第1261話 鉄子さん

よく女性のお客様を連れて行くショーパブがあって


スタッフはオカマちゃん×2・オナベちゃん×2・モノマネ兄さん×1という構成


オカマちゃんの1人が鉄子さんといって、原口あきまさがドレスを着た感じ(ウイッグは被らず髪型も男のまま)


先日、7名の女性客と宮里くんで飲みに行ったときのこと


飲み始めてから既に1時間ほど経ち、替え歌合戦みたいなことで盛り上がっていたのだが


もう1人のオカマの魔子ちゃんが


「今日こそはチーク踊ってもらいなさいよ〜まさおちゃん(俺)に!」


そう鉄子さんに言う


周りの団体客からも「踊れ!」と煽られる鉄子さん


宮里くんも「じゃあ俺、いとしのエリー入れますねー」と手を挙げる


「仕方ないな〜じゃあ踊る?鉄ちゃん」俺がボックスから立ち上がると


「わたし同情はいらない」拗ねたフリをする鉄子さん


「同情違うよ、鉄ちゃんにはいつも世話なっとるし。嫌いやな・い・よ♡」とウインクする


「えっ・・・♡」


鉄子さんは真顔で俺を見つめる(というお決まりの流れ。ただし原口あきまさ)


ヒューヒュー周りが囃すなか、宮里の歌ういとしのエリーが始まった


押し出されるようにステージに立った俺と鉄子さんはチークを踊りだしたのだが、鉄子さんが俺の目を見ようとしない(原口あきまさであることをお忘れなく)


「これじゃあチークにならんっ」鉄子さんの顎を持ち、俺の方に向ける


真剣な眼差しで俺を見つめる鉄子さん(という名の原口あきまさ似のオッサン)


周囲の団体客の誰かが「鉄子!唇奪え!」と叫ぶ


それに呼応してウチの女性客も「Tさん、今!今!」と煽る


そんなん言われんでもこっちからしたるわい・・・俺は鉄子さんにブチューッとしてやる


どうやらそれで鉄子さんのスイッチが入ったようで、俺の首に両手を回し、更にディープキスしてくる


俺は鉄子さんの尻に両手を回し、ニギニギする(原口あきまさ似のオッサンの尻)


結局、歌が終わるまでその状態だった


ウチのメンバーのみならず、他の客からもやんやの喝采


歌が終わっても鉄子さんが抱きついてディープキスしたまま離れないので


これはもう誰かが引き剥がすまでこのまま、というボケにしたれ!と俺もそのままでいる


「いつまでやってんの!」「続きは個室で!」ようやく周囲の客たちに引き剥がされた


それでもなかなか離れない鉄子さんだったが、やっと俺を離すと、なんと大泣きしている


「うわ!鉄ちゃん泣かせた!」

「罪作りな兄さん!!」


散々囃されながら席に戻ってきたが、その後鉄子さんは別のテーブルに移ってしまった


そんなこんなで大盛り上がりのなか、切りも良かったので帰ることにした


それから半月後。


店に、今から10人ばかり女性陣連れて行くわ~と予約を入れる


まだ20時半だったので我々が一番乗りの客となった


フロアを見渡し「あれ?鉄ちゃんはまだ?」オナベのリョウ君に尋ねると


「Tさん、ちょっと・・・」入り口の隅に連れていかれる


「何?どうした?」


「鉄子さんですけど、Tさんには会えないって」


「は?」


「今はお会いできない、と伝えてほしいと」


「なに?どーゆうこと?」


「Tさんこの前、酒の席とはいえ露骨でしたからねぇ〜」


「はぁぁ?何がだよ?」


そこへ買い出しからオカマの魔子ちゃんが戻ってきて、俺を見るなり店の外へ連れ出す


「なになに?」


「まさおちゃん、このまえ鉄子に"抱きたいサイン"出したじゃん?そんな、思わせぶりなことして・・・」


「何の話よ??」


「鉄子、今はまだダメって。まさおちゃんとは冷却期間が必要なのって、さっき帰っちゃったわよ」


┐(´д`)┌


「でも、どうして?」魔子ちゃんが俺を睨みつける


「どうして魔子じゃ駄目なの?」


バナナマン日村そっくりの顔で俺を見詰めてきた


つまりこういうこと?

おしりニギニギが合図だったの?

5回点滅アイシテルのサインみたいな?


俺にも冷却期間くださーい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る