第1485話 宮里くんについて

「なんか怖い話ないですか」


飲み友達のローカル芸人Oに聞いてみた


「去年まで熱心に『付き人させてください!』って来てた青年がいて、ずっと断ってたんです。来なくなって半年ほど経ったある日、イオンのイベントブースでコミックショーみたいなのやっていて。あれ?何か俺に似たやつ出てない?って近付いてみたら、整形までして俺に寄せたそいつだった。整形ってのは、後で知ったんですが」


「ええっ?!」


「もう、話し方から仕草から僕なんです。あいつそのうち、僕を乗っ取るつもりじゃないのかな」


「こっわ・・・あれ?Oさん左利きでした?」


「んっ?あっ、最近右手が痛くて・・・もう大丈夫なんですけど」


「なーんて、元から左利きじゃないですか」


「あれ?僕の利き腕・・・どっちだ?」


ここまでが我々のいつもの"くだり"だ


アイスブレイクトークというか。



そのやりとりを隣で聞いていた宮里くん(26・脳筋王子)


「あの~俺も、今の自分がどっちか分からなくて・・・」と会話に加わってくる


もう今から5年ほど前というから、うちに来る前の話らしい


ある晩、寝ていると、自分が薄暗い部屋の真ん中で椅子に座っている夢を見たそうだ


そのうち若い女性の声で


「早く・・・早くこっちに戻ってきて・・・」と聞こえはじめる


それは、座っている自分の左手のドアの奥から聞こえるという


椅子から立ち上がった宮里くんは、何故か声のする左ではなく、右手のドアを開けて部屋を出る


・・・そこで目が覚めたという


宮「それ以来、俺、違う世界に来たような違和感があるんです」


俺「どーゆうことよ?」


宮「今のこの世界、俺の世界じゃないような気がするのです。あの時本当は、左から出るべきだったのじゃないかって」


O「宮里さんが左から出ていたらどうなったんだろう?」


宮「何となくですけど・・・俺、もっと賢かったんじゃないのかなと」


俺「なんだそれ、どういうこと?笑」


宮「なんだかずーっと、俺の中の、何かが欠けてる・・・そんな気がするんですよね・・・」


俺「パーツ的なものってこと?」


O「あ・・・でもそれ、本当じゃないでしょうか?右脳と左脳がありますよね。右脳は感情や想像を司り、左脳は言語・学習を司ると言いますよね。右脳が強いと幼稚、左脳が強いと、大人的考え方ができる人になるとか、聞いたことがあります」


俺「右って、まさにお前やん。右から出たからか?」


宮「ははは・・・」


O「その部屋の夢、そのあと見ないのですか?」


宮「見ないですねぇ・・・」



確かに以前から、宮里くんの突拍子もないアホ思考の数々については、少々不思議なところがあった


なのでこの話、また与太話を・・・というよりは、妙に納得してしまった



ちなみに谷やん(35・脳筋大王)は


正真正銘この世界で出来上がったアホなので、なんの違和感もない。

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