第2189話 どこでも谷やん

家から持ってきたのか2リットルのペットボトルの空を、空き缶入れに無理やり押し込もうとしている若いサラリーマンがいて


・・・なぜ突っ込めると思ったのかが疑問だが


当然入らないから、遂には空き缶入れのフタを外して捨てようとして、先に入っていたペットボトルの空がコロンコロンと数個落ちる


それを、通り掛かったおじさんに何をしてるのかと咎められ


「違います!違います!」手をブンブン振って否定している


「はぁ?」


「落ちてたのを拾って!捨てるところがなくて!」


「嘘言うな」


「本当です!」


そう言ってサラリーマンは両手を拡げておじさんを見つめるが


それは「ボク取ってません」だけどな


「そんなところに捨てないで片付けなさい」


と、突然サラリーマンがおじさんの脇を抜けて走りだす


「あっ?!このっ!」


ところが走り出したと同時に散らばっていたペットボトルを踏み、見事に転ける


「天罰覿面!ちゃんと片付けなさい!」


その後サラリーマンが片付けたかどうかまでは見なかったが・・・



「お前らも見られてないからって悪いことするなよ?特に谷やん」


谷「それは・・・ぶっつけ本番みたいなことすか」


「どの部分が」


「"てんばつてきめん"とかいう・・・」


「そんな意味やと思うか?」


「あ、やっつけ仕事すか?」


「話の前後考えてみろや。当てはまるか?やっつけ仕事なんて」


「・・・突貫工事?」


「お前それワザと言ってる?俺はもう、いちいち正さんからな」


「あっ?掘削埋め戻し・・・ではない・・・」


「建築現場の話なんかしてないやろ?そういえばお前このまえ、分室で爆笑されたらしいな」


持ち回りの港湾業務に嫌々通っている谷やんだが

https://kakuyomu.jp/works/16816927860625905616/episodes/16818093075815609770


先日も、ピリピリする案件しか掛かってこない分室の電話が鳴り


緊張の中、谷やんが受話器を取ったそうだ


「はい、港湾分室です」


『あー、おおやですけど』


「えっ?おおやさん・・・」


『あら?分室さんでしょ?』


おばさんの声にたじろぐ谷やん


「少々、お待ちください」


送話口を押さえながら隣に座るメンバーに振り向く


「あの、なぜか大家さんから掛かってきてるんですが・・・家賃の支払いとかですかね??」


港湾事務員の大矢さんだったそうだ

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