(三)-8
一ヶ月後、私は長和駅から汽車に乗り、長万部駅で乗り継いで、函館駅に降り立っていた。
汽車を降りた人の半分はこの駅の改札をそのまま抜けていった。残りの半分の人は、湾曲したホームに沿って歩いていった。私は残り半分の人と同じ方向ヘ歩いて言った。
その途中、天井から「青函連絡船 乗船口」と書かれた青い看板がぶら下がっていた。
私は鞄を抱えてその看板の下を通り抜けて歩いて行った。そして、ホームの先に停泊していた船の乗船口へと向かった。
乗船口の建物からは、船の甲板へと橋が架けられていた。煙突にはJNRというアルファベットが斜めにあしらわれ、船体の横には大きく「十和田丸」と書かれていた。それらを見上げながら、私は乗船橋を渡った。
船に足を踏み入れると、地上とは違い、わずかに揺れていた。
船の揺れは、彼が今どうしているのか、本当に無事なのかという不安をさらに大きくするかのようだった。
(続く)
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