第9話 異世界2日目
う~ん…眩しい…
俺は朝日に照らされ目を覚ました。
空を見上げると、雲ひとつない快晴。
今日も良い1日になるといいな。
そんなことを考えながら、周囲を見ると土壁で囲まれており、昨日のことが夢ではなかったことを改めて実感した。
さて、今日はどうするか。
あてもなく彷徨うのをしょうがないが、どこか村や町なんかが見つかればいいのだが。
……というか人がいたとしても言葉は通じるのか?
まあ、今考えてもしょうがないし、村や町が見つかってから考えればいいか。
ひとまず、【デイリー召喚】しておくかな。
そう思い、俺は【女神の楽園】を立ち上げ、【デイリー召喚】の画面を表示した後、【1日1回無料】のアイコンをタップした。
すると目の前にひとつの魔法陣が描かれ、青い光を放出させた。
何度見ても幻想的だが、これは大丈夫か?
土壁があったせいなのか、魔法陣の半分だけが見える状態であり、もう半分は土壁の向こう側に続いている様子であった。
壁があっても関係ないのかな。
しかし、これで召喚されたアイテムが土壁のせいで半分に割れていたら嫌だな。
そんなことを考えていると光が収まり、目の前に包装紙に包まれている茶色っぽいパンが召喚された。
う~ん…これは黒パンかな。
土壁に埋まっていたり、半分になってなかっただけ良かったかもしれない。
一応、スマホ画面を確認すると案の定、
☆1【黒パン】
と表示されていた。
黒パンは固くて、食べづらいイメージがあるけど実際どうなんだ。
試しに黒パンをひとかじりしてみたところ「ガリッ」という音がした。
うわぁ…マジで固いわ…
表面がカチコチでかなり強く噛まなければ、食べられそうになかったことから、俺はそのうちスープ等に浸して食べようと思い黒パンを収納した。
黒パンの代わりに朝食として昨日採取したリンゴっぽい木の実もうリンゴでいいかを1個食べながら、とりあえず土魔法で土壁の一部に穴を開けて外に出た。
スマホを確認すると現在の時間は午前8時。
寝るのが早かったこともあり、疲れや魔法を使ったことによる倦怠感も無くなっている。
とりあえず今日も行けるところまで行ってみるか。
途中で道なんかが見つかればいいけど…
俺は気持ちを引き締め直し、草原を歩き出した。
…
…
…
2時間程、歩いただろうか。
こまめに休憩を取りながらもひたすら歩いた。
途中、昨日採取したのと同じリンゴがなっていたので、【創生】で簡易ながらも小型のリュックを創り出し、何個か採取しておいた。
道中、小鳥やネズミのような小動物を見かけたり、小さなアリのような虫を見つけたりしたが、いまだに魔物とは遭遇していない。
動物や虫は現実と変わらないんだな。
しかし、魔物は見かけないから、この辺は安全なところなのかな。
そんなことを考えたのがいけなかったのか、近くの草の茂みから「ガサッガサッ」と物音がした。
俺はナイフを取り出し、しゃがんで注意深く物音がした方を眺めていると、大型犬サイズの巨大なウサギが茂みから出てくるのが見えた。
でかっ!! 見た目は完全にウサギだけど大きすぎる。
あれは魔物か…
草食ならいいんだけど、ウサギって実は雑食だから襲ってくるか?
見とおしが良い場所だから、倒せるなら気付かれないうちに倒してしまいたいけど、でかいだけのウサギなら何とかなるかな…
ナイフでの接近戦は戦闘経験もないし、良さげなスキルも無くありえないから、ここは土魔法だな。
まずは逃げられないようにするのと、失敗したときすぐに襲われないように土壁で囲ってしまおう。
土壁が破られるようであれば逃げられるかわからないが全力で逃げるしかないな。
俺は早速魔力を込めて、一気に巨大ウサギの周囲を50cm程の厚さの土壁で囲んだ。
土壁を跳び越えられても嫌だったのでちゃんと天井もつけた。
巨大ウサギが土壁内で暴れているのか、土壁が時折揺れている。
しばらくは壊れなそうだな。
土壁の頑丈さに感心しつつも、巨大ウサギを倒すために今度は土壁の内側にいくつもの石の杭を突き出すイメージをして魔力を込めた。
技名を付けるなら中世にあったとされる拷問器具から名前をとって『アイアン・メイデン』ってところか。
すると土壁内から「ピギャー」という巨大ウサギの鳴き声が何度かしたが、数分すると鳴き声が聞こえなくなった。
これは倒したかな…
念のため、もう一度土壁内に石の杭を突き出したが鳴き声はしなかったので倒したと思う。
土壁の一部を戻して、土壁内の様子を窺うと、いくつもの石の杭に体を串刺しにされた巨大ウサギの姿があった。
うわ~… 自分でやっておいてなんだけどグロいな。
ウサギは全身血塗れでピクリとも動かず死んでいた。
倒したのはいいけど、この巨大ウサギはどうしようか…
毛皮が素材になったり、食べれるのかもしれないけど自分で解体は無理だな。
ゲームみたいに魔石みたいなものがあるのかもしれないが、現時点ではわからない。
血の臭いで他の魔物が近づかないように埋葬してしまおう。
俺は土魔法で大きめの穴を作り、巨大ウサギを埋めたのだった。
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