第1270話 耳
事務のM嬢が、いつの頃からか耳の調子が悪いという
「ほら今の、聞こえませんでした?ブンブンブンって」
「いや?何も聞こえんけど」
「ほらまた・・・車のエンジンみたいな」
「どっちから聞こえる?」
「左から」
「ちょっと反対向いてみ?どっちから聞こえる?」
「・・・こっち(と先程まで右だった方向を指差す)」
「それ、左耳がおかしいぞ。すぐ耳鼻科行っといでよ」
耳は疲れによって突発性難聴になったり、厄介な器官だ
「すみません、じゃあちょっと午後から行ってきます」
15時頃に戻ってきたM嬢にどうだったか訊くと
特に何か異物が入っていたわけでもなく、中耳炎などの症状も見られず
とりあえず血流改善の錠剤を貰ってきたとのこと
そういえば俺も昔、殴られすぎて耳が聞こえなくなったことがある(三途の公園)
彼女もすぐに改善すれば良いのだが・・・
そこにやってきた若手社員の宮里くん
「姐さん、耳に虫入ってなくて良かったですね」
「ホントだよ。前にアンタから聞いたリンチ、思い出したわよ」
「ああ、アーマン?」
宮里くんが中学・高校の頃、不良どもがやっていた喧嘩相手への"仕置き"のことだ
浜にいる大きめのヤドカリ(アーマン)を捕まえ、チャッカマンで貝殻のてっぺんを炙ると
熱くてヤドカリ本体が逃げ出てくる
それを相手の耳に潜らせる、というものだ
「でもまだまだ甘いよ。私の頃は真っ赤に炙ったドライバー、耳にぶっ刺して☆$%*〆\〒・・・」
なんか・・・一瞬でも貴女を心配した俺の思い遣りを返してほしい( ̄O ̄;)
※M嬢は元レディースの副長です
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