第12話

「さて、それでは、二つの事件の具体的なことを教えてください。パパっと解決して、泥棒捜しを手伝ってもらいますからね」


「あの、お言葉ですが、その泥棒捜しをその優れた頭脳でパパっと解決するわけにはいかなかったのですか?」


「それがですねぇ、私の頭脳が導き出した結果、泥棒捜しは人海戦術が一番だと判断したのです。ということで、人手がいるんですよ。だから、早くその二つの事件を解決しましょう」


「ええ、わかりました。これが、事件の資料です。まずはこちら、窃盗の方です。被害に遭ったのは町にある雑貨屋なのですが、昨夜、何者かが侵入し、店の物をいくらか盗んだようです。その際、店の物を床に落として破損もさせています」


 私たちは椅子に座って、レナードさんがテーブルに並べた写真や報告書を眺めていた。


「ああ、この店、けっこう有名ですよね。私は行ったことありませんけれど。……なるほど、裏口のドアの窓が割られていたのですか」


「ええ、犯人はここから侵入したのでしょうね。窓を割って、ドアのカギを開けてから侵入して、品物を盗んだ。犯行時刻は従業員が帰ったあと、つまり夜だったので、暗がりでの作業だったのです。だから、誤って品物を落としてしまった」


「なるほど。明かりを点けるわけにもいきませんからね。誰もいないはずのお店に明かりがついていたら、外にいる人が不審に思うから」


「ええ、そうです。怪しい者がいなかったか近くで聞き込みをしているのですが、昨夜は雨でしたので、外出している人も少なかったこともあり、目撃者は今のところ見つかっていません。雨の音のせいで、ドアの窓を割った音を聞いた人もいませんし、犯人は、なかなかの切れ者です」


「うーん、まあ、そうですね。裏口のドアの窓を割って侵入した、と憲兵の皆さんに思い込ませているのですから、そこそこ頭はいいようですね。まあ、私は騙されませんでしたけれど。あ、レナードさん、コーヒーを頂けますか?」


「な、なんですって!? 今、なんと言いました!?」


「え、コーヒーを頂けないかと聞いたのですが、あ、できればブラックでお願いします」


「うちは喫茶店じゃないんですよ! あ、いや、今はそんなことはどうでもいい。それよりも、その前にあなたが言ったことです。憲兵に、裏口のドアから侵入したと思い込ませたですって!? どう見ても、犯人の侵入口はここでしょう」


「まあまあ、落ち着いてください、レナードさん。その証拠もあるので、これからきちんと説明しますから。あぁ、でも、喋り過ぎて喉が渇きました」


「はあ……、わかりましたよ。ちょっと待っていてください」


 レナードさんが席を立った。

 推理を聞かせてくれる令嬢にコーヒーを淹れるためか、生意気な令嬢をつまみ出すために部下を呼びに行ったのか、いずれかだろう。

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