第6話彼女の意外な一言は?

「柔らかい」


その言葉を最後に祐介はまた気を失った。


思わずその言葉が漏れた。

初めてのようなどこか懐かしいようなその感触。

柔らかいのに反発力はあり沈む指を返してくる。

何度も触っていたくなるような癖になるようなそんな感触だった。

by祐介


目を覚ますとそこは保健室の天井が広がっていた。

何かを掴んだその手にはかすかにあの時の感触は残っていたが掴んだものはその手にはなかった。

祐介は起き上がり名残惜しそうに手を閉じたり広げたりしてみる。

そこには何もないのに。

その様子を静かに横で座りながら顔を赤く染め、もじもじしながら見ている彼女がひとりいた。


「どぅわ!!」


起き上がってから一切気付かなかった祐介は気づき思わず大声を上げた。


「あ、えっと、その、お、落ちついて、わっ!!」


大声を上げた祐介に驚き立ち上がった彼女も勢いよく立ち上がったせいでバランスを崩して祐介の上に倒れ込んだ。


2人はベッドの上でバッテン×の形になる様に横になった。


「ちょっと、どうしたのそんな大声を出して。」


祐介の声を聴いた保健室の先生がベッドのカーテンを開けるとそこには二人はすでに重なった状態だった。

祐介もカーテンが開いたのが分かり先生と目が合う。


「ご、ごめんなさい。でもあまり大声は出さないようにね。」


そう言って先生はゆっくりカーテンを閉じ始めた。


「違う、誤解だ!!それに、あんたは注意する側だろー!!!」


祐介はとりあえず先生の誤解を解き倒れた女性と二人で話し始めた。


「えーと、初めまして俺は狩野祐介よろしく。君は?」


祐介が彼女の名前を聞くと彼女はまた頬を赤くし、もじもじしていた。

彼女の服装を見る限り同じ学生であることはわかる。

そして、恐らく暗い子なんだろう。

目元まで前髪が下りていてあまり顔が見れないで、もじもじしているせいか体は小さいように見えた。体つきは普通の女子高生と何ら変わらない肉付きであったが胸だけは他の物よりも大きく成長していた。


「あ、その、ご、ごめんなさい。」


そう彼女はいきなり祐介に謝った。

何故誤ったのか祐介は尋ねた。


「あ、あなたがこ、ここで寝てるのは、その、わ、私のせい、なんです。」


どういうことなのか彼女に尋ねると


「柔らかい」


そう一言祐介が言った瞬間祐介は左頬をビンタされ頭が横に動き下駄箱に頭をぶつけ気絶したそうだ。

そのビンタをしたのが彼女だというのが分かった。

でも、なぜビンタをしたのか聞くと彼女は答えてくれなかった。

彼女は祐介と話しているときチラチラと祐介の手を見ていた。


「あ、あの。放課後、こ、ここに来てください。」


そう言って彼女は1枚の紙を渡して保健室を出ていった。

紙には学校の地図が書かれていた。

彼女が出ていくと保健室の先生がまたやってきた。


「まったく、1日にそれにこんなに早く2回も保健室のベッドに寝たのはあなたが初めてよ。クラスとか今日配られたものは横のあなたのカバンの中にあるから後で目を通しておいてね。それに今度はだいぶ長く寝てたわね。」


先生がそう言うのも無理はない外を見ると太陽は傾き空はオレンジ色に染まっていた。


「あなたの保護者に電話したんだけどね、誰も電話に出なかったのよ。あなたの家庭にとやかく言うのどうかと思うけどあなた、家庭内暴力とかそういうのは大丈夫?」


先生は心配した様子で聞いてきた。


「いえ、母も仕事で忙しく、父はよく家にいないので俺なら問題ないのでこのことは内緒にお願いします。」


祐介はどこか意味ありげな顔しながらそう答えた。

さすがに先生もこれ以上の詮索はしなかった。


「そう、あなたがそう言うなら分かったわ。何かあったら何でも言うのよ。ため込むのが一番悪いんだからね。」


「はい、分かりました。失礼します。」


そう言って祐介は荷物を持ち保健室を後にした。

祐介がいなくなった保健室で先生は机に飾ってある写真を悲しげな顔で観ていた。



祐介はもじもじしていた彼女にもらった地図を見て指定されたところに向かった。

向かう道中次々に下校していく人たちとすれ違った。

進むにつれ明かりも少なくなり人もほとんどいなくななって行った。

そして、指定された場所へとたどり着いた。

そこは、外から見れば一見普通の扉なのだが祐介は扉の向こうから何か得体のしれない何かを感じていた。

恐る恐るドアをノックしてみる。


「失礼しまーす。」


部屋の中から返事はなく扉を開けるとどうやら部屋の中は暗く明かりは点いていなかった。

せめての明かりとして扉を開けたまま部屋の中へと入っていく。


「あの人はほんとにいるのかな?」


明かりがない部屋の中を祐介はどんどん奥へと進んでいくと祐介は触れてもいないのに突然扉が閉まった。


「はぁ!なんでドアが閉まるんだよ!!」


扉が閉まったことで部屋は暗闇に包まれ一寸先は闇その言葉のままとなった。

両腕を前に出しながら扉を探してみる。

足元も見れないので歩幅はなるべく小さくしながら。


むにゅ


扉を探しているとまたあの感触の物が手に触れた。

今度は前回とは違く気絶することはなかった。

その正体を知るべく今度は両手でそれを触ってみる。

触っているとそれと同じものが近くにもう一つ隣にあった。

祐介はいくら触ってもそれが何かわかることはなかった。


「やっぱり、あなたがいい。」


触っていると触っている方向から保健室で聞いた彼女の声が聞こえた。


「その声は、」


祐介がそう言うと部屋の明かりがいきなり点いた。

急な光に目がくらんだ。

その時誰かが祐介の肩をポンと後ろに押した。

祐介はバランスを崩しその場でしりもちをつく。


「うわぁ! な、なんだよいきなり。」


祐介は立ち上がろうとするがそれは叶わなかった。

何故なら祐介の脚の上に誰かが座り込んだからだ。

ようやく光に目が慣れ前を見ると保健室で観た彼女が祐介の上に座っていた。

彼女は保健室で観た時とはどこか印象が違くどこか妖しげというか妖美というか

そして彼女は少し息を荒げていた。


「あなたは、保健室の。いったいこれはどういうつもりなんですか。そこどいてくださいよ。」


状況がいきなりすぎて理解できない祐介が彼女に答えを求める。

そして彼女の口から出た答えは以外の物だった。


「わ、私のご主人様になってください♥!!」


「は?」




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