第1話謎の少女の近くには?

「さて、ミカエルの頼みだできる限りのことはしてやらんとな。」




一段落した王がミカエルの願いを叶えるべく動いた。


だがしかし、




「それにしてもどうしたものか。」




王は願いを叶える方法で悩んでいた。


それは狩野祐介を生き返らせると一言でも行ってもただ生き返らせた後が問題なのだ。


生き返らせた祐介をそのまま地上に送れば死人が生き返ったという問題んが生じ


なら生き返らせた後過去に送ればその世界に2人の祐介が存在することになる。


もしそうなったら最悪の場合2人とも消滅という形になる。


消滅してしまえば人としての輪廻転生の輪から外され永久に消えてしまう。


未来にも現在にもそして過去にも生き返らせることができない。


それを王は悩んでいた。


王が悩んでいると何者かがヒールで階段を下りてくる音が聞こえてきた。




「なんだ、今忙しいのだ。ヘルメスよ。」




「そんな冷たいこと言わないでくださいよ、お父様。人をよみがえらせるんでしょ?それなら、僕に一声かけてくれてもいいじゃないですか。」




ヘルメスは片手にワインが入ったグラスを持ちながら優雅に姿を見せた。


ヘルメスは王に仕える内の一人である。


そして、彼は人の蘇生や魂の案内役としての役割を任されている。




「あの人間を生き返らせ、そこにミカエルも行かせればよろしいのでしょ?それなら後は僕に任せて上にいる民たちにミカエルがいなくなったことの報告でもしてきてください。」




ヘルメスは王に変わりミカエルと祐介を生き返らせようとしていた。




「確かにそのようにしてくれるのならお前が適任やもしれないな。・・・なら、後は任せても構わぬか?」




「ええ、安心してお任せください。」




こうしてヘルメスは王に変わりミカエルと祐介を生き返らせることになった。


しかし、王は一つ心配していた。


ヘルメスはいたずら好きとして知らぬ者はいないほどだったからだ。




「さーてと、後は僕の思うがままだ。」








「祐介ー。早く起きないと遅刻するわよー。」




下の階から母親がまだ寝ている祐介を呼んでいた。




「わかったよ~。」




親に起こされる前から祐介はすでに起きて身支度を整え終わっていた。


彼は今日という日を楽しみにしていたからだ。


それは、高校生初日だからだ。




今日からいよいよ俺の高校時代幕の開けだ。


中学ではあんなことがあり地元から遠く離れた高校だ、初めて見る人たちだらけでもうまくやってやる。




祐介は用意されていたごはんを食べ、忘れ物がないか確認し、最後に髪型と服を整え家の扉をくぐり出た。




「周りに人は・・・よし、いないな。」




祐介は、家の周りに人がいない事を確認して走り出した。


登校までにはまだ十分に時間があるのにも関わらず走って登校した。


祐介は走りながらふと不思議に思っていた。




「なんか、似たようなことが前にもあったような。・・・そんなわけないない、アニメの見過ぎだな。


そして、観にくい角に通りかかり曲がると、走っていた祐介は思わず足を止めた。


「え゛・・・」


そして絶句した。


道端に小さな段ボールが置かれていた。


そこまではまだよかった。


そこまでは。


段ボールには腰を座らせるだけで脚は外に出ており体育座りのかたちで座っている女性がいた。


見た感じは同い年くらいだろうか服は黒く汚れていた。


彼女の前を通る人は彼女を見るも声をかけることはなくその場を通り過ぎ去って行った。


祐介は恐る恐るも彼女に近づき声をかけた。




「あのー、どうしてそこにいるんですか?」




彼女の顔は無表情でこちらが近づいても気が付かないようだった。


祐介は彼女の目線に合わせるようにしゃがみ話しかけた。


なるべく笑顔で。




「家がないから。」




彼女は淡白に答えた。


よく見ると彼女の目はこちらを見ないでただ反対側の塀を見ていた。


次の言葉に困っていると彼女の腹の近くで何かが動いた。


それは腹と脚の間にいる小さな猫が一匹くるまりながら寝ていた。




「かわいい猫だね。」




そう言いながら祐介が猫に触ろうとすると


 パシッ!


祐介の手は彼女に弾かれた。




「触らないで。早くここから消えて。」




表情は変わっていなかったがその声からは確かに怒りの感情が感じられた。




「ご、ごめん。ただ撫でようとしただけで。」




彼女の顔を見ると彼女はこちらジッと見ていた。


初めてその目を見てみるとその目は綺麗な青い目だったがその目には生気を感じなかった。


ゴクリ


祐介はその時悪寒を感じ一歩その場から下がり生唾を飲み込んだ。




「じゃあ、もう行くね。」




そう言って祐介は足早にその場を後にした。


次の角を曲がるときにもう一度彼女を横目で見るが彼女はまた塀を見ていた。


そうして、祐介は再び学校に進路を向けた。


学校に近づくと同じ制服の人が増え始めた。


歩いて登校しているものもいれば自転車での登校をしているものもいた。


1人でいる者、複数でいる者他にもいろんな形での登校をしているものがいた。


そしてここに一人門の目の前で仁王立ちをしている学生がいた。




「今日から卒業までよろしくお願いします!!!」




突然大声で叫び校舎に深々と挨拶をしたのは祐介


ではなく、大轟響だいごうひびきという一人の学生だった。


他に登校するものは驚愕する者、静かに笑う者、耳障りだなと思う者がいた。




一方祐介は




まだ、学校に辿り着けないでいた。


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