第2477話 あなたが寝てる間に
Bくん(33)は駅のホームにいた
いつもの朝の通勤ルーティーンだ
だがどうやらホームを間違えたようで、路線図を見ると知らない駅ばかりだ
下の階に降りることにした
ところがこの駅、地下4階まであるらしく、ホームもかなりの数があるようだ
地下1階、2階、3階と巡るが、どうも見覚えがない
というかこの駅舎、まるで千と千尋の世界だ
古い、いつの時代かわからない造りになっていて
そこらじゅうで芸妓さんのような格好をした女性が踊っている
4階まで下り、踊る女性の1人に声を掛ける
「すみません、くにつえきに行くホームはどちらになりますか?」
「くにつえき?この階じゃないわ・・・あ、スサ持ってる?」
「スサ?」
「持ってないの?ちょっと駅員に聞いてみて。あっそーれそーれそーれ!!」
女性は踊りの輪に戻ってしまった
もう7時半・・・
いつもなら既に事務所に付いている時間だ
遅刻確定だ・・・
てか駅員なんて何処にいるんだ?
イライラしながら地下3階への階段を上ろうとしたところで
目が覚めた
なんだ夢か・・・
こんな夢に繋がるようなこと、何もなかったけどなぁ
Bくんは枕元の携帯を手に取り、「くにつえき」と検索してみる
小田原に国府津(こうづ)駅というのはあるが、くにつ駅はないみたいだ
そりゃそうだろう、夢なんだから。
ただ、くにつかみ(国津神)はいくつか出てきた
天照大神を中心とする天上界の神、天津神(あまつかみ)に対し
地上の神、国津神。
国津神で有名なのが、姉の天照大神から天上界を追放されたスサノオ
「あ〜スサノオなぁ・・・ん?スサ?」
「スサ」には、「荒れ狂う」とか「勢いで行う」などの意味があるらしい
"くにつ"と"スサ"には関連があるようだが、俺にはそんな古い神の知識など無い
どうしてそんな夢を見たんだろう?」
そもそも天津神・国津神の神話は天皇家の正当性を証明するために書かれた「古事記」による創作の色合いが濃いらしいし・・・
「・・・どう思います?何かの暗示でしょうか?Tさんそういうの詳しくないですか?」
カウンターで隣に座るBくんから聞かれた
「心当たりないの?全く?」
「無いんですよ〜。あの日はTさんとJさんに挟まれて飲んでたんですよね、このカウンターで。僕が早々に酔い潰れちゃって・・・タクシーまで乗せて戴いて、ご迷惑お掛けしました」
「その夜に見たんよな?その夢」
「そうですね、朝方・・・」
「ふーんそれは多分『あれこれ悩まないでまずは行動しなさい』ってことじゃないの?Bくん慎重派だから」
「あー、神様からの言葉が降りてきた感じ?」
「じゃないかぁ?良い夢見たやん笑」
同い年のJ社長と俺は、1人で飲みにきていたBくんを挟んで談笑していたのだが
Bくんが酔い潰れてしまったので、Bくん越しに、昔流行った「孔雀王」という漫画の話をしていた
1988年頃、一大ブームを巻き起こした孔雀王だったが
新しい章が始まり、天津神と国津神の闘いの中、主人公が国津神・スサノオの生まれ変わりだと判明したところで休載(打切り)。
「そこから興味が失せて読まなくなったわ」
「そうそう、数年後に再開したけど一気に失速したな」
・・・という雑談を寝ながら聞いていたとは(´皿`)
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