子猫のいる生活
菊花
子猫との出会い
第1話 捨て子猫
本日4話投稿予定19時・20時・21時・22時になります
読んでいただけて反応もらえると嬉しいです。
――――――――――――――――――――
とある郊外に向かう通勤電車。
週末の遅い時間だけあって車内には若いカップルや、飲んだ帰りなのか陽気なグループがいる。
私は仕事で疲れた体をドアにもたれ掛かっている。
『やっと終わった、これで明日からしばらくゆっくりできるかな。』
俺は知り合いの会社で繁忙期や人手が必要な時のみ仕事を受けている。
両親からの遺産と保険金で働かなくても生活出来る蓄えはある。
特に趣味と言えるほどのめり込める物がない、ただ何もしないのはだらけてしまう、かといって毎日仕事というのも嫌だった。
そこで知人の経営する会社で、人手がほしいときだけ契約社員として働いている。
それも年数回ほどで期間も1か月程度である。
今回は社員の産休と育休といった休みが重なり、さらにそこへ大口の依頼が入り人手が足りなくなったため手伝っていた。
「まもなく〇〇~、お降りの際は足元に・・・」
『着いた、今日は何食べるかな、さすがに今から作るのはきついから、食っていくかコンビニかな。』
自宅最寄りの駅に着き、背伸びをしながら改札をくぐり駅を出る。
駅前ロータリーは路線バスが終わっていて閑散としていた、同じ電車だったのであろう駅から出てきた人はタクシー乗り場か駅前の駐輪場に向かっている。
駅を出て歩く人の邪魔にならない場所で辺りを見回す、開いてるのは24時間営業の牛丼屋にラーメン屋。
「なんかこってりした物ばかりだな、さっぱりしたもの食べたい気分なんだよな、コンビニで買って家で食べるか。」
そうつぶやくとバイクを止めていた駐輪場に向かい歩く。
ヘルメットをかぶりバイクを押して出口で超過分の駐輪代を支払い、家の近くにあるコンビニまで走らせる。
コンビニで翌日の朝食用におにぎりとサンドウィッチ、それに晩飯を買った。
ガレージのシャッターを開けようと近づいたら、何かが置いてある事に気づき、近づくと段ボール箱が一つ置いてあった。
「なんだこれ?通販は頼んでなかったし、もしかして誰かがごみ捨ててったのか?」
シャッターを開けるのに邪魔だからどかそうと手を伸ばすと、何か聞こえてきた・・・
耳を澄ませて聞くと、猫の鳴き声のようだった、箱を開けると小さな猫が二匹、タオルにくるまれた状態で蹲っていた。
「誰だか知らないけど飼えないからってこんなとこに捨てるなよ、最後まで面倒見れないなら飼う資格無しだろが。」
状態からして育てられずに捨てたのだと思い、誰か知らないが捨てた奴に怒りが込み上げてきた。
とりあえず車庫にバイクを入れてシャッターを閉めると、コンビニ袋と一緒に猫の入った箱を持ち上げ玄関に向かう。
一度袋と箱を置いて玄関を開けると電気をつけて、袋と箱を家の中に運ぶ。
「こいつらどうすっか・・・、見たところタオルは新品ぽかったし、体も汚れた感じではないし、ケガしてる様子もない、さすがに蚤とかはいないよな。」
リビングに子猫の入った箱を置き、キッチンに向かい買ってきたおにぎりとサンドウィッチを冷蔵庫に入れ、レトルトご飯とおかずをレンジに入れてスイッチを入れる、そして水と買ってきたサラダを用意してリビングに戻る。
戻るとは子猫は箱の中で座ってこちらを見て小さく鳴いていた。
小鉢に水を入れて箱の中に入れると、水とこっちを見た後二匹で顔を寄せながら勢いよく飲み始めた。
「腹減ってるのか?」
「にゃー」
「みゃー」
「子猫が食えそうなものあったかな?」
キッチンの棚を漁ると鰹節があったので、探してる間に温め終わったご飯にまぶして2つの小鉢に入れて子猫の箱に入れる、入れたとたん勢いよく食べ始めた。
「腹減ってたんだな、そんながっついて食べなくても誰も取らないぞ。」
しばらく子猫が食べているのを見ていると、自分の腹が鳴った・・・
「俺も食うか。」
テーブルに着くと温めたおかずと残ったご飯を食べ始める。
食べながら子猫を見るとご飯を食べて満足したのか二匹寄り添って寝ていた。
「寝顔はかわいいな、うちに来たからにはお前らには幸せにしてやるからな、と言っても猫の幸せって何だろうな。」
食事が終わり、ごみを片付けるとネットで大手通販サイトの猫グッズを見ていた。
「今は猫用のアイテム色々あるんだな、おっ、これなんかよさそうだ、そうそうエサも買わないとな。」
気づけばサイトのカートには30品ほどのアイテムが入っていた。
「ついつい選び過ぎたか?でもまあいいか」
そのまま決済をして配達予定日を確認するとほとんどの商品は翌日には届くとなっていた。
「さすが最近の通販はすごいな、深夜の注文でも翌日に届けてくれるんだな。」
そうつぶやきながら『猫の飼い方』と検索して色々と調べていた。
一通り確認すると睡魔が襲ってきた、仕事して疲れていたことを忘れていた。
このままにすると起きた時さみしがるかと思い、子猫を起こさないようにそっと箱を持って寝室に向かう。
ベットのわきに箱を置き、着替えてベットに入ろうとしたが、そういえば風呂入ってない事に気づく、だが睡魔には勝てず『朝で良いか』と布団に入り目を閉じて睡魔に身をゆだねていく。
翌日、目が覚めると上半身が重い、『疲れが取れてないのかな、そんなに疲れてたのか?』と思いながら視線を下げていくと・・・
「お前ら誰?なんで俺のベットにいるの?ってかどうやって家に入ってきた?」
子供が二人俺の上で寝ていたのだ・・・
何が何だかわからなかったがとりあえず起きて二人の子供を起こすことにした。
起き上がると子供たちは起きたのかまだ眠そうに目をこすり始める。
「起きたか?」
「「おはよう」」
「おう、おはよう・・・、じゃなくてお前ら誰だ?」
「「だれ?」」
俺の質問に首を傾げて質問で返してきた。
『うっ、かわいい』
「じゃなくて、お前らは何者で、どうしてここにいるんだ?」
俺が再度質問すると二人は子猫が寝ていた箱を見つめる。
箱がどうした?と見ると寝ていたはずの子猫がいない。
「子猫はどこ行ったんだ?」
俺が呟いた言葉に二人はお互いの顔を見合うとお互いを指さす。
「「ここにいる」」
「は?」
さっぱり意味が分からなくて、それでいて寝起きという事もあり頭も動かなかった。
まだ寝ぼけているのかと思い、目を覚まそうと「顔洗って来るか・・・」そう呟いてトイレに行き洗面所で顔を洗って部屋に戻る。
部屋に入るとベットに二人の子供が座っていた。
夢かと思い自分の頬をつねってみると、痛みが来る。
「夢ではなさそうだ、という事は、この二人はあの子猫?・・・いやいやそんなことあってたまるか。」
改めてよく見ると二人は裸でいた。
「お前らとりあえず服着ろ、話はそれからだ。」
「「・・・?」」
俺の言葉に二人でまた首を傾げる。
部屋の中を見渡すが二人の服らしき物はどこにもない。
「お前らの服はどこだ?」
「「??」」
また首を傾げる。
仕方ないので俺のTシャツを二枚渡し着るように指示するも、手に持ったままどうしたらいいのかと困った顔をしていた。
俺はシャツを受け取ると二人に着せる、そこで普通の人間にはないであろう物に気づく。
「猫耳!!」
はっと気づき二人の後ろを見ると腰の辺りから尻尾が生えていた・・・
「耳と尻尾?」
もう何が何だか分からなくなり、そこで俺は思考停止した。
「飯食うか」
「「はい」」
そういうとキッチンに行き、冷蔵庫から昨日買っておいたおにぎりとサンドウィッチを出してコーヒーと水を用意する。
二人に鮭とおかかのおにぎりと水を渡し、俺はサンドウィッチを一口食べるとコーヒーを飲む。
「う~ん、コーヒー美味しいな」
完全に思考停止からの現実逃避していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます