第1866話 トラ馬

蕎麦屋のレジでオッサンが


渡されたお釣りの10円玉を受け取り損ねてコロコロ床に落ち、テーブルの下に潜ってしまった


「あっ"きれい"な10円に取り替えますから良いですよ」店員は代わりの10円を渡す


オッサンが店を出たあと、店員はテーブル下の10円を拾い、そのままレジに戻す


その一連を席で見ていた俺が、次に精算だ


落ちたことがリセットされた10円が俺に当たるだろうか


とはいえ、硬貨に綺麗もクソもない


ハナからめっちゃ汚い

どれを受け取ろうと一緒だ


昔、コンビニで、チンし終えた惣菜を取り出そうとした店員が


「熱っっ?!」という仕草で、床に落とした瞬間を俺は見た


そしてすぐそれを拾い上げ、待っている客がよそ見をしているのを確認し


容器が割れていないことも、瞬時に手で確認したのだろう


「お待たせしました」


何事もなく袋に入れ、渡していた


「誰も見てないから」と無かったことにした経験は、大なり小なり誰にでもあるだろう


俺も潜りの最中、不注意で天然記念物の石を一部割ってしまったことがある


しかし、誰も見てないからと無かったことにした


次に潜ると、まるで初めからそうだったかのように、欠けた部分がフジツボや海藻でカムフラージュされていた


これまで誰にも気付かれていなさそうだが、犯人は俺なんです・・・


さてそんな、自分のことを棚に上げるつもりはないのだが


昨年のハロウィンに近所の幼稚園のお手伝いに参加した際


園児の作った大きな動物たちが庭の暗がりに並べられていて


谷やん(36)がその1体に当たって倒したらしく、何かが折れた


ただ谷やんは、もともと分離していたものが外れただけだと思い(逃げ口上かもしれないが)


倒れた動物を起こし、そこに分離したものを置いて黙って帰ってきたのだが


翌朝、折れた首が尻から生えている馬を見て園児たちが「こわい」と号泣


皆で謝りに行きました(馬をユニコーンに作り変えました)

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