52.ドワーフの国


 もう一人の王……その言葉に俺はドゥエルの王城にて、見ていた彫刻の数々を見て悟った。



「ドワーフの王に合わせてもらえるってことだろ?」

「さすがはグレイス様ですね。お話が早くて助かります。今頃師匠は王との謁見の約束を取り付けてくれて取り付けてくれているはずです。ついてきてもらえますか?」

「ああ、わかった。準備をしたらすぐに行くよ」



 ヴィグナに兵士たちの事を頼んで、俺とガラテアはアインに連れられて行く。しかし、ドワーフの城へ行くと言ってもかなり遠いよなぁ。

 山頂にある城を見上げながらそんなこと思っていると、アインは徐々に人通りの少ない郊外へと向かい山をくりぬいて作られた坑道へと入っていく。人間は立ち入り禁止って看板があるんだけど、大丈夫だろうか?



「ここもすっかりさびれてしまいましたね……昔はよく人とドワーフが行きかっていたんですよ」

「ああ、でも、俺たちはどこに向かっているんだ?」

「おや……あれは……簡易的ですが……なるほど……ドワーフたちが作り出したのですね。素晴らしいです」



 俺が困惑気味に訊ねると、岩をくりぬいたところに不思議な四角い箱のようなものが並んでおり、それをドワーフたちが見張っているようだ。そして、ガラテアはあれがなんだかわかるらしい。

 ドワーフたちは俺を見て、にらみつけるように見て、ガラテアを見て興味深そうに見て、アインを見て……驚愕に染めると、いきなりこちらへとやってきた。



「久しぶりですね、皆さん。元気で……」

「ああ、アイン様じゃないか!! 元気じゃったかのう? それにしてもギムリ様のひげを引っ張って遊んでおったあの小さい子がこんなに元気になって……」

「隣の人はアイン様の良い人かのう? 隣のは……なんと高性能なゴーレムじゃ!! 素材も気になるのう、なめていいかのう?」

「ちょっといつの話をしているんですか!! この方はえらい方なのであまり私の恥ずかしい話をしないでください」

「いいわけないですよ。マスター……反撃の許可を!!」



 テンション高めにやってくる二人のドワーフに女性陣が反論をする。俺にはまじで興味なさそうである。てか、こいつら酔っぱらってやがるな。酒の匂いがするし、酒瓶が転がっている。



「もう、二人とも落ち着いてください。私たちはしばらくはいますから話はあとでしましょう。あとガラテアさん、そっちのドワーフは軽くたたいても大丈夫ですよ、彼らは頑丈ですから」

「いや、国際問題になるだろ!! 俺たちはこれからドワーフの王と交渉に行くんだから」

「我が王と……」

「交渉……?」



 俺の言葉でドワーフたちの様子が変わる。さきほどまでのお茶らけたようすが嘘のようにピンとした感じで敬礼をする。



「ギムリ様から話は聞いておるぞ!! なんと鉱山アリと戦うために援軍に来てくれた異国の方じゃな」

「この前戻ってきたあいつが連れてきた魔法使いといい、異国の人間は優秀な人ばかりじゃのう」



 すっかり歓迎ムードになった二人を見て、俺は眉をひそめた。異国の魔法使い? いったい誰だ? カイルならともかく、ゲオルグのくそ兄貴の配下には魔法使いは少ないと思うが……



「では、エレベーターに乗っていきましょうか。安全運転でお願いしますよ」

「エレベーター。うふふ、名称も同じなのですね」


 

 アインの『エレベーター』という単語にガラテアが不思議そうな顔をする。なんでここにあるんだといった感じである。

 というかエレベーターってなんだろうか? 俺が疑問に思い触れるといつものように世界図書館が答えてくれる

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エレベーター


 滑車を使い、人や荷物を載せて垂直または斜め、水平に移動させる装置である

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 え? この箱動くの? まじで……? 俺が困惑しながらも四角い箱に入ると、ガチャンという音と共に、扉が閉じる。



「じゃあ、いくぞい」

「久々じゃな。本気でやるぞい」

「は?」



 その言葉と共にドワーフたちが、金属の棒のようなものを上下に動かし始めると、すさまじい勢いで鉄の箱が浮かんでいくのだった。




「うげぇぇ、気持ち悪いよぉぉぉぉ」

「大丈夫ですか、マスター」

「すいません……なるべく抑えるようにいったのですが、はりきってしまって……」



 すさまじい浮遊感に気持ち悪くなったのは俺だけのようだ。おでこに当たるガラテアの冷たい感触が何とも気持ちいい。



「マスターから安心感を感知しました。うふふ、なんだからたよられて感じがしてうれしいですね」



 そうして、俺たちはアインについていき王の間へと向かっている時だった。なぜかメイド服を着ているドワーフと隻腕の人間の男が先を歩いている。この後ろ姿どこかで見たことあるような……



「ほらほらー、早く来いー。お前と同じ人間もくるらしいぞーよかったなー」

「別に僕はいなくてもいいと思うんだけどなぁ……」

「カイルなのか……?」

「え?」


 

 俺の言葉に男が振り返り、そして息をのんだのが分かった。その男は仮面をしていたが、仮面越しでもわかる。こいつはカイルだ。なんでこいつがこんなところに……

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