長は中年男性でみんなちゃん付けする。全員子供みたいな存在だかららしい。毎日バイトといっても休みはもちろんある。忙しい祝祭日と週末は休まないけど、そこまでじゃない平日にシフトが外れてる。

 

「ほんとですか?平日は少な目だし楽だから申し訳ないくらいですよ」

 

「阿部ちゃんは暇なら調理まで手伝うじゃん。他のやつなんて皿洗いしながらくっちゃべってるし、仕事舐めてるって」

 

 この店長は相当優秀らしく、よく本部から賞を貰ってる。フレンドリーだけどよく見てるし、掃除や片付けはしっかりするし、仕事も早いのに丁寧だからほとんどエプロンが汚れない。社会人のお手本みたいな人だ。

 

「最近は仕事が楽しいですからね」

 

「イイネ。それが出来たら一人前だなぁ。店長変わってくれるか?俺は休みたい」

 

「無理ですって、まだ目標でいて下さいよ」

 

「こんな中年オヤジのなにがいいんだか、おっとそろそろ高校生には遅すぎる気をつけて帰れよ」

 

「あざっす、それじゃまた明日来ます」

 

「おう、また皿積んどくな、はよ帰れ」

 

 俺は店の裏口から帰路に着く。ちなみに店長が居なかった日も無ければ帰ってるところも出社してるところも見たことがない。

 

 このファミレスチェーンにだけは就職しないと思う。

 

「あれ?サボりの阿部じゃん。妹ほっぽって遊んでんの?」

 

 ヤバっ!!水岡希更がいる。

 

「学校には秘密だけどバイトかな。えっとこれあげるから黙っててくれない?」

 

 店長がこっそりくれた賞味期限間近のパヘェのイチゴパックを差し出す。

 

「ありがと、まっ私もバイトくらいしてるし言われなくても黙ってるって」

 

「そうなんだ、どうしてもバレたくないから口止め料って事でよろしく」

 

「別にバレても違うとこでバイトしたらいいじゃん」

 

「えっとさ、妹が大きな手術してて、まだ手術代の借金もあるしさ、完治もしてなくてそれで少しでもバイト代貯めてるから困るかなぁ。なんて」

 

「えっ!!そうなんだ。あんた大変なんだ・・・あっそうだ。私の年の離れた従姉妹が事故死したんだよ。コンクリート塀に原付きで体当たりしてそれでえっと」

 

 少し沈黙したあと続ける。

 

「だからとにかく辛いのはあんただけじゃないから!!」

 

 なんだろう怒ってる?なるべく当たり障りないこと言うかな。

 

「ご愁傷様でした」

 

「ああ、もう。そうじゃないから!!」

 

 あれ?間違えたらしい。正解教えてくれないかな?

 

「ごめん」

 

「なんであんたが謝るのよ!あーもう、ムカつくわね」

 

 更に怒らせてしまった。どうしようてんしちゃん以外と女の子と話したこと少ないから困る。

 

「なんかごめん」

 

「もー謝るな!!それより帰りは?自転車?」

 

「自転車持ってないし歩き」

 

「けっこう遠いでしょ!なんで歩きなの!?バッカじゃない」

 

「通学で使えないし高いしいらないかなって」

 

「どんだけ貧乏くさいの?ええい、もう送ったげるから感謝しなさい」

 

「どうやって?ニケツはちょっとやかな」

 

 女の子の自転車の後ろに乗るのはくっつき過ぎて緊張するし無理かも。

 

「なに?私とニケツは嫌なの?」

 

「嫌じゃないんだけど無理かななんて、思ったり」

 

「ああ!!ほんとにわがままね!!ニケツはしなくて大丈夫!親と車でファミレスでご飯食べてたから車なの!感謝して乗りなさいよ」

 

「勝手に決めて大丈夫?」

 

 なんか怒ってるしやばくない?断った方がいいのかな?

 

「素直に感謝して乗ればいいでしょ!?バッカじゃないの?」

 

 俺って馬鹿なの?常識はあるつもりだよ?

 

「うん、まぁじゃありがとう」

 

「ふん、最初からそうすればいいの、ほらこっちよ」

 

 白いミニバンに案内される。

 

「初めて軽とトラックとバス以外の車に乗るかも」

 

「あっ、えっとそのなによ。初めては嬉しいでしょ?」

 

「そんな事を女の子が好きでもない男の子に言うもんじゃないと思うよ」

 

 なんかエロい事を高校二年生は想像しそうだよ?みたいな?

 

「はー!?なに言ってんの?ヘンタイ死ね死んでしまえ」

 

「えっ俺悪くなくない?」

 

「あーもう!!あんたが悪いに決まってるでしょ!!分かりなさいよ」

 

 んー、ギャルは分からないなー。でも俺が悪いらしい。

 

「なんかごめん」

 

「もう早く乗りなさいよ。帰りたいの!!」

 

 スライドドアから乗り込むと親御さんともう一人男の人がいる。お兄さんかな?

 

「失礼します。隣の阿部です。水岡さんから一緒に帰ろうと誘われたのですが、大丈夫ですか?」

 

「ああ、お隣の真治くんか。もう遅いし乗っていきなさい」

 

「あらら希更の彼氏はお隣さん?」

 

「お母さん!違うから!ただのクラスメートだから!!」

 

「きーちゃん怒るな、怒るなカルシウム不足じゃないの?」

 

「きーちゃん言うなし!カルシウム不足になったら骨粗鬆症で骨折しまくるから!」

 

 素朴な疑問だし聞いてみよう。

 

「水岡さんって怒り易い人なの?」

 

「違う!アンタのせいよ!!」

 

「ほら怒ってる」

 

「うがー!!あんたが怒らせてるの!!なんで肝心な事だけ分からないわけ?」

 

「きーちゃんはこんなんだけど本当は優しい娘なんだよ」

 

「お兄ちゃん!?きーちゃんってクラスメートの前で呼ばないで!!あと何とも思ってないから!!」

 

「えっ、俺ってクラスメートでお隣なのに全く興味ないの?」

 

「あーなんでそうなるのよ!?バッカじゃない!分かれよバカ」

 

「えー、やっぱり俺悪くないよね?後付き合ってないよ?」

 

「別れようじゃない!!分かれよ!!って言ったの!!なんなんその聞き間違いは!!ケンカ売ってる?」

 

「ケンカしたことないから勝てないって、ボコられてたら妹が心配するし」

 

「あーも!!男なんだから見栄張りなさいよ!ってそうじゃなくて、聞き間違うな」

 

「あっそっかごめん。水岡さんて面白い人だったんだね。知らなかったや」

 

「きー!!おかしいのはあんただから!!勝手に変人扱いしないで!!」

 

「あっ!そっか怒り易い人なのか」

 

「もうそれでいいわ。疲れたし」

 

「疲れたらレ○ドブル良いよ。まだ頑張れるようになるからさ」

 

「あんたねぇ、それ解決どころか身体に悪いから辞めなさい」

 

「そうなん?でも宿題終わらせるにはないと寝ちゃうし」

 

「はぁ、しかたないわね。今日はちゃんと寝なさいよ。明日の宿題は全部写したら余裕でしょ?」

 

「いいの?でもお礼に身体は無理だよ?妹ために置いときゃなきゃ」

 

「あんたの発言の方がヤバいエロさじゃない!!心配しなくても内臓なんて要求しないから。妹のドナーのためにも寝て元気な内臓にしなさい!!分かった!?」

 

「きーちゃんよく分かったな。これぞカップルの以心伝心?」

 

「バカ兄!きーちゃん言うなし!カップル違う!!」

 

「お金も借金してるしないよ?」

 

「聞いたから!覚えてるから!引っ張るな!なんで素直に感謝できないのよ!!!」

 

「怒られるから?あと親にやってないのバレたら困るし」

 

「あーもう!分かったわよ!私のせいにしていいからとにかく寝て学校に来い!命令だから以上!!着いたしとっと帰れ」

 

「本当だ車だと早いなぁ。乗せていただきありがとうございました。今後もよろしくお願いします」

 

「いいよ、楽しそうな娘も見れたしね」

 

「お父さん!?楽しくないからね!!」

 

「えっ迷惑かけてごめん」

 

「そうじゃないから!!なんで空気読めないの?バカなの?バカなのね?寝不足なん?死ね!死ぬほど寝ろバカ」

 

「死ぬほどは寝たくないけど多めに寝るよ。おやすみなさい」

 

「ふん、知らない」

 

 俺は家に入って親父が居たのでハッスル前に寝る事にする。ハッスル始めたら気になって寝られないのが高校二年生だから。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 水岡邸では希更が彼氏を連れてきた、いじられるのではなく懇願されていた。

 

「なぁ、お前が誰を好きになっても止めないつもりだが阿部だけはだめだ」

 

「お父さん!好きじゃないから大丈夫!」 

 

「最強マジックキラーの姻族なんて嫌よ」

 

「お母さんまで!?結婚なんてそもそも考えてもないから!!」

 

「すまん。きーちゃん、俺は絶縁させてくれよ。結婚式もう葬式も呼ばないでくれ」

 

「ちょっと!?バカ兄!!カップル違うから結婚しないから!」

 

「「「だって仲良かったし、ツッコミも完璧だったし、以心伝心だったし」」」

 

「違う!!私は普通のお隣さんでクラスメートとしか思ってないから!!」

 

「「「今はね」」」

 

「今日は最悪。もう寝る!!」

 

 こうして水岡希更は自室に籠もった。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 深夜の阿部邸

 

 芦谷陽子、いや阿部陽子は夫の阿部晴人に昼間のこともあり相談する。

 

「あなた、真治に魔法の存在を教えなくていいの?」

 

「ああ、知らないほうが良いこともある。魔法使いなんて数万人に一人なんだ。日本にだって一万人も居ないんだぞ。ほとんどの魔法使いはコミュニティで固まってるし、出会う確率は普通な人間として生きれば低い。第一魔法が使えなくて劣等感を持ってほしくない」

 

「そうは言っても家族が魔法使いなのよ?」

 

「だからだ。魔法なんて完全に遺伝なんだぞ。今や生まれ時に国に把握される時代だ。そして使えないと判定されたのなら万に一つも可能性はない。普通の人として生きるべきだ」

 

「それでも阿部だから0ではないと魔法クラスに集められてる。確かに身の回りに魔法がありふれてて使えないのは悩むだろうけど、あなたの例があるじゃない?」

 

「それこそ億に一人いるかどうかくらいの確率だろう?もう俺がいる時点で二人目はないさ。あんな底辺で屈辱的な学生時代を送ることはない。魔法なんて無くたって困りはしない科学の時代になったんだ。もう魔法は過去の遺物さ」

 

「そう、分かった。これからも真治を守る」

 

「ありがとうな」

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 翌朝、久しぶりにぐっすり寝たし今日は歩いても遅刻しない時間に起き出し学校に向う。それでも予鈴の5分前に教室到着だけど。

 

 教室に入るとクラスの雰囲気が違う。ツカツカと水岡希更が荷物を整理してる俺のところにやってくる。

 

「阿部真治!あんたの妹のお義姉さんになるから!困ったら言いなさい。ほら宿題今出てるやつ全部あるから泣いて喜びなさいよ!」

 

「ありがとう。でも俳優じゃないし泣けないけど許して、てんしちゃん入院してたり体育出来なかったりするからお姉ちゃんが増えたら喜ぶと思うな」

 

「なんなのよ!なんで微妙に伝わらないのよ!!あんた空気読みなさいよ!バカは死んでしまえ!!」

 

「それはいい。いつでも我らお兄ちゃんになり隊は阿部真治を亡き者にする協力をフデブッ」

 

「熊尾龍太は熊の尻尾か龍の尾でも踏んで殺されてしまえ!」

 

 水岡希更が熊尾龍太を殴り飛ばす。今1メートルくらいパンチで飛ばなかった!?昨日ケンカしなくて良かったぁ。

 

「チッ周りから固めるとは小賢しい昨日は参加しなかった癖に、お友達になって百合百合し隊は水岡希更を排除します」

 

 えっ長谷友梨佳さんってそんなキャラなの!?

 

「どいつもこいつもバッカじゃないの!!廊下に放り出すわよ!」


 長谷友梨佳さんを廊下で締める水岡希更さん。

 

「なぁ阿部よ、俺達友達だろ?てんしちゃんを俺達に紹介してくれね?彼氏になり隊んだよ」

 

 虎井遥輝が馴れ馴れしく彼氏になりたいと言ってる。カワイイ妹は金持ちじゃないと交際も認めんよ。

 

「それはちょっと聞いてみないと」

 

「てりゃー!!なによ『俺達って』複数系とかキモい死んでしまえ!!あと邪魔するな!さり気なく彼氏になり隊って言ってる!キモい死ね!昨日死ね!」

 

 どうやら長谷さんを廊下で締めたらしい水岡さんが帰ってくると虎井遥輝をドロップキックで排除する。なんだか頼もしいお姉ちゃんになってくれそうだなぁ。

 

「妹のために怒ってくれてありがとう」

 

「そうだけど、いい加減あんたも気付け!!」

 

「なにを?俺常識には自信あるし、あっカルシウム足りてない?それとも女の子の日?」

 

「カルシウム不足なら骨粗鬆症で骨ボロボロ状態だからね!!あとそれはセクハラ!ちゃんと安全日です!!」

 

「水岡さんに、そこまでは聞いてないみたいな、あははは」

 

 水岡さんがどんどん赤くなる。

 

「ええいやけよ!希更よ、キ・サ・ラ!!あんたのこと真治って呼ぶから希更って呼びなさい」

 

「えっ恥ずかしいし、告白もしてないし」

 

「あーも!!お義姉ちゃんになりたいって言ったでしょ!!」

 

「それなら付き合ってなくても良いのかなぁ?」

 

「我は不死身なり!!お姉ちゃんなど不要!!お兄ちゃんである我らのみで十分だ!!」

 

「てめーらは血も繋がってないし家族には成れんだろうが!!」

 

 水岡さんが復活した熊尾龍太にハイキックを打ち込む。

 そんなところに足上げたら熊尾龍太にパンツ見えるよ?あと水岡さんも血も繋がってないし家族には成れないよね?恐いから言わないけど。

 

 こうして僕のクラスは、お姉ちゃんになり隊と、彼氏になり隊と、お友達になって百合百合する隊と、お兄ちゃんはなり隊の派閥が四つ巴の争いに発展したのだった。

 

 僕のクラスは変なやつばかりらしい。どうしてこうなった!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る