ろくに魔法が仕えない魔王はありですか?

@koyo0727

第1話 転生しました!

「んんっ……」




 目が覚めると俺の目線には今まで見たことのない人物がいた。


人物という言い方が正しいのかは分からない。


角は生えてるわ、体は大きすぎるわ、肌の色はおかしいわ、人間ではないことは明らかだった。


言うなれば化け物がいたのだ。


俺はそんな化け物に抱きかかえられていた。




 でもなんで俺は抱きかかえられているんだろうと思った。


しわしわでむちむちした小さな手。


あまりにも小さな体。


嫌でも分かってしまった、俺は今赤子なのだと。




 俺は部活が終わって家に帰っていたはずだが。


そうだ、あの大きいトラックに轢かれたんだ!


街中でよく見る引っ越し会社のトラックに!




 なるほど、理解した。


これは【異世界転生】ってやつだ。




(ひゃっほーい!!!!!!)


 あ、声が出ないんだった。


俺が嬉しそうな顔をしたせいで化け物が頭を撫でてきた。


非常に不愉快だ。


まあいい、今の俺は超機嫌がいいからな。




 だって【異世界転生】だぞ!


誰だって夢に見ることが実現しているのだから調子に乗ってしまうのもしょうがないだろう。




 でも喜びの気持ちと同じくらい恐怖も感じていた。


俺自身は化け物に抱きかかえられている上にその化け物の周りにはこれはまた屈強そうな見た目のやつらがいた。


男だけではない、女もいた。


この部屋に漂うオーラは凄いことになっていた。




 ただ、冷静に考えてみる。


この状況、おそらく俺はこの化け物の子供なのだろう。


見た目が化け物とはいえ非常に優しい眼差しを俺に向けている。


化け物の隣にいる女性も非常に優しい目をしていた。


化け物の奥さんだろうか?




 俺はこの二人から生まれた子供ということか。


化け物の子供ということは俺もこんな恐ろしい見た目になってしまうのだろうか。


前世では結構見た目には自信がある方だったんだ!


それだけはやめてくれ!




 そんなくだらないことを考えているうちに部屋から化け物の部下と思われるやつらは去っていった。


残されたのは俺と化け物と化け物の奥さんと思われる女性だけだった。




 俺を抱きかかえていた化け物は急に立ち上がり、ゆっくりと俺をベッドに乗せた。


ベッドといってもそんな大層なものではなく赤子用の小さなものだが。


二人は互いの目を見て微笑むと俺のところまで来るとこう言った。




「おやすみ、私たちのアルベル」




 これだけ言うと二人はもう一度俺を見て微笑み、部屋から去っていった。




 あんな優しい表情をするとは思わなかった。


というか俺の名前アルベルっていうのね。


俺があの二人の子供であることは確定したわけだし、化け物などと呼ぶのは失礼だろう。


父さんと母さんと呼ぶことにしよう。




 ひとまずよかった、危ない人たちではなくて。


父さんは確かに見た目は恐ろしいが、俺に向けたあの優しい目は信用できる。


母さんは見た目がなんだかほんわかしている上に、父さんと同じく目も優しかった。




 目というのは人をそのままに表すといっても過言ではない。


前世に嫌というほど学んだのだ。




 良い両親を持つことができたのは本当に良かった。


そんなことを考え、これからの生活にわくわくしているうちに俺は眠ってしまった。

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