第1662話 プライバシー

日曜日、谷やん(36)が大阪の社長を那覇空港まで迎えに行ってくれた


到着ゲートから社長がブンブン手を振りながら出てくる


「はいさ~い!谷くん宜しくやで~」


その時、数メートル横の脚立の上でスタンバっていた、


どこかの局のメディア腕章を付けたカメラマンがパシャパシャとシャッターを押した


気色ばんだ社長が、カメラマンに向かってツカツカ歩いていく


「あっ社長?!」


谷やんが止める間もなく、社長はカメラマンの目の前まで行く


身構えるカメラマン


社長「おいっ!君!」


カメラマン「・・・・・」


社長「釣りや釣りや釣りやがな~!」


そう言って社長は、"がちょ~ん"の動きでカメラマンにピースサインを繰り出す


苦笑いのカメラマン


「なんや撮らんのかい。ほな」


そう言って踵を返し立ち去ろうとする社長を、カメラマンが背後からパシャパシャ


社長、ニカ~ッと笑って振り向き様のピース


その後、送迎車内で


谷「あれ(画像)使われたら、なんて見出しつくんでしょうか」


社長「せやな・・・『能天気な県外客、コロナ第9波に危機感なくカメラマンにピース』とかやろ」


谷「うわっマズいですねぇ、それ」


社長「かまへんかまへん笑」



「・・・そんな事がありまして」と谷やんから報告を受ける少し前、俺も社長に遅れて那覇空港に降り立っていた


到着ゲートからロビーに出た瞬間、パシャパシャパシャとカメラマンが客を写している

  

これは気分が悪い・・・


俺はカメラマンに一瞥をくれただけでその場を去った


翌日、社長と沖釣りに出ていると谷やんから電話


「昨日の、テレビに映ってたらしいですよ『那覇空港・客足増える』とかで」


「マジか!がちょ~ん?ピースサイン?あるいは両方?笑」


「あ、いや、カメラ目線のムスッとしたTさんが」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る